フクママから「フクに手伝ってほしいことがあるねんけど」と
猫なで声で電話があった。
もういやだ。
この時点でやっかいなことを言ってくるのがわかってる。
「何なん?」と自然と声が低くなる。
「たいしたことじゃないねん。電話台をね、組み立ててるんやけど、
ちょっと一人じゃできひんところがあるからね。
フクに手伝ってもらおうかなーと思って」
たいしたことあるやん!!
「えーーもう忙しいからそっちには行かれへんわー」
と軽く断ったけど
「10分くらいで済むと思うんやけどね」
と相変わらずくいついてくる。
10分くらいやったら行ったってもいいか、と思った。
そう言えばこの間、2万円分のQUOカードもらったしな。
と、孤独な老婆を無下に扱うのに罪悪感を感じて、
翌々日の昼休みに行ってやることにした。
母はもう79才になると言うのに、
セルフ組み立ての電話台を買ったのだ。
家具の組み立てって私ら世代でも難しい。
それを、だ。79才、だ。
40年前に靴箱を組み立てた成功体験をまだ引きずっている。
案の定家の中は板が散乱していた。
テーブルにはネジがばらまかれている。
軽いめまいを覚えた。
こんなん10分では済まん。
「ここまではやってんけどね」と引き出しを自慢そうに見せる。
だから・・・?
朦朧とする頭で説明書を読んでみた。
ネジにはA~Lまで記号が打ってあるが、
フクママが袋からネジを出したせいで、どのネジがAなのかもわからん。
木ネジの半分が折れて使えなくなっている。
板の穴に入って折れている木ネジ多数。
もうほじくり返すの不可能。
無理じゃね、組み立てるの。
それでも「やる」と言うフクママ。
そこまで言うならと、
二人で力を合わせてなんとか電話台を完成させた。
2時間かかった。
午後の仕事が始まる時間だ。
廊下に移動させようとすると天板がスポッと抜けた。
だよね~~。
しかたなく畳の上をズリズリと滑らして廊下に出す。
そこでもスッタモンダがあったが、書くの面倒くさい。
移動が終わり、最後にファックス電話を置いた。
でもめっちゃグラグラガタガタする。
そりゃあ、木ネジでしっかり連結する部分がほぼ連結できてない。
じゃあどうやって板同士が連結できているのか・・・?
聞かないでっっ!!
もうスルー。
おまけに新しい電話台は前の台よりも一回り大きく、廊下が海峡のように狭くなった。
私が帰る段、フクママは未練たっぷりに古い電話台を眺めていた。
そしてポツリ。
「古い方でよかったな」
!