洗濯物を取り込んでいたカッパさんが、
蜂に襲われたらしい。
翌日もラグを干して、取り込んでいたら、
ふたたび蜂の攻撃に遭った。
「絶対、近くに巣がある」と睨んだカッパさんは
蜂の後を追い、巣の在りかを見つけた。
なんと、うちのベランダに巣があった。
それも、なかなかわからないような場所だ。
虫が苦手なカッパさんはもうパニック。もう大騒ぎ。
昼休みにホームセンターに行き、殺虫剤を買ってきた。
あまりにもビビッているので、
「私が退治しようか?」と言うと、
目を剥いて
「フクちゃんにできるわけないやろ!業者が退治してるの観たことあるか?
あれぐらい大変なんやぞ!!」と怒鳴った。
狼狽ぶりがハンパない。
アナフィラキシーショックで死人も出るんやでっ!!
と唾を飛ばしまくる。 はい、はい。
業者が退治しているのはスズメバチとかの大きな巣だし・・・。
うちのはせいぜいテニスボールより少し小さめ。
YouTubeであしなが蜂の退治方法をチェックしてみると、
そんなに大変でもなさそうだ。
私がそれを言うと、またカッパさんはキレて
「フクちゃんは気軽に考えすぎや!もっと頭使えっ!頭を!」
と叫び散らす。
で、カッパさんがネットで調べた情報によると、
退治は夕暮れがいいとのこと。
この時期の日没は7時過ぎくらいなので、
その時間に決行する!と思い詰めた表情で宣言した。
今から禊でもしそうな雰囲気だ。
白装束に着替えたらどうしよう・・・?
しかし怖気づいたのか「やっぱり8時にするわ」と言い、
そのまま階下の店舗へ降りて行った。
絶対ビビッている。
まだ6時半だ。まだまだ時間がある。
私は憂鬱になった。
カッパさんのことだから大騒ぎだろうし、
私にサポートを強要するだろう。
また、この程度を武勇伝として、この先一週間は聞かされるのかと思うと
めっちゃ気が重い。
よし!私が退治しよう!
さっさと蜂退治を終えてシャワーで汗を流してのんびりしたい。
そう決めると、肌を露出させない工夫をして、
殺虫剤を手にベランダに出陣した。
もうすでに暗い。
スマホのライトで巣を確認していると、蜂さんたちはのんびりと
くつろいでいるようだ。
巣から1.2mほどの距離で殺虫剤を噴射した。
10秒噴射した。
暗闇でわかりづらいが、なんか蜂がぽたぽた落ちている気がする。
殺虫剤を半分使ったあたりで止めた。
巣も処理したかったが、暗いので翌朝にする。
さて8時になってカッパさんが階下から上がってきた。
私が「もう退治したで」と言うと、
拍子抜けしたようで
「あ・・・そう・・」と小さく返事した。
しばらく呆然としていたが、
「えーーフクちゃん退治したんっーーー???」
「うん、したよ」
カッパさんは椅子にヘナヘナと座り込んで、
そうかぁそうかぁ・・・とぶつぶつ言っている。
もっと感謝してもらえるのかなと思ったが、
それよりも気が抜けた方が大きいようだ。
「僕、今まで20分瞑想してたんや」
どうやら蜂退治に備えて気持ちを随分と整えていたらしい。
そこまで大ごとか!!
そんな感じで、私とカッパさんの『あしなが蜂退治の巻』は
静かに幕を下ろした。