私が最初にまぐれで入った会社は、有名俳優のCMでおなじみだ。
ハズキルーペではない。
そんな有名メーカーであるが、
私のいた職場は「これぞ、大阪!」を体現したようなものだ。
社員の意識にエリートのかけらすらない。
もちろん新入社員はエリートであるが、
古参のおやじたちに教育されもみくちゃにされ、
いつしか“ヤングなおっさん”になってしまう。
イケメンであっても、半年経つと小ずるいヒネタ顔になってしまう。
事務所は一日中うるさい。
誰かが怒号している。誰かが泣いている。誰かが悲鳴をあげている。
いたって日常。
電話に夢中になりすぎて椅子から転げ落ちる人、多数。
私も何度も椅子に座ろうと思ったら椅子がなくて、尻もちをついたことがある。
これも心象風景の一部となっている。
叫んだあと泣きながら走り出す女子社員。
呆けた目でテニスボールをポーンポーンと床に打ち付けている課長
顔から血を流しているか、あるいは頭に包帯を巻いている男性社員。
なぜ、とは誰も疑問に思わない。それが普通だからだ。
気でも狂ったか?と思うほど、いきなり笑い声を高らかにあげる。
うんうん、みんな経験している。
自由すぎるのだ。
午前と午後で髪形が違う人もいるし、
パチンコ店から「カバン忘れてます」と伝言がある人もいる。
「時間つぶしに喫茶サニーにいるかも知れない」と言われ、
緊急の件で電話をかけると、「はいサニーです」と、その人が出る。
お店の人はどうした?
一応、海外との取引もあるがめったに電話がかかることはない。
たまに外国人から電話があると大騒ぎ。
「ぎゃーートーマスさんから電話!!誰か出てーー」
となる。
英文科卒と言うだけで全く英語が話せない私に受話器がまわってくる。
「は、はろー?」と言うと
向こうはめっちゃ日本語。なんなら茨城弁も入ってる?
・・・藤枡(とうます)さんだった。まごうことなき純粋の日本人。
こんなこともあった。
「うわーーこんどの慰安旅行は『強姦の里』やってーーー!!」
とオッサン達が大騒ぎ。
何のことはない、合歓(ねむ)の里だ。アホか?
私の上司が人事の担当者にこっぴどく叱られている。
どうやら休みを生理休暇として申請したらしい。
本人はケアレスミスだと言い訳しているか、
あのとぼけた顔を見ると確信犯じゃないかと思う。
休暇取りすぎなんだよ。
隣の課の課長の電話には、カタコトの日本語で
「シャチョウサン、イラッシャイマスカ?」と電話がかかってくる。
社長なんて雲の上の人だ。真に受けて繋ぐわけにいかね。
だってここ本社ビルじゃねーし!!
うちの課の「一週間フィリピン行ってくるわ」と休暇を取ったオッサン。
毎回、奥さんからの電話でアリバイ工作させられる。
私らが気を利かしていることをオッサンは知らない。
周囲が物わかりよすぎるんだろな。
そうそう後輩のMちゃんは給湯室に立てこもったことがあったな。
包丁を喉に突き付けて、Y社員の名前を叫んでいた。
Y社員はイケメンだ。女好きだ。妻子持ちだ。
何があったのか?
まあ想像はつく。
よくあること。
その後Mちゃんは、ちゃっかり取引先の誰かさんと結婚して、
アメリカへ発ったけどね。結果オーライ。何もなかったことでいいのだ。
まあ、仕事は大変だったけど楽しかった。
なんと言うか・・・全てをさらけ出して全力で生きていた時代だ。
今ならハラスメントの玉手箱と言っていい。
この現代に同じことをしたら、いったいどれだけの人が懲戒免職になるだろう?
毎日が伝説だった時代だ。それがとても懐かしい。
カッパさんのバレンタインデーの悲しいエピソードを披露しよう。
カッパさんは何を隠そうこの地域では有名な老舗の三流高校に通っていた。
カッパさんの高校時代はさんざんだったようだ。
誰もが小学校中学校まではなりゆきで友達を選ぶ。
しかし高校生ともなると自我も成長し、
一緒に居て楽しい友人を選ぶようになる。
そうなるとアスピーのカッパさんは誰も拾ってくれない。
可哀想に・・・。
でも相手の気持ちがわからない奴と誰も付き合ったりしないよね。
そんなカッパさんの高校2年生のVD。
授業もHRも終り、教室は異様な雰囲気になる。
いつもよりみんなダラダラと帰り支度をする。
それでも、男子生徒は後ろ髪を引かれながらも教室を出て行ったのに、
カッパさんは何を期待したのか、しぶとく教室に居座った。
さて教室の隅で2.3人の女子がカッパさんの方をチラチラみながら、
こそこそ話をしている。
『もしかして、僕に・・・♥』とカッパさんの期待は高まる。
その中の女子が一人カッパさんの方へツカツカとやってきて、
「なぁ、あんた!」
『あ、あんた!?』
「邪魔やねん。帰ってくれへん?」ときつい口調で言われた。
あぁ・・・なんて可哀想なカッパさん。
でもね、でもね、VDの日はねゲスな真似しちゃだめた。
潔く下校するべきだったよ。
カッパさんはそれでもできるだけダラダラと教科書を入れだり出したりして、
長いこと居座ったらしい。
カッパさんはわかっていない。
そんな嫌がらせすれば、女子全員を敵に回すってことをね。
こうやってカッパさんの一年でもっとも最悪な日の幕は閉じた。
その日以来、カッパさんはVDなんかなくなればいい!!と呪い続けた。
それでも・・・今日、カッパさんは妹とお客さんからなんとか2個を死守した。
そして私が自分用に買ってきた「ほうじ茶トリュフ」を、カッパさんは私からのプレゼントだと思い込み、
「フクちゃん、僕に買って来てくれたんだね~」と嬉しそうにのたまった。
「NO!」と言えなかった・・・。
ああ・・・ほうじ茶トリュフ、楽しみにしてたのにな・・・。
自然にオナラが出てしまう。
普通に歩いているときに、うっかりと屁が出てしまう。
これは非常によろしくない。
幸い、誰かに聞かれたことはない(はず?)だが気をつけなきゃだ。
よく雑貨屋、本屋、レンタルDVD店などでうっかりこいてしまうのだが、
なぜか人が寄ってくる。
100%寄ってくる。
不思議だ。
もしかして、オナラセンサーが反応して、
オナラGメンが捜査にくるのではないか?
こっそり臭いの数値を測定しているか、
その空気を試験管に詰めているのではないか?
私は人が寄ってきたら、バツが悪いのでそそくさとその場を去るので
彼らがGメンなのかどうか、正体は不明のままだ。
今度、測定計を手に持ってないか確認してみたいと思う。
すごく美味しいものを食べているときに、
ついよだれが出てしまうときがある。
幸い、ぼたっと落ちるまでにすすっているので、
誰かに指摘されたことはない。
気をつけなきゃだ。
やたら喉が渇く。
昔はそんなに水分を取るタイプではなかったが、
50過ぎてから年中喉が渇く。
そんなに体から水分が蒸発するか?
気が付くと口が開いているときがあるので、
それで乾きやすくなっているのかもだ。
また車に乗っていると、ケホケホと咳が出る。
やっぱ50過ぎると飴ちゃんは必須アイテムとなる。
買い物に出ても買うものを忘れてしまうことがよくある。
スーパーなどで食材を買い忘れるのは日常茶飯事だが、
わざわざ都会に出て3つ4つ買いたいものがあるのに、
1つは買い忘れてノコノコと帰ってしまう。
これは痛恨のミス。
次、都会に出るのはいつだ?
なので絶対にメモを書いて行かないとダメだ。
髪の毛の水分が減って、ヘアスタイルが決まらない。
前髪は常におろしているのだが、
髪の毛にハリがないせいか、前髪が分れてしまう。
白髪が増えた。
まだ染めるほどではないが、前頭部の一部に白髪たちが棲息している。
やばい・・・。
でも私はあまり頓着しないタイプなので、
3週間に1度の割合で部分染でごまかしている。
将来的にはグレイヘアを目指すつもりだ。先は長い。
鏡を見るたびにブルドッグに近づいていく。
頬のたるみが半端ないって!!
大迫、半端ないって!!・・・あ、関係ねーか?
老化が目に見え始めるって恐いね。
ババアの顔にセミロングヘアが全く似合わない!!
周りの人も「似あってないよ」って注意してほしいものだ。
自転車に乗るのが怖くなってきた。
年末に右足の親指の靭帯を切ってから、
なんだか運転に自信がなくなってきた。
何事もやる気が出ない。億劫になってきた。
もともと私はダメ気質なのだが、
年を重ねるごとに拍車がかかってくる。
「じっとしているのがイヤ」と言う老人がいるが、
私にそのパワーを少し分けてもらいたいものだ。
じっとしていられない性格になって、
家の全てを断捨離して、
途中でほったらかしにしていることをやり遂げ、
「今日はどこを掃除しよっかなーー」と
鼻歌でも歌えるようになりたい。
サッカーには興味がない。
サッカーの国際試合があった翌日は、
どの情報番組も試合の内容を熱っぽく語る。
ふーん、ごめんね、私興味ないから・・・。
しかし、「イケてる人はサッカー観てる」的な風潮が
日本を覆ってないだろうか?
スポーツは他にもいろいろあるのに、
サッカーだけはコメンテーターやMCが
夢中になって喋り出す。
卓球やバドミントンの場合はそれほどでもないくせに。
バレーボールなんかほぼスルー。
ゴルフもしかり。
なのにサッカーときたら熱狂する。
みんな推しメンがいる。
ほんとゴメン、私興味ないから。
テクニックがすごい!とか言われてもね・・・。
はぁーそうですか・・・としか答えようがない。
どのスポーツもテクニックは必要だし、
そうでなきゃ一流の選手になれねーしっ!!
もし私に息子がいたとして、
その息子がたぐいまれなる身体能力を持っていたとしても、
野球選手やサッカー選手には育てたくない。
(本人が切望するなら、自由にさせるけどね)
戦力外通告もされず一生プロのアスリートでいるなんて、
宝くじに当たるようなものだ。
それよりも、テニスがちょっぴり上手なくらいでいい。
大学や社会人のテニスサークルで「華」になってくれるぐらいでいい。
スポーツで自信をつければ、ほかのことにも自信がつくのではないか?
なにごともポジティブに向き合えるのではないか?
いい会社に入って役員までのし上がれるのではないか?
もちろんサッカーでもいいが、
「社会人のフットサルチームに所属しているよ」ぐらいでいいのではないか?
週末に仲間と遊んでストレスを発散して、
翌週からバリバリ仕事してくれたらいい。
草野球でもいい。
卓球でもバドミントンでもいい。
「うまいね」と褒められる程度でいいのだ。
趣味として楽しんでくれればいいのだ。
その分仕事してバリバリ・・・もう、いいか・・・。
困るのは下手なくせに、才能もないくせに、
「将来サッカー選手になる!!」なんて言う息子はゴメンだ。
きっと下手なのは気付いているだろうに、
友達に対抗して強くなってやる!!と意地を張る子ども。
そんな意地を張る息子はサッカーをすぐ辞めさせて、空手を習わすね。
意地だけでなんとなる、と思っている子は、
周囲からイジメに遭うかも知れない。
まず、身を守る技を体得させる。
武道はチーム競技と違って、技術が帯の色によって客観視できるのがいい。
頑張れば段が上がるし、下手のままだと段が取れない。
非常に分かり易い。
まあ・・・子どもいないから、私がウダウダ言ったところで
絵に描いた餅なのだけれどもね。
結局、私はサッカーに熱狂しているファンに嫉妬しているだけなのだ。
その熱狂を味わえない嫉妬ゆえ、
「くだらん」と言い放つおやじの愚痴のようなもんだ。
そう言うちっせい人間なんだな、私って奴はね。