山岳ガイド赤沼千史のブログ

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ツクモグサとホテイラン絶滅危惧種を巡る

2014年06月17日 | 蝶よ花よ獣たちよ

 ツクモグサとホテイランという二つの絶滅危惧種に一年に一度会いに行く。ツクモグサはキンポウゲ科の多年草、ホテイランはラン科の多年草だ。場所は敢えて言わないことにする。まあ調べれば解る事だし、近くの山荘のHPでは開花状況も掲載されているから、言ってしまっても良いのだが、これらの絶滅危惧種というのは、山野草マニアの標的にされて居るのも事実だ。特に野生ランに至っては狂信的なマニアが存在し、場所が特定されればあっという間に盗掘の憂き目に遭ってしまう。

「ナントカ山に行ってきました、登山口から少し登るとナントカランの群生地があって~~~~!」等と記載するとネット時代の恐ろしいところで、あっという間に検索され、翌日にはすっかり堀取られ・・・・・なんてことになってしまうのだ。

 僕が以前フラワーガイドとして滞在した(笑っちゃうでしょ?)礼文島にはレブンアツモリソウという固有種があって、これは今では野生種では絶滅に近いと聞く。その当時も盗掘騒ぎがあって、数十万円で取引されているとか、893が絡んでいるとかの噂もあった。レブンアツモリソウは現在「特定国内希少野生動植物種」(種の保存法)と言うものに指定されていて許可無く採取、移動、販売は出来ない。今では栽培技術が進んで特定の許可を受けた業者が培養、栽培を手がけているらしい。僕が礼文島に滞在した十数年前は、人工栽培で、花を咲かすことは不可能とされていたが、現在ではそれが可能になっている。盗掘が減るのであればそれはとても良いことだ。

 同じくアツモリソウもその群生地が周知されると、あっという間に盗掘に遭ってしまうので、これを守ろうという人達が花が咲くとそれををもいで回るとも聞く。赤い大型の花はとにかく目立つ。それが仇となって人に悪意を芽生えさせる。だからもぎ取ってしまえばその存在は隠せるというわけだ。

 ツクモグサ、ホテイランともその生育域はそう広くない場所に限られている。それは何故か突然現れ、突然消える。周りの環境が群生地とその周辺でそんなに変わっているとも思えないのだが、日当たりとか、風向きとか、地質であるとか、僕らには解らないそれぞれの微妙な都合があって、彼らの生育地は極々限定的になっているのだ。

 このツクモグサの群生も一つ小さな尾根に登り上げたところからいきなり始まる。それまでは一本も見かける事が無いのに。鳥や風が種を運べば、何処へでもいける・・・・・・そう言うわけにはいかない植物があるのだ。キタダケソウも北岳に咲く固有種だが、その生育地はほんのわずかな場所に限られている。そう言う者達を掘り取る事は当然の事ではあるがしてはいけないことである。

昨年のツクモグサ(ツバメの子)霧に濡れて美しかった。

 生命や種というものはそれぞれが平等にこの地球に存在しているはずだ。絶滅危惧種達が何故そう言う状況なのかと言えば、若しかしたらそれは自然の摂理なのかも知れないし、僕ら人間が彼らを追い込んでいるのかもしれない。強い者が弱い者を搾取し喰らう事もそれは自然であるとすれば、我が世の春を謳歌する人類も、いずれはその責任を取らざるを得ない日がやってくるだろう。こんなことを言っている僕も、紛れもなく勝手な都合ばかりを言う人類の一員だが、少なくとも何時仇を取られても仕方が無いと覚悟を決めておこうと思う・・・・・・・少し大袈裟ではあるが。

 人類にはそれらを乗り越えていく英知があると思いたいのだが、それはいったいどうなんだろう?いろんな問題が多すぎる。

タチツボスミレ

オヤマノエンドウ