山岳ガイド赤沼千史のブログ

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長野県警、遭対協合同山岳救助隊訓練

2014年06月29日 | 雑感

 夏の登山シーズを前に長野県警山岳救助隊と北アルプス南部地区遭対協合同訓練が行われた。先ずは松本空港にて今年度新規導入された県警ヘリ「やまびこ2号」への搭乗訓練。

 「やまびこ2号」はイタリア製アグスタAW139。やまびこ1号に比べると総重量は1.5倍、出力は2倍程になる期待の高性能ヘリだ。それに伴って搭乗人員は14名から17名となる。

 山岳救助の現場では、ヘリコプターに乗り降りすることが第一歩になる。遭難現場は急峻な斜面や岩壁での救助活動になるので、ヘリはその殆どの場合が着陸できる訳では無い。だから、上空の定位置にホバーリングするヘリから、その外部に取り付けられたホイスト(巻き上げ式クレーン)を使って下降して現場に到着、そして遭難者と共に釣り上げられヘリに収容されると言う段取りを踏む。 

 その搭乗方法は機体ごとに微妙に違う。だから現場で戸惑わないようにその使い勝手を救助隊員は学んでおく必要がある。先ずは格納倉庫内で県警航空隊の隊員からその方法についてレクチャーを受け、細かな器具を確認する。

 一通りのレクチャーを受けいよいよ実際の搭乗訓練を行った。下降してくる2名の隊員を乗せ、けたたましい爆音を上げて「やまびこ2号」は離陸した。上空30メートル程に低位したヘリのハッチが開き、隊員が下降してくる。下まで降りると下で待機した隊員2名が釣り上げられる。これを繰り返す。何も無い空間にぶら下がり高度を上げていく感覚はあまり気持ちの良いものでは無い。はっきり言って僕は苦手だ。隊員二人を釣るホイストのワイヤーはわずか8ミリ程度しかない。強度は十分のはずだずだが、なんかねえ。ヘリの直下ではすざまじい爆音と爆風、そして巨大な機体が持つ威圧感に圧倒された。

 午後は朝日の岩場にて、ザイルを使用した搬送訓練を行った。30メートル程の垂壁を使って、メインザイルを張り込み救助者を入れたストレッチャーを下降させ、また引き上げる。救助には通常のクライミングとはまた違った技術が必要だ。使うザイルも一本ではなく、同時に数人が下降したり登り上げたりするから、システムは複雑で、その一つ一つが確実でなければならない。入り組んだザイルワークの中の弱点を見抜け無ければその先には大事故が待ち構えている。それは遭難の現場だけでなく、こんな訓練でもまったく同じ事だ。いくつもの目で確認する。気合いの入ったかけ声が、垂壁に轟き渡った。

「やまびこ2号」の導入に伴って退役する「しんしゅう」。やまびこ2号に比べるとそれはまるでラジコンヘリの様に見える。古い機体とは言え手入れが行き届いてピカピカだ。長い間ご苦労様。