三つ目のダンゴ
「ケルト巡り」(河合隼雄 著 2004年 NHK出版発行)を読んだ。
著者の河合隼雄さんは深層心理をベースとし、昔話や物語を手掛かりに今後の日本人がどう生きていけばよいかを探るため、ケルト文化が色濃く残るアイルランドを旅する。
ご当地では「魔女」に出会ったり、「ドルイド」の儀式に立ち合う。
ドルイドとは、ケルト人の信仰をつかさどった聖職者のことだ。
もちろん本物の魔女やドルイドが生きているわけではないが、かと言ってすべてが偽物だと決めつける証拠はない。
本の口絵には、人が通ると癒される穴の開いた岩(茅の輪くぐりに似ている)や、木々に巻きつけられた布の写真が載っている。
悩みや病を抱えた人が木々に布を巻きつけていくのだそうだ。
その他、石に渦巻き模様が刻まれていて、これを指でなぞるうちに「アナザワールド」に迷い込むらしい。
いやぁ、面白い。
ちなみに「アナザワールド」を河合さんは深層へ降りていくこととも言われるので、それなら日本にいても出来そうである。
文中、河合さんはこうも述べておられる。
「近代西洋が生み出した自然科学だけでは、もはやダメなのである。それを超える世界観、人生観を持っていないと、人は幸せにはならない」
さて、ここに和魂洋才という言葉がある。
ダンゴに例えると、和魂の上に洋才というダンゴを重ねてみたが、時間がたっていろいろと便利になったのは良いが、どうも具合が悪い。
そこでもうひとつダンゴが必要だ、ということだ。
三つ目のダンゴを、人はいろいろな言葉でいう。
世界観、宗教観、哲学、フォース(これはスターウォーズに出てくる)、サムシンググレイト・・・。
三つ目のダンゴを探しに、河合さん自身はアイルランドを訪ねたが、ロケットに乗って宇宙へ飛び出したわけではない点も面白い。
我々は近代科学を信じてよいが、あくまでカッコつきで信じるべきなのだろう。
近代科学や論理思考で物事を進めていっても、現実はうまく動かない。
全体をうまく説明できない。
あるいは思ったより悪くなったりする。
商業ロケットが話題になる時代だからこそ、河合さんがケルト文化を巡ったように、我々も今一度この大地とのかかわりを考え直してもよい気がする。
人それぞれがよりよく生きるためである。
そう考えると三つ目のダンゴは思ったより重要だし、たまには意識的に時間を使ってそれを探してもよいと思われる。
探してもいいが、それが何かわからないものだ、という事くらいは先に述べておこう。
そんな事は無駄な時間の使い方だ、近代化の否定だと決めつけるのは、近代文明か魔女に飲み込まれてしまった人ではないか、と言いたくなる。