日々の出来事を写真と共に

身近に起こる出来事、感想を写真と共に綴ります・・・

写真家が…

2024-11-01 | 読書
【2024.11.01(fri)】
私たちに残されたもの

・植物写真家の杣田美野里(Somada Minori)さんは1955年生まれ、1992年から北海道の礼文島に移住され、
島の固有種など多くの植物を撮影し紹介された方。

・肺がんを発症、その治療をしながら撮影や執筆を続けてこられた。余命宣告を受けた後、最期の仕事として取り組まれたのが
このフォトエッセー “Cancer Gift キャンサーギフト 礼文の花降る丘へ”


・ “がんがくれた贈り物” と言う題だが、がんになって初めて分かる色々な事の大切さ、それを教えてくれたのもがんだった、と言うことだろう。
行間からはずっと前向きであった著者の想いが伝わってきました。

・杣田さんはこの本を2021年8月に上梓された後の10月に66歳で永眠されている。
心よりご冥福をお祈りいたします。 

I.O.
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女性ならではの…

2022-11-20 | 読書
【2022.11.20(sun)】
感性で描かれる心情

・第167回(2022年)の芥川賞を受賞した中編小説が “群像” に掲載されていた。 
“おいしいごはんが食べられますように”


<群像 2022.01月号>

・春には既に単行本化もされている。➡ <おいしいごはんが食べられますように 高瀬隼子著 講談社 2022.03.24発売>


・このストーリーに登場するのは主人公であろう1人の男性「二谷」と「押尾」「芦川さん」の2人の女性。
「二谷」が視点の人物になるパートと、一人称で「押尾」の語るパートが交互に現れるのが効果的。

・一方「芦川さん」の心底の気持ちは最後まで触れられることがない。
彼女のキャラは終始客観的に描かれ、無邪気なのか計算なのか掴めないままで、読む方は落ち着かない。 

・著者はこの作品を書き上げてから “題” を付けたとのこと。
食が焦点にはなっているが、内容と題名がどう結びつくのか読み進んでも中々分からないし、ラストもモヤモヤ感有り。
テーマはあってもそれを解決するのではなく、この後の展開は読者が考え解釈はそれぞれに委ねられているような気がする。

・とても面白い恋愛小説。二谷と押尾の断片的な思考の表現が上手で、読んでる最中によく笑った。
現代日本のリアルな縮図?、答えを導けないのが世の不条理を表しているのかもしれない。 

・人物の描き方、言い回し、心象表現は女性ならでは、いや高瀬さんだからこそ描けた?
才があり、巧みな著者ですね。 

<参考>高瀬隼子さんの他の作品
「犬のかたちをしているもの 集英社 2019年」:第43回すばる文学賞
「水たまりで息をする 集英社 2021年」:第165回芥川賞候補

・文芸雑誌は余り読んでこなかったが、パラパラめくる内に自分の好みにピッタリの作品に出合うことがある。
新旧様々の作家さんに出逢える。これがいい処かも知れない。 

I.O.
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全ての人に…

2022-08-10 | 読書
【2022.08.10(wed)】        
それぞれの青春がある。

・著名な歌人である、永田和宏氏が綴られた手記です。

・2010年に亡くなられた妻・裕子さんとの出会いから結婚されるまでの道のりを、
二人が交わした手紙、裕子さんの日記、加えてそれぞれが詠まれた歌を軸として描かれた作品。

・始めの数章には裕子さんと出会う前の永田氏の生い立ちが綴られており、他では知る機会が無く新鮮な気持ちで読んだ。 
それは裕子さんが家族に言い残した「お父さんはさびしい人なのだから」の言葉に繋がっている。




・それぞれが結婚を決めた以降に自死を試みていたことまで明かされている。
青春の時を振り返ると、こんな危うい側面があるだろうと多くの人が共感するのではないだろうか。 

・序文の中に “「何ゆゑにここまで書くか」は、稿を進めつつ往々にしてとらわれた思いであったが、河野の日記や手紙をそのまま出す以上、少しでも脚色があってはならないし、伏せる部分があってはならないと、それは河野への責任の取り方でもあると思ってきた” と記されている。

・感情をむきだしにしてひたむきに綴られた文章は強く心を捉える。
日記や手紙といった私的な文書を公開して、包み隠さず真摯に語られたことにとても驚いた。 

・著されている他の関連書籍(参考)
「歌に私は泣くだらう ~妻・河野裕子 闘病の十年~」
「家族の歌 河野裕子の死を見つめて」

TVドラマ化もされている。
歌人に理系の方が多いのに納得しました。

I.O.
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本に向かう

2021-07-22 | 読書
【2021.07.22(thu)】
時間は多くなった。

・長く続くコロナ禍で巣ごもり生活と言われだして久しい。
出掛けるのが好きな私も自宅で本を読む時間は確かに増えているように思う。 
近頃面白く感じた本をいくつかあげてみる。


・「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」から始まるSNS上の世界を題材にした作品。
主人公の“あかり” は学校でも家庭でも上手くいっていない女子高生。唯一の生きがいは八歳年上の男性アイドル“真幸” を推すことなのだが、真幸はある日ファンを殴るという事件を起こしてしまいTwitterが炎上する。

・文中でハッとする言い回しにしばしば出会う。祖母の訃報を知らされた“あかり” の心情を表現するくだり。
“大袋のなかに入った個包装のチョコを食べていって、いま食べたそれが最後の一個だったよ、と言われるみたいに死が知らされる。”

・今まで見たことのない比喩表現。こんなのがどうして浮かぶんだろう。若い人の感性か、とても新鮮に感じた。 
綿矢りさ、金原ひとみに次ぐ史上3番目の若さで<第164回芥川賞>受賞となった作品。

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・著者はグレートトラバース & 2 & 3 で名の知られた田中陽希さん。
彼は三百名山踏破中の2020年春、コロナ禍により山形県で3ヶ月の滞留を余儀なくされた。
そんな山旅の途中にリモート取材によって、これまでの人生と将来への想いを語られた作品だ。

・今も挑戦を続ける理由や、本気で挑むことの大切さを次世代へ伝えたいとメッセージが綴られている。

・普段の山旅に携行する行動食に “フィナンシェ” をあげておられ、
冬のアドベンチャーレースの定番の行動食として "柿の種” や、
一箱で500㎉あるという “アーモンドチョコレート" が登場したのには驚いた。
この辺りは我々と変わらないんですね。 

<グレートトラバース3 ~日本三百名山全山人力踏破>はBSPで放映中。
私の見ている【グレートトラバース3 15min】では未だ170座目付近だが、
後日聞いたところ現実には、2021.8.2に全山踏破されたようだ。素晴らしい!

・さて次は何を目標にされるのだろう。

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・この中に掲載された <彼岸花が咲く島 李琴峰>が読んでみたかった。
著者の李琴峰さんは台湾籍の日中二言語作家。
この作品で<第165回芥川賞>を受賞されたが、台湾出身作家としては初となった。

・日本と台湾の中間に位置する架空の島。そこは「ノロ」が統治し、「ニホン語」と「女語」の二つの言語が使われていた。
隔絶した島を舞台に広がる不思議な世界。SFっぽい仕上げの小説。私の好みのシチュエーション! 

・既に単行本化もされています

I.O.
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土地の訛りが…

2020-11-04 | 読書
【2020.11.04(wed)】
効果的に使われている。

・Fb友さんが投稿の中で紹介されていた小説を読んでみると、これが中々面白かった。 


  
・雨漏りの修理に来た屋根職人「彼」と、それを依頼した中年の主婦「私」は名だたる屋根の話をする内に意気投合する。
九州訛りの木訥な彼は夢へといざなう達人だった。彼の誘いに乗り私は夢の中で寺院の屋根を巡る旅へ出掛ける。
夫や息子に気付かれることなく…。

・二人が黒鳥になってパリの空を飛び、大聖堂を巡るシーンは色まで鮮やか。
怪奇味を帯びると評される作風…単なるファンタジー作品ではない。
屋根屋の方言の使い方が巧みで、夢から現実の世界へと引き戻す効果を生むようだ。

・ラストが近づくと夢と現実の境目は薄れてくる。
いや、この物語は「私」が屋根屋と意気投合するところから既に夢なのだろう。

・表紙絵が実に秀逸!絵が全てを物語るよう。これに惹かれて読んでいたような気もする。 
作家は題材について相当な研究をするのですね。このお話では屋根の様式について。
それを屋根屋に語らせていて、彼の博学なのが何か可笑しい。

・著者の村田喜代子さんは<名文を書かない文章講座><縦横無尽の文章レッスン>など書かれている。
この方の文章読本なら是非読んでみたい。 

I.O
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大河ドラマとなるには…

2020-09-21 | 読書
【2020.09.21(mon)】
この本がヒットするかにかかる。

・岩美町浦富出身の外交官で、初代国連大使を務めた<澤田廉三>の伝記小説が8月に刊行された。 
<愛郷 外交官 澤田廉三の生涯> 片山長生著 「愛郷・澤田廉三」刊行会 2020/8発行

・地元の著名人であり、鳥取県人としてとても興味の湧く内容でした。 
著者の片山氏はドラマ化をめざす研究会を立ち上げ、一旦試作を作られた後の今回の刊行。非常に苦労をされたようだ。

・NHKの歴史大河ドラマに取り上げてもらおうと誘致活動を行っているのは、全国で40ヵ所に上るのだとか。
例え採られるにしても、今迄の実情からして十年は超えるのだろうと…長丁場だが採用されんことを願っています。

I.O
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違和感があっても…

2020-05-08 | 読書
【2020.05.08(fri)】
いつかは日常シーンになるでしょう。

・先日直木賞が決まった時に図書館に予約を入れておいた本が、貸し出し出来るようになったとの連絡を頂き足を運ぶ。

・第162回直木賞受賞作の<熱源>です。読み始めていますが長編であり、他の小説と並行して読み進めているので中々…
とりあえず<本の紹介>と先に読了された方の<レビュー>

・こちらの図書館ではまだ図書の閲覧は出来ず予約を入れた本のみ対応して頂ける。
入り口では係の方が来館目的の確認と進行方向の案内等されていた。貸出しカードに始まって、手渡しするものは無く、全てトレイを介しての受け渡し。

・コロナ対策は万全に思える。市中どこでも見られるこのような対応に違和感を覚えていたが最近ではすっかり慣れてきた。
多くの人々の間で習慣化され定着するのだろう。  

・図書館での楽しみの一つは書架に並ぶ本の背表紙を眺めたり、パラパラとめくって好みの物を探し出すことではないだろうか。
この当たり前のシーンが早く戻って来て欲しい。 

I.O
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読みたい本が分かれば…

2020-05-01 | 読書
【2020.05.01(fri)】
図書館が利用できる。

・公共サービス施設の多くが休館されている中、図書館も例外ではない。
室内に多くの人が訪れる場所であり他人との距離も近くなるから、感染リスクは高い部類に入るだろう。


・館内での閲覧はできないが一部の図書館では電話やネットでの予約は可能になっていて、在架であれば直ぐ借りることが可能。


・Fb友さんから教えて頂いた図書を予約、貸し出ししてもらう。ストーリーを楽しみに…。 
平田オリザ<幕が上がる>
有川浩<阪急電車>
窪美澄<ふがいない僕は空を見た>

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・キューサイ青汁のデザインが変わった! 今日配達された冷凍パックを見ると、会社ロゴが変わり商品名も英字に…。
1993年から飲み続けているから、もう27年になるがこんなことは初めて…。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンHDのグループとなったことも関係するのだろうか。中身はずっと変えないでほしい。

I.O
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独特の方言が

2020-02-08 | 読書
【2020.02.08(sat)】    
臨場感を醸し出している。

・1/24に発売された第162回芥川賞受賞作品「背高泡立草」。 初出は2019年10月の<すばる>
図書館にお願いしていたところ今日お借りできることに…。リクエストされている方が多い本なので速攻で読み終えました。 


・物語の舞台は平戸市の的山大島(あづちおおしま)。著者である古川真人氏のお母さんがこの島のご出身。
デビューしてからの3作品は全て島のことが題材になっているらしい。4作目にあたるこの作品で芥川賞を受賞されたことになる。

・私も直島の生まれ故だろうか、島が舞台となるお話はとにかく読んでみたい。 

・この島にはそこでしか通じない独自の方言が残っていて作品の中でも沢山登場。
意味を推測するのも難しい大島弁には、標準語のルビまでふって用いられている。
作者が方言を使うのにそこまでこだわるのは、読者にその土地の佇まいを感じてほしいからだろう。

・スタートは現代。 最初に登場する主人公?大村奈美は20代半ばの独身女性。
母の実家、吉川家の納屋の草刈りをする為に母や親戚と共にこの島に向かうことになる。
吉川家には長く空き家になっている「古か家」と「新しい方の家」の二軒の家があり、
奈美は家族らからそれぞれの家に纏わる話を聞くことになる。

・吉川家の昔話かと思いきや、唐突に時代は変わり冒頭の家族とは直接関係のないエピソードが登場する。
舞台は島周辺と九州、韓国、中国に及び、戦中~戦後の時代や、古くは江戸時代にまで話が飛んでいく。

・時代を超え、島や家をめぐる歴史や記憶がその土地の物語として巧みに挿入されている。
話の終盤、納屋近くで刈った雑草の種類を奈美の母親が思いつくまま挙げるシーンあり。
外来種である「背高泡立草」の名がここで出てきて、過去に島にたどり着いた人々の姿と重なる。

・過去のエピソードを知ることのない20代の若者が、疑問を持ちながらも旧家の草刈りを続けるだろうことを予感させ、話が収斂する。
その結末に何故か心安らいだ。 

・万人に分かり易く、すんなりと頭に収まる文体のように感じる。例えば奈美の母と伯母の性向を表現する300字近い一文。
こんな長文を読み返すことなく軽々と読めて、文脈に破綻を生じることがない。こんなに書けたら気持ちいいだろう。羨ましい筆力!
中編のボリュームながら一気に読み通せる面白さがありました。お薦めです。 

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・春の到来を感じさせる作品が飾られていました。: 旧南庁舎にて

See you.  

I.O
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新刊を買って下さい!!

2016-11-18 | 読書
【2016.11.18(fri)】
芥川賞作品を読むきっかけになったフォーラム

・毎年全国の各地でJTフォーラムが開かれます。
“良質な文化の芽を地域から育てていきたい。そして地域文化に貢献したい”
という思いで地方新聞社が主催、JTが協賛される文化イベント。

・今年は全国14カ所で開催のJTフォーラム。鳥取会場は活躍中のお二人の小説家を招いてのトークショーでした。
約400人の参加があったようです。



・第1部のゲスト<唯川恵>さんは日本ペンクラブ会員で<肩ごしの恋人>で第126回の直木賞を受賞。
10年のOL生活後に作家活動に入られたという経歴の持ち主。トークテーマは【自分を変える、自分に還る】

・若いころから書くのは好きだった。習い事を色々したが身に付かない。結局続いたのは書くことだけ。
小説を書いては応募し落選を繰り返したが、落ち込んだりやめたいと思ったことがないと話される。
やはり作家は書くことが好きで好きでたまらないんですね。

・自分を変えることの一例として、あるキッカケにより5年前から山登りをされているとのこと。
ご自身は2003年から軽井沢に住まれ、近くの浅間山によく登られるらしい。
山登りの良さは?の質問に“そこに行かなければ見ることのできない風景があるから”と答えられる。同感だ。

・山登りが縁となって<田部井淳子>さんをモデルとした「淳子のてっぺん」を執筆され、この度完成したのだが
田部井さんに最後の章まで読んで頂けなかったのが残念だと…この本は是非読んでみようと思う。

・恋愛小説で名を成した唯川さんなのに、自らの恋愛経験はないのだとか。
そのかわり妄想力があり小説家に向いていたのかもしれないと。
齢を重ねて自分の小説も一人の女性の人生を追うというスタイルに変わっていると語られました。

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・休憩をはさみ、<羽田圭介>さんが第2部のゲストとして登場される。
2015年の第153回芥川賞は又吉さんと羽田さんがW受賞。
<火花>が大きな話題になり、羽田さんの<スクラップ・アンド・ビルド>は相対的に注目の度合いが低かったと思うが、
ご本人はその後軽妙なトークがうけてTV等で引っ張りだこに。

・今回のJTフォーラムのゲストが羽田さんだと知り、発売から一年以上経った本を慌てて読みました。
読み易い文体であっという間に読了。



・28歳で就活中の主人公健斗、同居する母と要介護の祖父の三人が登場するお話。

・「早う死にたか」と毎日のように呟く祖父。長崎弁が登場する。
健斗はこの願いを叶えてやろうとあることを画策する。
手厚く介護することによって身体を弱らせ、祖父の社会復帰を阻み自然な尊厳死を迎えるようにという狙いだ。
しかし衰えつつも医療の発達により生かされている祖父に対して、次第に悲しさや切なさを感じるようになる。
健斗は祖父が好きなんですね。

・介護をこなす一方で健斗は日々の筋トレに就職活動と、肉体も生活も再構築中。これがビルドなのか?
精神も含めてのスクラップ・アンド・ビルドなのでしょう。

・健斗は再就職が決まり家をでることになる。
特養に入居を予約された祖父、介護の負担が大きくなるだろう母、そして健斗の行く末も見えているわけではないが、
何か清々しい気分にさせてくれるエンディングだった。

・介護現場の実態をシリアスにとらえていて、高齢化が引き起こす現代社会の矛盾を突いていることに共感する。
尊厳死など重いテーマを扱いながら、思わずふっと笑ってしまうような不思議な感覚をもたらす。
祖父の世話をするシーン、エピソードはいつも何かしら可笑しい。ユーモアのセンスがある。
それは今日のトークショーの間にも感じられました。

・言葉が正確に選ばれ文章が洗練されている。主人公の健斗が作者に重なって見えてくる。
羽田さんは以前から小説についてこのように言われている。
「読んでいる間に読み手が何かに思いをめぐらせ、何かを考える。それで人間的に“成長”するわけではないし“成果”を求めるのも間違いだ。ただ優れた本は、読み手の生活に別の角度から光を当ててくれる」
ああ確かに…と思いました。

・NHKでドラマ化もされていて12月に放送されるようですね。

・11月15日には新刊<コンテクスト・オブ・ザ・デッド>が発売されたばかり。
現代日本を撃つゾンビ・サバイバル問題作。ついにゾンビが文壇に登場!?と注目されています。

・羽田さんいわく、昨年の話になるがこの長編は最初1,400枚位だったのを直して800枚にした。
それを編集者に渡して結果を待つのに普通1ヵ月は掛かる。
待つ間にサッと書いたのが<スクラップ・アンド・ビルド>(70枚程度)だったと明かされる。
そんなに短期間で書けるとは…。 芥川賞をとるにはタイミングとか運もあるんでしょうね。

・<コンテクスト・オブ・ザ・デッド>の表紙がプリントされたTシャツを着て本をPR、
素直に「僕の本を買ってください」と言われるのが可笑しく好感がもてる。

・地方に行っても“TVでよく見てるよ”とは言われるが、“本を読んでるよ”とはあまり言われないんだとか。
今もTVや講演、このようなトークショーなどで目の回るような忙しさであると。聴いていても風邪気味なのが分かりました。
「まあ売れない小説を書くより、このようなイベントに呼んで頂く方が遥かに実入りがいいんです」と笑いをとられる。

・色々としないといけない事が多すぎて、気が休まるのは本業である書き物でパソコンに向かっている時なんだそう。
中二の頃から作家願望は持たれていたらしい。この方も書くのが何よりも好きということがお話をされる中で伝わってきました。

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・変わりゆく南吉方。鳥取市のスクラップ・アンド・ビルド。

See you.

I.O
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