えー、日銀問題で滞っていた、経済財政諮問会議の議論ですけれども、私にとっては非常に有り難い朗報が含まれておりました。これはかなり重要な議題なのですけれども、報道では見かけませんでした。社会保障に関して、遂に「社会保障番号」を本格導入に向けて検討しよう、ということのようです。メディアにおいては、これって重要なテーマなんですから、きちんと報道した方がいいと思いますね。国民生活に直結している大切な議論ですよ。
第5回議事要旨
では、以下に社会保障番号に関する部分を(ちょっと長いです)。
奥田「社会保障制度は、国民の安心確保のためのもっとも基本的なインフラであり、国民の不信感、あるいは不公平感を払拭する最大限の努力が必要であると思う。将来の制度体系のあり方も展望しながら、給付と負担の規模、範囲また内容について、複数の選択肢を提示して国民的な議論を行う必要があると思う。その際、これまで取り組んできた医療改革等の上に立って、更なる合理化努力を実施することを前提とすべきであると考えている。社会保障の規模の選択肢については、財政健全化や国民負担との関係を明らかにする観点から、対GDP比等によって示すとともに、国民生活への影響をわかりやすく示す必要があると考えている。最後に、得るべき結論について、先ほど説明した改革実現に向けての重要指針に基づき、選択肢についての国民的議論を経て、改革の結論を出すべきであると考えている。」
谷垣「その中で、今後の社会保障改革における最大の問題は、(中略)現世代の受益である社会保障給付に対する負担、主に税負担が将来世代に先送りされていることだ。従って、社会保障については、国民の負担にも目を配りつつ、給付について不断の見直しを行うと同時に、必要な給付に対する負担について将来世代に先送りすることがないように安定的な財源を確保することによって、社会保障や財政の持続可能性に対する信認を高めて、国民生活の安全・安心を確保することが必要ではないかと思う。」
吉川「先ほど奥田議員から説明があった点はいずれも大切だと考えているが、具体論として、我々民間議員は昔から主張しているが、社会保障番号はやはり必要だ。それがもたらすいい意味での影響は広範囲に及ぶので、そろそろ真剣に検討していただく必要があるのではないかと考えている。」
小泉「社会保障番号は、納税者番号よりも前の段階だと思うけれども、どういうふうにやっていくのか。具体的に進めていく手順というのは。」
吉川「他の先進国で既にある国がたくさんあるので、そうした国でどのような形で運用されているのか、具体的には、米国でもどこでもいいと思うが、それに学べばいいのではないか。」
小泉「そんなに難しいことではないのか。」
本間「今、制度がばらばらになっているので、総理が言われるとおり、その番号をどういう具合につなぐかという問題は当然出てくる。」
ウシオ「アメリカがやっている。アメリカはソーシャルセキュリティーナンバー。」
奥田「SSNという名前で。」
小泉「社会保障は日本ほど充実していないでしょう。アメリカは。」
奥田「それは日本の方がはるかに充実している。」
ウシオ「重複支出が出ようがないという説もあるくらいだが、あることによって、そこからかなりの効果が出ている。それと、資料に書いたように、一体的改革と一元的管理も同時に進めることができる。要するに、年金、医療、介護、生活保護等、これを一体的に捉えて、制度の設計を総合的に簡素化して、しかも重複支出がないようにするということ。これで非常にいろんな点で問題がクリアになる。」
小泉「財務省か、厚労省か、こういうことから入ると、具体的な手順ないかね。そうじゃないとね、なかなかわかりにくい。」
竹中「いくつかの省で検討したことはあると思う。アメリカの場合は、ソーシャルセキュリティーナンバーを得るために、オフィスに行って登録する。日本の場合は、世界にあまりない住民票というものがあるので、それを使う方がいいか悪いかとか、改めてもう一回国民全員に登録に行っていただくのかとか、そういう問題は出てくると思う。ただいずれにしても、やろうと思えば、これはできると思う。」
小泉「個人情報の問題もある」
ウシオ「地方自治体がきちんとあるし、e-ガバメントも相当進んでいるので、手順を示せば、それほど複雑なことではないと思う。」
竹中「e-ガバメントに結びつけようと思ったら、やはり住基ネットをどう位置づけるが、そういう問題をクリアにしないといけなくなる。」
吉川「従来から、こういうものを入れるのは難しいという議論はたくさんあるが、諸外国でも、先進国はやっているわけであり、そろそろ、本当に前向きに検討していただく必要がある。」
小泉「納税者番号よりはやさしいだろう。」
本間「これは従来の番号に各共済や厚生年金をつなげばいいわけで、社会保障番号の延長線上でやろうとすれば、技術的にはクリアできると思う。ただ、今、竹中議員が言われたとおり、総務省では住基番号を使っており、どちらを使うかとか、いろいろな調整はしなければいけない。しかし、新規に納税者番号という形よりは、既存の番号を使った方がずっとやりやすいと思う。」
小泉「難しい方法を、みんなやれ、やれと言っているんだから。納税者番号を、民主党もやれやれと言っているし、識者もやれやれと。これはどこの省が、どのように、具体的にどのような問題があるか、わかりやすく整理して提示して。」
与謝野「整理して。はい。」
ウシオ「複数の省にまたがるから。」
与謝野「社会保障番号は誰か研究している人がいるはず。」
ウシオ「いろいろなところで研究している。」
本間「いろいろ情報はあると思う。ただ、政府のこれまでの取り組みもあり、それとのつなぎも勉強させていただく。」
このような感じでした。私は以前にも書いていますが、住基ネットを有効に活用すべき、という観点から、社会保障番号はこれ一つで十分なのではないかと思っています(過去の記事をお読み下されば幸いです。カテゴリー:社会保障問題)。で、他の健康保険も、厚生年金保険も、労働保険も全て番号で管理されていますから、これらの番号が一つのナンバーで管理されることになれば済む話ですね。統一された規格を持てば済みますね。将来的には、医療情報ネットワークに発展させることも可能なはずですね。専門的な問題点もあると思いますので、技術的なことはそれぞれの専門家の御意見も必要だろうと思いますが、今の時代で統一された社会保障番号とそのネットワークが整備できない、なんてことはないと思えますね。
吉川先生は「民間議員が前から言っているとおり」と仰っておりましたので、そうなの?と改めて知りました。検索して調べてみると、本当にそうでした。
今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針
月刊ESP2月号
今の今まで、本当に「ゴメーーーン」でした。あれこれ文句をつけていたのだけれど、吉川先生の仰せの通りでした。初めの頃の「骨太の方針」にもちゃんと書かれていました。スミマセンでした・・・。やはり賢い人々が集まれば、普通に考えて私程度が思いつくことは、大体考えられているのですね。
でもね、それならば、どうしてこれまで放置していたの?って思いますけど。何でもっと早くから真剣に取り組んでこなかったのですか?とツッコミたくもなりますよ。閣議決定までした事項でありながら、今までは問題を留保、先送りしてきたということなんだろうと思いますね。でも、優先するべき課題として考えられていたのが、例えば不良債権問題、道路公団問題、年金問題、郵政民営化、等々で、手が回らなかったのかもしれませんね。
うーむ、であれば何故に選挙対策的な「小手先の年金改革」に踏み切ったのか、甚だ疑問である。あの強硬採決は許されないよ、普通。諮問会議で通した「年金改革はこれでいいんだ」、という過ちをまずは認めるべきですね。公務員共済の問題、国民年金の問題、議員年金の問題、厚生年金隠れ脱退、社保庁問題、どれもこれも全く解決できてないでしょ?やるべきことがわかっていたのに、目先だけ国民を騙そうとした姿勢は厳しく糾弾されるべきでしょう。
きちんとやる積もりならば、もう一回社会保障を組み直さねばならないし、同時に「歳出・歳入一体改革」と平行するけれども、保険料と税とをどのようにするか、ということも一体的に検討していくべきですね。最低保障ということに重点を置くならば、年金一元化と財源問題(要するに消費税です)にまで踏み込んで議論すべきですよ。社会保障番号というのは、基本的にはシステムの問題であるけれども、社会保障の根幹部分でもあるのです。どのような「総合的行政サービス」として給付するか、というある種の商品設計でもあります。そこに辿り着けなければ、いくら番号をいじっても同じ。年金番号が別の「社会保障番号」という別な呼び名の数字列に置き換わった、というだけで終わってしまいますよ。
あの時の年金改革はもう過ぎてしまったことですし、当時の政治的な環境とか抵抗勢力の状況(笑)とか、そういう部分(要は統治システム)での違いがあって、後退戦を余儀なくされたのかもしれないが、それを勘案したとしても年金改革・社保庁改革をやったことにしたのは本当に酷いと思う。未だに年金不信の原因にもなっている。未納率が改善されないことにも表れているじゃないか。
なので、今度こそ真剣にやっていって下さいよ。基本方針だけでも、ちゃんとしたものを策定しましょうよ。大枠の議論がなされていないし、国民にも全然伝わっていないと思いますよ。
今後の進展に期待したいと思います。今度は統治システムの問題なんかじゃありませんからね。あくまで中身の問題ということです。
第5回議事要旨
では、以下に社会保障番号に関する部分を(ちょっと長いです)。
奥田「社会保障制度は、国民の安心確保のためのもっとも基本的なインフラであり、国民の不信感、あるいは不公平感を払拭する最大限の努力が必要であると思う。将来の制度体系のあり方も展望しながら、給付と負担の規模、範囲また内容について、複数の選択肢を提示して国民的な議論を行う必要があると思う。その際、これまで取り組んできた医療改革等の上に立って、更なる合理化努力を実施することを前提とすべきであると考えている。社会保障の規模の選択肢については、財政健全化や国民負担との関係を明らかにする観点から、対GDP比等によって示すとともに、国民生活への影響をわかりやすく示す必要があると考えている。最後に、得るべき結論について、先ほど説明した改革実現に向けての重要指針に基づき、選択肢についての国民的議論を経て、改革の結論を出すべきであると考えている。」
谷垣「その中で、今後の社会保障改革における最大の問題は、(中略)現世代の受益である社会保障給付に対する負担、主に税負担が将来世代に先送りされていることだ。従って、社会保障については、国民の負担にも目を配りつつ、給付について不断の見直しを行うと同時に、必要な給付に対する負担について将来世代に先送りすることがないように安定的な財源を確保することによって、社会保障や財政の持続可能性に対する信認を高めて、国民生活の安全・安心を確保することが必要ではないかと思う。」
吉川「先ほど奥田議員から説明があった点はいずれも大切だと考えているが、具体論として、我々民間議員は昔から主張しているが、社会保障番号はやはり必要だ。それがもたらすいい意味での影響は広範囲に及ぶので、そろそろ真剣に検討していただく必要があるのではないかと考えている。」
小泉「社会保障番号は、納税者番号よりも前の段階だと思うけれども、どういうふうにやっていくのか。具体的に進めていく手順というのは。」
吉川「他の先進国で既にある国がたくさんあるので、そうした国でどのような形で運用されているのか、具体的には、米国でもどこでもいいと思うが、それに学べばいいのではないか。」
小泉「そんなに難しいことではないのか。」
本間「今、制度がばらばらになっているので、総理が言われるとおり、その番号をどういう具合につなぐかという問題は当然出てくる。」
ウシオ「アメリカがやっている。アメリカはソーシャルセキュリティーナンバー。」
奥田「SSNという名前で。」
小泉「社会保障は日本ほど充実していないでしょう。アメリカは。」
奥田「それは日本の方がはるかに充実している。」
ウシオ「重複支出が出ようがないという説もあるくらいだが、あることによって、そこからかなりの効果が出ている。それと、資料に書いたように、一体的改革と一元的管理も同時に進めることができる。要するに、年金、医療、介護、生活保護等、これを一体的に捉えて、制度の設計を総合的に簡素化して、しかも重複支出がないようにするということ。これで非常にいろんな点で問題がクリアになる。」
小泉「財務省か、厚労省か、こういうことから入ると、具体的な手順ないかね。そうじゃないとね、なかなかわかりにくい。」
竹中「いくつかの省で検討したことはあると思う。アメリカの場合は、ソーシャルセキュリティーナンバーを得るために、オフィスに行って登録する。日本の場合は、世界にあまりない住民票というものがあるので、それを使う方がいいか悪いかとか、改めてもう一回国民全員に登録に行っていただくのかとか、そういう問題は出てくると思う。ただいずれにしても、やろうと思えば、これはできると思う。」
小泉「個人情報の問題もある」
ウシオ「地方自治体がきちんとあるし、e-ガバメントも相当進んでいるので、手順を示せば、それほど複雑なことではないと思う。」
竹中「e-ガバメントに結びつけようと思ったら、やはり住基ネットをどう位置づけるが、そういう問題をクリアにしないといけなくなる。」
吉川「従来から、こういうものを入れるのは難しいという議論はたくさんあるが、諸外国でも、先進国はやっているわけであり、そろそろ、本当に前向きに検討していただく必要がある。」
小泉「納税者番号よりはやさしいだろう。」
本間「これは従来の番号に各共済や厚生年金をつなげばいいわけで、社会保障番号の延長線上でやろうとすれば、技術的にはクリアできると思う。ただ、今、竹中議員が言われたとおり、総務省では住基番号を使っており、どちらを使うかとか、いろいろな調整はしなければいけない。しかし、新規に納税者番号という形よりは、既存の番号を使った方がずっとやりやすいと思う。」
小泉「難しい方法を、みんなやれ、やれと言っているんだから。納税者番号を、民主党もやれやれと言っているし、識者もやれやれと。これはどこの省が、どのように、具体的にどのような問題があるか、わかりやすく整理して提示して。」
与謝野「整理して。はい。」
ウシオ「複数の省にまたがるから。」
与謝野「社会保障番号は誰か研究している人がいるはず。」
ウシオ「いろいろなところで研究している。」
本間「いろいろ情報はあると思う。ただ、政府のこれまでの取り組みもあり、それとのつなぎも勉強させていただく。」
このような感じでした。私は以前にも書いていますが、住基ネットを有効に活用すべき、という観点から、社会保障番号はこれ一つで十分なのではないかと思っています(過去の記事をお読み下されば幸いです。カテゴリー:社会保障問題)。で、他の健康保険も、厚生年金保険も、労働保険も全て番号で管理されていますから、これらの番号が一つのナンバーで管理されることになれば済む話ですね。統一された規格を持てば済みますね。将来的には、医療情報ネットワークに発展させることも可能なはずですね。専門的な問題点もあると思いますので、技術的なことはそれぞれの専門家の御意見も必要だろうと思いますが、今の時代で統一された社会保障番号とそのネットワークが整備できない、なんてことはないと思えますね。
吉川先生は「民間議員が前から言っているとおり」と仰っておりましたので、そうなの?と改めて知りました。検索して調べてみると、本当にそうでした。
今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針
月刊ESP2月号
今の今まで、本当に「ゴメーーーン」でした。あれこれ文句をつけていたのだけれど、吉川先生の仰せの通りでした。初めの頃の「骨太の方針」にもちゃんと書かれていました。スミマセンでした・・・。やはり賢い人々が集まれば、普通に考えて私程度が思いつくことは、大体考えられているのですね。
でもね、それならば、どうしてこれまで放置していたの?って思いますけど。何でもっと早くから真剣に取り組んでこなかったのですか?とツッコミたくもなりますよ。閣議決定までした事項でありながら、今までは問題を留保、先送りしてきたということなんだろうと思いますね。でも、優先するべき課題として考えられていたのが、例えば不良債権問題、道路公団問題、年金問題、郵政民営化、等々で、手が回らなかったのかもしれませんね。
うーむ、であれば何故に選挙対策的な「小手先の年金改革」に踏み切ったのか、甚だ疑問である。あの強硬採決は許されないよ、普通。諮問会議で通した「年金改革はこれでいいんだ」、という過ちをまずは認めるべきですね。公務員共済の問題、国民年金の問題、議員年金の問題、厚生年金隠れ脱退、社保庁問題、どれもこれも全く解決できてないでしょ?やるべきことがわかっていたのに、目先だけ国民を騙そうとした姿勢は厳しく糾弾されるべきでしょう。
きちんとやる積もりならば、もう一回社会保障を組み直さねばならないし、同時に「歳出・歳入一体改革」と平行するけれども、保険料と税とをどのようにするか、ということも一体的に検討していくべきですね。最低保障ということに重点を置くならば、年金一元化と財源問題(要するに消費税です)にまで踏み込んで議論すべきですよ。社会保障番号というのは、基本的にはシステムの問題であるけれども、社会保障の根幹部分でもあるのです。どのような「総合的行政サービス」として給付するか、というある種の商品設計でもあります。そこに辿り着けなければ、いくら番号をいじっても同じ。年金番号が別の「社会保障番号」という別な呼び名の数字列に置き換わった、というだけで終わってしまいますよ。
あの時の年金改革はもう過ぎてしまったことですし、当時の政治的な環境とか抵抗勢力の状況(笑)とか、そういう部分(要は統治システム)での違いがあって、後退戦を余儀なくされたのかもしれないが、それを勘案したとしても年金改革・社保庁改革をやったことにしたのは本当に酷いと思う。未だに年金不信の原因にもなっている。未納率が改善されないことにも表れているじゃないか。
なので、今度こそ真剣にやっていって下さいよ。基本方針だけでも、ちゃんとしたものを策定しましょうよ。大枠の議論がなされていないし、国民にも全然伝わっていないと思いますよ。
今後の進展に期待したいと思います。今度は統治システムの問題なんかじゃありませんからね。あくまで中身の問題ということです。