続き
◎疑問点6:
1号機のMSIV全閉の時刻は、2、3号機と一致していたのか?
チャート類からは、読み取れない。疑問点1で前述したように、記録起止時間がバラバラだからであり、警告時刻や時系列表でもあまり正確には分からない。東電説明によれば、MSIV閉の理由は外部電源(交流電源)が落ちたことにより計器電源が一時的に喪失し、その信号で自動的に閉鎖となる、というものだった。この事実の根拠となるものは、どこにも示されていない。
唯一あるのは、東電の説明、だけである。もしも電源喪失が原因ならば、全基が同一の外部電源だったはずなので、同時に全閉となる。
そもそもこの事実こそ、疑わしいように思われる。
①単一信号でMSIV全閉が自動的に起こるのか?
通常、原子炉スクラム信号であっても、大雑把に言えばA系とB系があって、A系だけの信号の場合には自動停止動作は起こらないはずだ。何故なら、スクラム後の面倒を考えれば、信号の誤発信とか、機器の故障とか、理由があり得るからだ。
にも関わらず、MSIV全閉は、「原子炉計測機器の電源喪失信号」でもって、いきなり閉じられる、ということか?
原子炉のスクラム前に閉信号が発生することはある(代表例がLOCAだ)が、その場合、前後して原子炉スクラムとなる。
すなわち、どんな理由であれ、計測機器の電源喪失信号があれば、
MSIV閉→原子炉スクラム、発電機停止
となってしまう、と。
その場合、非常用ディーゼル発電機D/Gの給電信号は全く関係ない、と。
そういうものだ、と言われたら、そうなんだなと思うしかないわけだが、そんな設計になっているのだろうか?
因みに、福島原発事故以前には、日本中の原発研究者たちや技術者たちでさえ、計測機器の電源ダウン信号でMSIV閉が起こることを誰も知らなかった、ということかね。
どんな成書にさえ、そのような記述がどこにもない、と。設計仕様にも書かれていない秘密の事項、ということか?
普通は、原発施設内で発電しているわけだから、自分で発電した電力を自家消費しているに決まっているだろう。ただ、外部電源は事故防止の為に必要ということであるが、もの凄く遠くの開閉所とか変電所なんかが壊れたり、台風なんかで電線事故がどこかで起こったりして、電線が切れた途端に、発電所内部で発電中であるにも関わらず、いきなり「計測機器の電源喪失」信号が発生する、と?
普通は、原子炉のスクラム信号が出た直後であっても、発電機は回ったままだから発電は直ぐには止められないはずだろう。数秒か数分は変わらずに発電し続けられるのではないか?
それに、発生蒸気はタービンを回しているが、その圧がいきなりゼロに途絶えたりはしないだろう。そうすると、原発施設内では通常通り発電中であるのに、外部電源の信号が途絶えただけで、計測機器電源が落ちた信号が出されてしまい、いきなりMSIV全閉→原子炉スクラムへと突き進む、と。そんなことがあるのか?
隣の原発が健全で発電を続けている場合、外部電源の故障があっても、D/Gを起動して何ら問題がないなら、外部電源が本当にダウンしてるか確認したりできるだろうし、計測機器電源を直ちにゼロにしてまでD/Gに切り替える意味があるのか?
もしもD/Gが先に起動していて給電できていれば、計測機器電源は保たれるのに?
D/Gは起動した直後に発電ができるわけでなく、定格に届くまで数秒はかかる。大体7秒前後、規則では10秒以内と定められている。したがって、D/G起動後であっても、電圧が一定になるまでは現実に機器接続などできるわけないし、施設内発電でまかなっている場面で、ゼロになっている外部電源に切り替える意味すらない。
1~3号機の計測電源喪失信号が同一時間に発せられない限り、全部がMSIV閉になることはなく、同一時間に電気信号が出されるなら、それはスクラム時刻が3基とも同じで、D/G起動後の給電がない状態で計測電源が切り替えられてしまった場合、ということしかないのではないか。原子炉施設内の発電機はまだ発電しているのに、外部電源に無理矢理切り替えられてしまう、とな。
参考までに、2号機のチャートを計測してみたが、おおよそ14時48分20秒前後であり、1号機の閉信号の時間とズレがあった。1号機では、47分50秒~51秒にclose信号(A、C、B、Dの順)が出ていた。もし、計測機器電源喪失信号が同一時間だったのなら、MSIV閉信号の出る時間もほぼ同一でなければならないはず、というのはそういうことだが、チャート上からは約30秒程度のズレがあるように思われる。ただし、不正確なグラフをいくら計測しても正確な結果ではないから、チャートは証拠にはならない。
ただ、設計として、異様なシステムだな、とは思う。信じ難い。
②3号機だけ冷却してなかった時間が長い
スクラム→MSIV全閉となって、2号機が14時50分にRCIC手動起動、14時52分に1号機ICが自動起動、だった。だが、3号機だけは、15時05分までは何にも手をつけていなかったのだ。その時間に手動でRCICを起動したが、約20分間も一切給水することなく放置していた、ということである。本当にそんなことが可能なのか?
前述した通り、MSIV開の場合だと自動調節が容易なのだが、全閉の場合だと調節が極めて難しいのだ。3号機が調節機能を保っていたのは、唯一SRVだけ、ということになる。原子炉圧力が高まるので蒸気が抑制プールに逃がされるが、水位はみるみると下がってゆくはずだろう。給水なしで、10分も持つわけがない。1号機だって、5分程度でICが起動している。
3号機はL-2でHPCIとRCICが自動起動するし、停止後20分間も水位がそのレベルまで低下しなかったとは考え難い。
あるとすれば、3号機だけは別の方法で冷却できていたのではないか、ということくらいだ。しかも、MSIV閉ではない、普段から慣れた主復水器を使う方法によってではないか、と。それならば、何もしてなかったとしても、合点がいく。
つまり、3基のMSIV全閉のタイミングは、一致していなかったのではないか、ということである。しかも、1号機と2号機は別の理由によって生じた可能性がある、と推測している。
少なくとも、計測機器の電源喪失信号という信じ難い理由で、MSIV全閉に至ったわけではないんじゃないか、ということである。
◎疑問点6:
1号機のMSIV全閉の時刻は、2、3号機と一致していたのか?
チャート類からは、読み取れない。疑問点1で前述したように、記録起止時間がバラバラだからであり、警告時刻や時系列表でもあまり正確には分からない。東電説明によれば、MSIV閉の理由は外部電源(交流電源)が落ちたことにより計器電源が一時的に喪失し、その信号で自動的に閉鎖となる、というものだった。この事実の根拠となるものは、どこにも示されていない。
唯一あるのは、東電の説明、だけである。もしも電源喪失が原因ならば、全基が同一の外部電源だったはずなので、同時に全閉となる。
そもそもこの事実こそ、疑わしいように思われる。
①単一信号でMSIV全閉が自動的に起こるのか?
通常、原子炉スクラム信号であっても、大雑把に言えばA系とB系があって、A系だけの信号の場合には自動停止動作は起こらないはずだ。何故なら、スクラム後の面倒を考えれば、信号の誤発信とか、機器の故障とか、理由があり得るからだ。
にも関わらず、MSIV全閉は、「原子炉計測機器の電源喪失信号」でもって、いきなり閉じられる、ということか?
原子炉のスクラム前に閉信号が発生することはある(代表例がLOCAだ)が、その場合、前後して原子炉スクラムとなる。
すなわち、どんな理由であれ、計測機器の電源喪失信号があれば、
MSIV閉→原子炉スクラム、発電機停止
となってしまう、と。
その場合、非常用ディーゼル発電機D/Gの給電信号は全く関係ない、と。
そういうものだ、と言われたら、そうなんだなと思うしかないわけだが、そんな設計になっているのだろうか?
因みに、福島原発事故以前には、日本中の原発研究者たちや技術者たちでさえ、計測機器の電源ダウン信号でMSIV閉が起こることを誰も知らなかった、ということかね。
どんな成書にさえ、そのような記述がどこにもない、と。設計仕様にも書かれていない秘密の事項、ということか?
普通は、原発施設内で発電しているわけだから、自分で発電した電力を自家消費しているに決まっているだろう。ただ、外部電源は事故防止の為に必要ということであるが、もの凄く遠くの開閉所とか変電所なんかが壊れたり、台風なんかで電線事故がどこかで起こったりして、電線が切れた途端に、発電所内部で発電中であるにも関わらず、いきなり「計測機器の電源喪失」信号が発生する、と?
普通は、原子炉のスクラム信号が出た直後であっても、発電機は回ったままだから発電は直ぐには止められないはずだろう。数秒か数分は変わらずに発電し続けられるのではないか?
それに、発生蒸気はタービンを回しているが、その圧がいきなりゼロに途絶えたりはしないだろう。そうすると、原発施設内では通常通り発電中であるのに、外部電源の信号が途絶えただけで、計測機器電源が落ちた信号が出されてしまい、いきなりMSIV全閉→原子炉スクラムへと突き進む、と。そんなことがあるのか?
隣の原発が健全で発電を続けている場合、外部電源の故障があっても、D/Gを起動して何ら問題がないなら、外部電源が本当にダウンしてるか確認したりできるだろうし、計測機器電源を直ちにゼロにしてまでD/Gに切り替える意味があるのか?
もしもD/Gが先に起動していて給電できていれば、計測機器電源は保たれるのに?
D/Gは起動した直後に発電ができるわけでなく、定格に届くまで数秒はかかる。大体7秒前後、規則では10秒以内と定められている。したがって、D/G起動後であっても、電圧が一定になるまでは現実に機器接続などできるわけないし、施設内発電でまかなっている場面で、ゼロになっている外部電源に切り替える意味すらない。
1~3号機の計測電源喪失信号が同一時間に発せられない限り、全部がMSIV閉になることはなく、同一時間に電気信号が出されるなら、それはスクラム時刻が3基とも同じで、D/G起動後の給電がない状態で計測電源が切り替えられてしまった場合、ということしかないのではないか。原子炉施設内の発電機はまだ発電しているのに、外部電源に無理矢理切り替えられてしまう、とな。
参考までに、2号機のチャートを計測してみたが、おおよそ14時48分20秒前後であり、1号機の閉信号の時間とズレがあった。1号機では、47分50秒~51秒にclose信号(A、C、B、Dの順)が出ていた。もし、計測機器電源喪失信号が同一時間だったのなら、MSIV閉信号の出る時間もほぼ同一でなければならないはず、というのはそういうことだが、チャート上からは約30秒程度のズレがあるように思われる。ただし、不正確なグラフをいくら計測しても正確な結果ではないから、チャートは証拠にはならない。
ただ、設計として、異様なシステムだな、とは思う。信じ難い。
②3号機だけ冷却してなかった時間が長い
スクラム→MSIV全閉となって、2号機が14時50分にRCIC手動起動、14時52分に1号機ICが自動起動、だった。だが、3号機だけは、15時05分までは何にも手をつけていなかったのだ。その時間に手動でRCICを起動したが、約20分間も一切給水することなく放置していた、ということである。本当にそんなことが可能なのか?
前述した通り、MSIV開の場合だと自動調節が容易なのだが、全閉の場合だと調節が極めて難しいのだ。3号機が調節機能を保っていたのは、唯一SRVだけ、ということになる。原子炉圧力が高まるので蒸気が抑制プールに逃がされるが、水位はみるみると下がってゆくはずだろう。給水なしで、10分も持つわけがない。1号機だって、5分程度でICが起動している。
3号機はL-2でHPCIとRCICが自動起動するし、停止後20分間も水位がそのレベルまで低下しなかったとは考え難い。
あるとすれば、3号機だけは別の方法で冷却できていたのではないか、ということくらいだ。しかも、MSIV閉ではない、普段から慣れた主復水器を使う方法によってではないか、と。それならば、何もしてなかったとしても、合点がいく。
つまり、3基のMSIV全閉のタイミングは、一致していなかったのではないか、ということである。しかも、1号機と2号機は別の理由によって生じた可能性がある、と推測している。
少なくとも、計測機器の電源喪失信号という信じ難い理由で、MSIV全閉に至ったわけではないんじゃないか、ということである。