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リーマン提訴の謎

2008年04月15日 02時57分37秒 | 経済関連
丸紅がリーマンに訴えられたという事件である。
事件だけ見れば、リーマン側の主張は無理筋に見える。大手企業社員が偽造書類で架空投資を誘い込む詐欺事件というのは、さほど珍しいものではないからだ。

例えばコレ>架空投資損賠訴訟:元証券会社員に3860万円賠償命令--地裁高崎支部判決 /群馬 - 毎日jp毎日新聞

使用者責任が認定されるというのは、ハードルが高いと考えられるそうだがどうだろうか。
こんなのもある>大和証券グループ本社 大和のCSR 持続可能性報告書2003

朝鮮総連本部詐欺事件でも、元銀行員が逮捕された。大手金融機関社員などによる詐欺事件は起こり得るということであろう。


話を戻そう。
丸紅側のリリースがあったので、読んでみた。
リーマン・ブラザーズ証券株式会社の関係会社から受領した訴状の内容についての当社の見解

これを読むと、問題となっている出資スキームが判りやすい。どう見ても丸紅は被害者に過ぎず、元嘱託社員の行為を防ぎ得たかというと、極めて困難ではないかと思われる。書類偽造や演技をすることを完璧には防げないだろう。大事な社印とかがずさん管理になってとか、重要書類(たとえば取締役会議事録?とか稟議書?とか、大企業の仕組みや仕事を知らないので適当です)をいつでも偽造できるような安易な管理になっていた、とかのような、重大な(善管)注意義務違反でもあれば別だが、そうでなければ社員全員を四六時中監視監督しておけるわけではないのだから。話す内容とか行動全てについて、使用者の注意が及ぶものではないだろう。
なので、リーマン側の主張は無理があるとしか思われない。


この事件には、更なる謎があるようである。

深層 丸紅偽造保証書問題で意外な波紋:NBonline日経ビジネス オンライン

出資スキームで登場するアスクレピオスなる会社が出資しないのに、投資事業組合を組成しているのだ。しかも、全然利益の出ていない(売上高の殆どは薬局で稼いでいる程度の)医薬ベンチャー企業が親会社なのだ。これがLTTバイオファーマということだ。アスクレピオスは多額の病院債権を持っていたメデカから、157億円の債権を53億円で買い取り、なおかつ子会社(ファイティング・ブル・インベストメント)の発行する社債35億円を掴まされたということらしい。これだけには留まらず、メデカ株の筆頭株主から大量に買い取ったのも謎である。

丸紅が病院再生事業を約400億円もかけて行うのであれば、アスクレピオスとかその関連会社を通じて行う必要性というのは、考え難いであろう。しかも、高々400億円くらいの資金を丸紅が出さず、「リーマンに出資させる」ということの意味も意図も全く判らないであろう。安易な偽造書類と丸紅の部長を名乗った替え玉男の登場くらいで、数百億円もの金をリーマンがすんなりと出すのも不自然ではある。


警察が捜査するだろうから、いずれ事件が明らかにされていくかもしれないが、思うところを書いてみる。予断を与えるのはよくないかもしれないが、ご容赦願います。

リーマンが騙されたとして、何故丸紅を訴えたのであろうか?アスクレピオスや親会社であるLTTバイオファーマなんかの方が、関与が深いのであるから、まずそちらから回収するべきなのではないか?これが素朴な疑問。
投資事業組合というのは、ある種の隠れ蓑的なものでもあるので、実態が掴みにくいのだろうと思う。わざわざ組合を組成する意味って、一体何なのだろうか?会社に直接金を出せば済む話ではないかと思えるのだが。本当に病院再生事業をやるのであれば、その事業を行う会社に金を出し、回収する時にも会社から金を引き上げれば済むだけなのだ。丸紅が保証するのであれば、会社が払えない時にその債務を肩代わりするだけなのだし。投資事業組合である必然性というものがない。

LTTバイオファーマという会社の謎部分は多い。会社本体の売上も利益も全然ない。連結子会社に売上高があるだけなのだ。しかもアスクレピオスを株式交換で子会社化したのだが、これもよく判り難い。売上はこちらの方が全然大きいからね。


全くの仮定の話を考えて見る。
ある出資主体があって、投資事業組合を組成しそこに資金を入れる。その組合はベンチャーとかに金を出したり株式売買などで儲けたりするのと、上場バブルとかでも何でもいいので市場で売り抜けたりして、ひたすら錬金術に勤しんでいたと。しかし、別件で大騒ぎになって(○○○モン逮捕とか?)、その後も思ったようには行かず、初期投資が回収困難となってきたとしたら?出資主体のケツにも火がついて、資金回収に躍起になっていたら?太平洋の向こう側で、ヤバい事情になっているもんだから、保有する投資事業組合をいくつも解散したりせねばならず、その資金引き上げの一環で初期投資を或いは1円でも多くどうしても回収せねばならない状況に追い込まれたとしたら?
初期投資100億円を入れていて、回収できそうなのが50億円だと。足りないぜ、と。どこか1箇所に全てのゴミを集めてダメ会社を破産させる。が、破産する前にできるだけ資金を多くそのダメ会社に引っ張ってこなければならない、と。ある架空スキームをつくり、保険を掛ける。資金回収が困難になった時に、支払われる保険だ。いや、保険じゃなくてもいいのだが、保険同様の仕組み(デフォルト・スワップとか?よく判らん)があればいいだけ。保険金の支払条件が、債務者や債務保証者への提訴であるとしたら、提訴すればいいだけなのだ。後は、ダメ会社を利用して金を集める。ダメ会社に出資したように入金記録を残す。300億円とか入れるわけだ。ダメ会社からは入金した金を裏でバックさせる。合計400億円(初期投資100億+後から入金した300億)を入れたことになるが、ダメ会社倒産で債務保証会社を提訴すれば保険金300億円が入ってくるので、回収50億円と合わせると350億円になる。裏でバックさせた300億円も懐に入るなら、650億円が回収される。うまい話じゃないか。後は投資事業組合を消滅させれば、跡形もなく消える。裁判の勝敗はどうでもいい。大事なのは、入金した金をバックさせることと、保険金をもらうことだ…。


こういうのを陰謀論と言います。なので、決して本気にしてはいけません。


そういえば、こんな話もあったな。
米リーマンLEHN株が一時10%近く下落、資金繰りめぐるうわさで マネーニュース 最新経済ニュース Reuters

投資ファンド解散の話も。
リーマン・ブラザーズ、3つの投資ファンドを清算 ビジネス Reuters


鬼のような米系証券会社が、ただの偽造した紙っぴらだけを信じて、数百億円もの金を出すのだろうか?事業の評価とか内容の確認とかを行うことなく、ベンチャー企業の子会社でしかない得体の知れない会社に数百億円もの金を短期間で入れるものなのだろうか?それも、昨年11月以降のサブプライムショックが本格化して、「リスクを取り難い」状況になってからなのに?

NIKKEI NET(日経ネット):主要ニュース-各分野の重要ニュースを掲載

この焦げ付き話が出てから、ロイター記事にあったような「ウワサ」が流れたようだが、何か関係があるのかな?
業界内で何か知ってる人たちとか、そういうところから情報漏れとなったとかなのかな?いや、そういう業界事情みたいなことは全く知らないんだけど。


ま、謎の多い事件であることは確かです。





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5 コメント

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ナイスな解説 (ろっし)
2008-04-15 06:01:28
 ナイスな解説ですね。背景は、記載されたとおりだと思います。丸紅側としては、架空契約と主張するのは当然でしょう。架空契約を結んだ社員の監督義務が会社にあるのかが焦点になると思われます。

 にしても、リーマンは解かっていて、わざと騙されて訴訟にしている気もするが。
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Unknown (まさくに)
2008-04-18 10:15:08
丸紅の使用者責任を認めたら、今後類似事件においては相当のリスクを企業が抱え込むことになるでしょう。会社の名刺や肩書きを使って、ある社員が詐欺行為とか違法な資金集めをするとかすると、会社が補償せねばならない、ってことになってしまいます。
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すいません (ろっし)
2008-04-19 02:03:55
 すいません、素人考えなので。相手の企業も社員であるかの確認は必要に思います。名刺詐欺は、名刺を使用された会社も被害者ですから。

 会社に損失させた場合、個人責任でなく、会社責任になる場合があると聞いています。個人に対しで無く、会社を信頼して取引を行ったと。その社員が、故意、過失かも問題になるとは思いますが、それは会社から個人に対する請求になると。
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あっ、いえ、 (まさくに)
2008-04-20 16:02:14
私もよく知るわけではありませんので。叱責するかのような印象を与えたのであれば、申し訳ありません。

多分会社や所属組織に賠償責任を生じるというのは、会社や組織の「業務」の一部として行われているような場合ではないでしょうか。

ありがちなのは、公務員が何か犯罪行為を犯していて生活保護費だの年金保険料だのを詐取していたりすると、それら賠償は自治体か国が行うでしょうが、その分は後から犯罪行為を行った公務員個人へ請求されるでしょう。
市立病院で賠償しなければならない場合も同じであり、医師や看護師にその原因があっても、まず市が相手方に払い、その分を後から医師や看護師に請求するということになります。
暴力団組長の場合に使用者責任が認定され、支配下組員の犯罪に対し賠償責任が負わされたことがありますので、組織(会社等)に使用者責任が認められるのは時と場合によると思います。
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よくわかりました (ろっし)
2008-04-20 17:39:29
 ありがとうございます。よくわかりました。

「多分会社や所属組織に賠償責任を生じるというのは、会社や組織の「業務」の一部として行われているような場合ではないでしょうか。」

 そのとおりです。
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