いい国作ろう!「怒りのぶろぐ」

オール人力狙撃システム試作機

日本経済は基礎的強さが残っている

2008年11月20日 16時12分09秒 | 経済関連
1)貿易赤字

NIKKEI NET(日経ネット):経済ニュース -10月の輸出額、01年12月以来の大幅減 貿易赤字639億円

(以下に引用)

財務省が20日発表した10月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出総額は前年同月比7.7%減の6兆9261億円となった。世界的な金融危機と景気低迷の影響で、2001年12月以来、約7年ぶりの大幅な減少率を記録した。欧米向けに加え、アジア向けの輸出も6年8カ月ぶりの減少に転じた。貿易収支は639億円の赤字で、10月としては1980年以来、28年ぶりの赤字となった。

 日本の貿易収支は8月に3321億円の赤字となり、1月を除いて約26年ぶりの赤字を記録した。金融危機の打撃で世界経済が冷え込み、10月は2カ月ぶりの赤字となった。(11:02)

=====

書いてあることは事実ではありますが、もうちょっと掘り下げといいますか、「見方」についての工夫がある方がよいかもしれません。
8月に引き続き10月も赤字だ、ということで、何と言いますか、ショックを受けたかのように思っているかもしれませんが、現在はまだそんなに大袈裟に不安視するようなことではありません。今年はやや特殊な年なので、調整までに若干の時間がかかるかもしれませんが、悲観するには及びませんよ(笑)。

北米及び欧州の減速というのは確かですが、日本経済に与えるダメージを深刻に捉えるほどではありません。
特に米国向け輸出はここ数ヶ月間連続で下げてきていますので、その延長傾向というだけです。今に始まったことではありません。また、欧州のダウンというのは事実ですが、中身としては全然ダメージが小さいでしょう。
まず第一に、大きな要因としては、為替変動というものがあります。
対ドルでも、ユーロやポンドに対しても、大幅な増価となったことはご存知と思います。この影響を受けて、円ベースでの売上高では大幅に小さくなってしまうものと思います。しかし、現地通貨ベース(又はドルベース)で見た場合には、「減ってきている」という傾向が明確に出てきているとしても、円ベースで見た場合に比べると減少幅は小さくなるでありましょう。

第二に、北米及びEU圏の輸出ウェイトが以前に比べると格段に小さい。10月のデータでは欧米で約2.15兆円程度ですが、アジア向けは3.4兆円もあります。金融危機の本体は米国や英国をはじめある程度の先進国に集中しており、その消費が減速するというのは不可避でありましょう。けれども、そのウェイトはかつてほど大きくはない。01年は輸出が足を引っ張り(笑)、成長率にはマイナス寄与でしたが、当時の10月輸出額に比べると現在は約1.67倍に増加しています。この増加分の多くが「アジア圏」をはじめとする「非欧米向け」なのです。特に欧州の購入額は年ベースで見ても全然大したことがありません。ドイツを初めとする工業国がひしめいているので、日本製品を必ずしも買わずに済むから、ということかと思います(米国ではそうした製品の多くが輸入になっており、自国圏で調達できないから購入額は増加するだろうと思われます)。10兆円か10数兆円程度なのだから、ちょっと減少するとしても、数十兆円もの減少になるわけではない。少なくともいきなり半減したりはしないでしょう。

特に中国向け輸出はEUへの総額を軽く上回る1.16兆円となっており、若干の減少があったものの、為替要因を除くと元ベースでは恐らく増加しているのではないかと思われる。昨年10月水準に比べて、今年は円が約5.6%程度の増価となっているからである。今後の減速が不安視されると思うが、中国の成長率が突然マイナスになったりはしないだろうから、依然として需要はかなりあると見込まれる。EU全部のダメージよりも、中国の需要が半減するということの方が大きい、ということ。大袈裟に言う程、直ぐには沈んでいかないであろう。

そういうわけで、輸出額のドルベースで見て、日本からの輸出額が04年規模(約60兆円)くらいまで落ちたとしても、成長率寄与度では案外マイナス幅はたいしたことない。現実には、そこまでのマイナスが観察されてはいないわけだが。

財務省貿易統計 Trade Statistics of Japan


2)円高と交易条件

今年は輸入額の伸びが大きかったが、その理由とは原材料高であった。ありとあらゆる原材料が値上がりしていってしまったが、夏以降の価格下落は今後に効いてくるだろう。今はその過渡期と言ってもいいかもしれない。

特に問題となったのは、エネルギー価格上昇であった。これは01年以降の傾向であったのだが、顕著になり出したのは04年以降の時期であった。石油、石炭、天然ガスなどの価格上昇と円安効果などがあって、対GDP比で2.2%まで上昇し、輸入物価上昇も観察された(02、03年は輸入物価がマイナスだった)。
それでもかなり早いピッチの上昇であったが、今年に入って以降の原油バブルで全てが台無しになってしまったわけだ。恐らく08年度通期では、エネルギー輸入金額の対GDP比は4~4.5%程度になっているだろう。要するに、04年時の2倍、ということ。円ベースの輸入額の伸び率の大半は、これら要因によるものであろう。だが、現在の原油価格は50ドル台に落ち、円高の影響もあって、今後も輸入に占めるウェイトは下落していくだろう。即ち、輸入額の純減に繋がる可能性が高い、ということだ。

参考資料>http://www.group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/rashinban/pdf/et08_061.pdf


また、資料中の図でも明らかなように、交易損失は03年以降拡大の一途であり、これが是正される過程に入っているのだから、約25兆円規模で損失があったものが、今後には大きく改善されていくであろう、ということが予想される。この規模の大きさは、輸出企業の減速全部よりも、かなり大きい額だろう。09年3月期にたとえ輸出が10兆円程度減少(欧州が半減、米国で25%減、くらいの減少規模だ、06年の75兆円とあんまり変わらない)したとしても、交易条件改善でGDPにはプラスの影響となる可能性が高い。

<因みに、06年の平均株価が今の倍くらいはあったのに、何故日本株がここまで売り込まれなければならないか、ということは、多分誰も疑問には思っていないのかもしれない。輸出が今後にちょっとマイナスになるよ、ということがあるとしても、05年時点では65兆円しか(20兆円も少ない!)なかったじゃないか(笑)。それから考えると、トヨタが苦しむと全部の経済活動がダメになる、みたいな短絡的理屈でしか考えていないのではないかとしか思えない。鉄鋼も石炭も値下がりするのだから、必ずしも悪いことばかりではない。輸入額減少は、日本の購買余力を生み出せるから、かなりのプラス効果があるはずだ。輸出企業の連中が大袈裟に騒ぎすぎなんだろ。>


※ちょっと追加ですが、一応、ここ最近の参考記事です。

円高で日本だけが助かる

現時点の為替介入は無駄

トヨタの過信

円高のダメージはさほど大きくはない、というのは、これらに書いてきた通りです。


3)新興国やアジア諸国の成長

先進国の資本が引き上げられると、アジア各国の成長が減速する、というのはそうなんだろうな、とは思う。また、欧米の消費に支えられてきたこれら国々の仕事が大きく減っていく、ということもあるかもしれない。しかし、そうであるとしても、欧米のゼロまたはマイナス成長に比べれば、成長余地は大きいと考えられる。

例えば携帯電話市場であるが、人口規模の小さい欧州の普及率と比べると、まだまだ低いからである。欧州の裕福な小国であると100%近いか100%超えのところもある。しかし、アジア圏ではまだまだ低い。中国でも約45%程度と言われており、今後60%程度まで普及するとなれば、2億台以上の需要が見込まれる。他のインド、パキスタン、その他中央アジアなど人口規模の大きい国々においては、普及需要がかなり大きい規模で期待できる。
どんなに所得の低い国々であったとしても、これまで電気やテレビなどの基礎的インフラ需要は着実に伸びてきたであろうと思うので、今後にも「携帯電話というインフラ」が確実に伸びるだろう。なんたって、テロの連中でさえ使っている時代ですので。

携帯電話普及率、2011年に全世界人口の70%へ - japaninternetcom 携帯・ワイヤレス

これと同様な傾向だと思うのが、インターネット普及だ。
近年、格安パソコンがかなり多く出てきたが、この低価格化したパソコンは全世界への普及を促進するようになるだろう。中国のネット普及率は約2割弱くらいと言われており、携帯電話普及と共にネット普及が進むだろう。これはインドでも同様。電気や上下水道などの整備と同じく、ネット環境というのが携帯電話と共に進んでいくだろう。

これら携帯電話需要やインターネット普及に伴う需要によって、電子部品や半導体需要というのは個数ベースで見ていけばやはり増加していくだろうと思われるが、製造コストは規模の経済が効くようになっていくので廉価化していくだろうと思う。だからと言って、無限にゼロには近づいていかない。それは「小麦の生産コスト」がゼロになったりはしてないのと同じだからだ。電力供給も効率化がかなり進んではいるが、ゼロにはできない。1W発電当たりのコストは、先進国になればなるほど低いだろうと予想しているが、それと同じようなものだろうと思う。かなり効率化を図ったとしても、次第に「限界点」に近づいていくのではないかな、と。そこから下を狙うのは、中々大変なのだ(笑)。


これと似たようなことが、新興国のインフラ需要全般に言えるので、成長力が残されるだろう。
昔は、裸足の生活だったものが靴を履けるようになり、裸だったのがTシャツを着るようになった、というようなことかな。製造コストが下がっていったこと、所得の低かった国の平均所得が増加してきたこと、それらが相まって靴を履きTシャツを着るようになる人々を生み出したのだ、ということかな。まだ裸足でTシャツを着ていない人がいる限り、需要は消えてなくならない。


4)日本の経済状況

欧米が大きなダメージを受けているとしても、日本までもが共に悲観し過ぎることはない。欧米の需要減が影響を与えるということは当然なのだが、その依存割合は日本の場合に致命的とも言えない。交易条件改善で生み出された数兆~数十兆円分は、必ずプラスに作用する。そのお金を日本国内に使うんだよ。

企業の株価が04年当初に戻ったとしても、当時の企業業績(+見通し)より今年や来年の方がいい、という企業は、たくさんある。当時に将来株価が上がると予想していたエコノミストだとか金融機関の分析屋たちは、殆どが「口から出まかせ」みたいな詐欺的文句を並べていたんだろうね、きっと。
「これだけの企業価値があるからそれよりも現在株価は安すぎる、従って将来株価は上がるはずだ」という意図であろうと思うが、もしそうであるなら、数年前の企業業績に戻るとしても「当時の企業価値」と同程度か、期待込みで「若干のマイナス」というのが織り込まれて少しくらい低いとしたって、今ほど安くなければならないという理由なんてない。
企業の将来収益をどの程度まで見込むのか、ということの違いがあるとしても、日本企業が02年当時と同じ水準で当然だ、とする理由など、見出せないんだけれどもね。なんと言いますか、いかに「株屋」の連中が嘘八百を述べていたか、ということがよく判りますな。株価の算出基準なんてものは、「ほぼ適当」とか単なるこじ付け的なものでしかない、ということでしょう。だから、一般投資家たちが逃げていってしまうのでしょうね。



とりあえず、日本の経済状況は輸出が減速したとしても、ダメージは欧米に比べると小さいはずだ、ということ。何と言っても、「売る物がある」ということが最大の強みであると思う。米国の株価が下がると、「日本の株価も下がってしまわなければならない」なんていう理由は、本来存在していないはずなのだ。だが、情報化した金融世界では、あまりに連環が進んでいるので、「他の投資主体」の期待や考え方までも「織り込もうとして」、取引しようとするからである。理論的に正しいことが取引に必要なのではなく、「他のプレイヤーならどうするか」という発想に基づくからこそ、誤った取引だろうが何だろうが通用してしまうのだ。まあ、しょうがないわな。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。