西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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アラン・コルバン監修『男らしさの歴史』全3巻

2018年03月28日 | 手帳・覚え書き


『男らしさの歴史1 男らしさの創出 〔古代から啓蒙時代まで〕』アラン・コルバン (監修,集編), ジャン=ジャック・クルティーヌ (監修), ジョルジュ・ヴィガレロ (監修)
(男らしさの歴史(全3巻)) 単行本 – 2016/11/26

日本の読者へ アラン・コルバン(小倉孝誠訳)
序文 アラン・コルバン/ジャン=ジャック・クルティーヌ/ジョルジュ・ヴィガレロ(小倉孝誠訳)

第I巻序文 男らしさ、古代から近代まで ジョルジュ・ヴィガレロ(鷲見洋一訳)

第I部 古代ギリシア人にとっての男らしさ モーリス・サルトル(後平澪子訳)

第II部 古代ローマ人にとっての男らしさ――男(ウィル)、男らしさ(ウィリリタス)、美徳(ウィルトゥス) ジャン=ポール・チュイリエ(後平澪子訳)

第III部 蛮族の世界――男らしさの混合と変容 ブリュノ・デュメジル(小川直之訳)

第IV部 中世、力、血 クロード・トマセ(小川直之訳)

第V部 近代世界、絶対的男らしさ (十六―十八世紀)
近代的男らしさ 確信と問題 ジョルジュ・ヴィガレロ(寺田元一訳)
第1章 男らしさとそれにとって「異他なるもの」――逆説的な男性性の描像 ローレンス・D・クリツマン(寺田元一訳)
第2章 僧侶の男らしさ ジャン=マリ・ルガル(寺田元一訳)
第3章 男の熱さ ヨーロッパの男らしさと医学思想 ラファエル・マンドレシ(寺田元一訳)
第4章 ルイ十四世もしくは絶対的男らしさ? スタニス・ペレーズ(片木智年訳)
第5章 戦士から軍人へ エルヴェ・ドレヴィヨン(片木智年訳)
第6章 曖昧なジャンルと演劇的実験 クリスティアン・ビエ(片木智年訳)
第7章 絵画の証言 ナダイェ・ラナイリー=ダーヘン(篠原洋治訳)
第8章 発見された大地の男らしさと未開人 ジョルジュ・ヴィガレロ(篠原洋治訳)

第VI部 啓蒙と不安な男らしさ
第1章 民衆の男らしささまざま アルレット・ファルジュ(鷲見洋一訳)
第2章 エクササイズの遊戯、娯楽と男らしさ エリザベト・ベルマス(鷲見洋一訳)
第3章 フィクションの男たち ミシェル・ドロン(鷲見洋一訳)


原注
監訳者解説(鷲見洋一)

出版社からのコメント
ギリシア語の「アンドレイア」は、戦争、武勇、性の支配などという含意も含めて、格付けのための枠組をなしている。たとえば、ただの男ではなく、もっとも「価値」ある男を、男性という性を代表する者ではなく、男らしさというものをこの上なく見事に、段違いに代表している者のことなのである。
モデルは時代を超えて存続する。長期にわたって戦闘訓練を受け、闘争能力こそわが身の誉れと心得るスパルタの若者と、おなじように長いこと訓練を受け、決闘に勝利してこそ名を成せると信じる若い中世の騎士との間には、遠い係累を考えられるかも知れないのだ。力と支配にかかわるコードを事細かに覚えて身に付けることは、長いこと、男として一人前になるための最初の指標であった。
(「第I巻序文」より)

男らしさは古くからの伝統を刻印されている。それは単に男性的であるということではなく、男性の本質そのものであり、男性の最も完全な部分ではないにしても、その最も「高貴な」部分を指す。男らしさとは徳であり、完成ということになる。
フランス語の男らしさvirilitéという語の由来になっているローマ時代のvirilitasは、「精力的な」夫という明瞭に定義された性的特質を有しており、いまだに規範であり続けている。精力的な夫とは体が頑強で生殖能力が高いというだけでなく、同時に冷静で、たくましくてかつ慎み深く、勇敢でかつ節度ある夫という意味である。
それは力強さと徳の理想、自信と成熟、確信と支配力を示す。男は挑戦するものだという伝統的な状況がそこから生まれる。男は「自己制御」と同じくらい「完璧さ」や優越性を目指さなければならない。そしてまた性的影響力と心理的影響力が結びつき、肉体的な力と精神的な力が結びつき、腕力とたくましさが勇気や「偉大さ」を伴う、というように多くの長所が交錯している。
(「序文」より)


『男らしさの歴史 II 男らしさの勝利 〔19世紀〕』 (男らしさの歴史(全3巻)) 単行本 – 2017/3/23

日本の読者へ アラン・コルバン(小倉孝誠訳)
序文 アラン・コルバン/ジャン=ジャック・クルティーヌ/ジョルジュ・ヴィガレロ(小倉孝誠訳)
第II巻序文 アラン・コルバン(小倉孝誠訳)

第I部 自然主義をとおして見た男らしさ アラン・コルバン(小倉孝誠訳)

第II部 男らしさの規範――教化の制度と方法
第1章 「男らしさへの旅」としての子ども時代 イヴァン・ジャブロンカ(和田光昌訳)
I 男らしさの規範
II 身体で覚えさせられる男らしさ
III 性を浄化する

第2章 軍隊と男らしさの証明 ジャン=ポール・ベルトー(真野倫平訳)
I 「ひと皮剥ける」
II 暴力の教育
III 身体の訓練、魂の苦痛
IV 軍人の男らしさと性
V 男らしさと連帯精神

第III部 男らしさを誇示する絶好の機会
第1章 決闘、そして男らしさの名誉を守ること フランソワ・ギエ(和田光昌訳)
I 決闘の根源にある名誉
II 対決の主役となるものたち
III 決闘の儀式と慣習
IV 決闘の変容

第2章 性的エネルギーを示す必然性 アラン・コルバン(小倉孝誠訳)

第IV部 男らしさの表象の社会的変動
第1章 軍人の男らしさ ジャン=ポール・ベルトー(真野倫平訳)
I 哲学者軍人と農民兵士
II 市民兵士と有徳な軍人
III 名誉、栄光、男らしさ
IV 兵士たちの言葉と世紀病
V 植民地軍人の男らしさ
VI 軍人の男らしさが議論の的になる
VII 軍人の男らしさと国民の再生

第2章 労働者の男らしさ ミシェル・ピジュネ(寺田光德訳)
I 予備調査
II どのような男らしさか?
III 労働における男らしさ
IV 仕事を越えて、労働者の男らしさを表現する三領域

第3章 カトリック司祭の男らしさ――確かにあるのか、疑わしいのか? ポール・エリオー(和田光昌訳)
I 男らしさの特別な養成
II 規範を求めて
III 異議を唱えられる規範
IV 女―司祭?
V 時代の要請

第4章 スポーツの挑戦と男らしさの体験 アンドレ・ローシュ(寺田光德訳)
I 挑戦試合、貴族的風習の遺物?
II 決闘を規制し判定する
III 未完の男性
IV 進行中の記憶
V 助け合い、鍛え合い、つかみ合う
VI 強い男たちのための場所
VII 退化に抗して闘う
VIII 文化に挑む自然
IX 時代を制御し支配する

第V部 男らしさを訓練する異国の舞台
第1章 旅の男らしい価値 シルヴァン・ヴネール(寺田寅彦訳)
I 男の交通
II 重々しい物語
III 男になること

第2章 十八世紀終わりから第一次世界大戦までの植民地状況における男らしさ クリステル・タロー(寺田寅彦訳)
I 男らしい植民地化――軍事征服と「活用」
II 「現地人」の男らしさの去勢

第VI部 男らしさという重荷
第1章 男らしさの要請、不安と苦悩の源 アラン・コルバン(小倉孝誠訳)

第2章 同性愛と男らしさ レジス・ルヴナン(寺田寅彦訳)
I 医学と同性愛――女性化と男性同性愛との混同の出現
II 文学と同性愛――問題となる男らしさ
III 女っぽい振舞――当局にとってのすべての同性愛文化の共通項目?
IV 同性愛者が男らしいことはありうるか?   同性愛者の発言

結論 第一次世界大戦と男らしさの歴史 ステファヌ・オードワン=ルゾー(小倉孝誠訳)

原注
監訳者解説(小倉孝誠)

出版社からのコメント
■「男らしさの勝利」という副題をもつ本巻は、全体としてみれば、十九世紀という革命後の転換期、民主化と産業革命の時代に男らしさがどのように涵養され、教えこまれたか、そうして獲得された男らしさは、いかなる機会と空間において発揮されることが期待されていたか、そして社会集団によって男らしさがどのように差異化されていたかを論じている。
■各巻をつうじて明瞭になるのは、男らしさの規範が時代によって変遷してきたこと、男らしさという一見普遍的な価値観が、歴史をつうじて何度も「危機」にさらされ、解体の淵にまで追い込まれ、そして新たな社会と文化の基盤のうえで刷新された形で再生してきたということである。危機と再生と変貌――それが男らしさの歴史を特徴づける。
(監訳者・小倉孝誠)

■十九世紀は、男らしさの美徳が最大限に影響力をふるった時代である。
■当初は、ごく幼い頃から男子に教えこまれる規範が普及していく。勇気、さらには英雄主義、祖国のための自己犠牲、栄光の探求、挑戦は何であれ受けて立つべきだという態度が男性たちに課される。そして法体系は家族内の男の権威を強化した。
■その後、生理学者たちがこの価値体系の確立に寄与する。男というのは精力的に活動し、発展し、社会闘争に参加し、支配するよう運命づけられているのだ、と通達し、夫婦の性的交わりは激しくあるべきだと推奨する。
■卑怯者、臆病者、意気地なし、性的不能者、同性愛者はかつてないほど軽蔑の対象になる。中等学校、寄宿舎、神学校、歌謡団体が集う地下酒場、娼家、衛兵詰所、フェンシング道場、喫煙室、数多くの作業場や酒場、さらには政治集会や狩猟協会など男たちだけが集う場所が増える。これらはすべて、男らしい男の特徴を教示し、それが開花するための舞台にほかならない。至るところで、男が前面に押し出される。集団であれば、喚き散らし、酒に強いことが男らしさの共有につながる。
(「第II巻序文」より)


『男らしさの歴史 III 〔男らしさの危機? 20-21世紀〕』
(男らしさの歴史(全3巻)) 単行本 – 2017/8/25
アラン・コルバン (監修), ジャン=ジャック・クルティーヌ (監修, 編集), & 鷲見 洋一(翻訳), 小倉 孝誠 (翻訳), 岑村 傑 (翻訳)

内容紹介
「男らしさ」はどのように変遷してきたのか? シリーズ完結!!
20-21世紀に入ると、「男らしさ」を永続させる強力な装置や場、そしてそれらを補完する虚構は依然存在するものの、科学技術の発展とその言説によって「男らしさ」は弱体化され、境界が曖昧になる。その不安が、いびつな「男らしさ」の発現へと駆り立ててゆく。

内容(「BOOK」データベースより)
好評を博した『身体の歴史』(全3巻)の第2弾!男らしさは死滅していない!男らしさの歴史は男性の歴史ではない。欧米の第一線の歴史家が、さまざまな角度から、この100年余の「男らしさ」を究明した問題作。



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