足立和彦『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』
(水声社、2017 年 10 月)
本書は、19 世紀の作家ギィ・ド・モーパッサン (1850-1893)
の青年時代の著作(詩・戯曲・小説)の分析を通して、一人
の作家が〈誕生〉するとはどういうことかを考察するもので
ある。従来、習作として十分に顧みられなかった作品を総合
的に検討することで、青年の成長過程を詳細に跡づけ、作家
研究および作品研究の両面に寄与することを目ざしている。
本書は 3 章(および序章・終章)からなる。第 1 章「ポエ
ジー・レアリスト」では、1870 年代の活動の中心に位置した
韻文詩を扱う。当時まだ影響の大きかったロマン主義を偽り
の詩情として批判し、物質主義的な世界観に基づく荒々しい
レアリスム(現実主義)を導入することで韻文詩の刷新を志
すという、青年の意図と野心を明らかにする。また、詩作の
過程でレアリスム美学が鍛えられ、そのことが後の散文作家
を準備したことを論じる。
第 2 章「演劇への挑戦」では、同じ 70 年代に書かれた戯曲を取り上げる。詩と同様にレ
アリスムの導入によって韻文歴史劇を刷新しようという著者の試みを検証し、その意義を
明らかにすると同時に、それが作家に何をもたらしたかを考察する。
第 3 章「小説の誘惑」においては、同時期に書かれた中短編小説と、最初の長編(後の
『女の一生』)を対象とする。小説において個人的なテーマが発掘されていること、また長
編小説の試みの中に作家の成長が認められることを明らかにする。その後、1880 年に発表
された「脂肪の塊」の分析を通して、この作品を執筆する中で、作者自身が散文の持つ可
能性(その社会性・批評性)を発見したことが、詩人から小説家への〈転向〉の決定的な
理由となったと論じている。
終章においては、1870 年代のすべての活動を通して、確固たる理念と技法を備えた一人
の芸術家が準備されたからこそ、「脂肪の塊」以後の成功が保証されたと結論づけている。
(著者自身による紹介)
http://www.sjllf.org/cahier/?action=common_download_main&upload_id=1376
(水声社、2017 年 10 月)
本書は、19 世紀の作家ギィ・ド・モーパッサン (1850-1893)
の青年時代の著作(詩・戯曲・小説)の分析を通して、一人
の作家が〈誕生〉するとはどういうことかを考察するもので
ある。従来、習作として十分に顧みられなかった作品を総合
的に検討することで、青年の成長過程を詳細に跡づけ、作家
研究および作品研究の両面に寄与することを目ざしている。
本書は 3 章(および序章・終章)からなる。第 1 章「ポエ
ジー・レアリスト」では、1870 年代の活動の中心に位置した
韻文詩を扱う。当時まだ影響の大きかったロマン主義を偽り
の詩情として批判し、物質主義的な世界観に基づく荒々しい
レアリスム(現実主義)を導入することで韻文詩の刷新を志
すという、青年の意図と野心を明らかにする。また、詩作の
過程でレアリスム美学が鍛えられ、そのことが後の散文作家
を準備したことを論じる。
第 2 章「演劇への挑戦」では、同じ 70 年代に書かれた戯曲を取り上げる。詩と同様にレ
アリスムの導入によって韻文歴史劇を刷新しようという著者の試みを検証し、その意義を
明らかにすると同時に、それが作家に何をもたらしたかを考察する。
第 3 章「小説の誘惑」においては、同時期に書かれた中短編小説と、最初の長編(後の
『女の一生』)を対象とする。小説において個人的なテーマが発掘されていること、また長
編小説の試みの中に作家の成長が認められることを明らかにする。その後、1880 年に発表
された「脂肪の塊」の分析を通して、この作品を執筆する中で、作者自身が散文の持つ可
能性(その社会性・批評性)を発見したことが、詩人から小説家への〈転向〉の決定的な
理由となったと論じている。
終章においては、1870 年代のすべての活動を通して、確固たる理念と技法を備えた一人
の芸術家が準備されたからこそ、「脂肪の塊」以後の成功が保証されたと結論づけている。
(著者自身による紹介)
http://www.sjllf.org/cahier/?action=common_download_main&upload_id=1376