西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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日本フランス語フランス文学会 2023 年度春季大会 5 月27 日(土)5 月28日(日)

2023年05月29日 | 覚え書き


特 別 講 演 5 月27 日(土) 17:00~18:30
第4 校舎独立館1 階D101(Zoom にてフランスより中継)

Sylvain Menant (Professeur émérite à Sorbonne Université/Président de la Société d’Histoire littéraire de la France)

« Les études françaises sous la menace épidémique : une esquisse de bilan » Sylvain Menant (Professeur émérite à Sorbonne Université/Président de la Société d’Histoire littéraire de la France) Née à la fin de 2019, la pandémie n’est pas terminée mais ses effets s’atténuent en France et les trois années qui viennent de s’écouler constituent une période relativement homogène dont on peut dégager les caractéristiques et les effets sur les études de la langue et de la littérature françaises. Les obstacles aux réunions et aux échanges ont ralenti la recherche. Mais les moyens de communication électronique ont acquis un développement considérable et ont été utilisés à grande échelle pour la documentation et l’édition. Ce phénomène a encouragé les travaux fondés sur l’exploration numérique des œuvres, déjà prospère, et l’étude d’ensembles textuels épars, accessibles par la numérisation. Parmi les autres champs favoris, les études féministes se sont considérablement développées. Des travaux remarquables et des entreprises prometteuses ont émergé sur chaque période, du XVIe au XXIe siècle. Sans établir un palmarès ni envisager une impossible exhaustivité, on présentera, époque par époque, les tendances qui se dégagent des principales publications et des chantiers en cours, parfois suscités par la découverte d’inédits.

ワ ー ク シ ョ ッ プ 第1部  5 月28 日(日) 10:00~12:00
ワークショップ1 協生館2階多目的教室1
散乱するジュネ—詩人・聖者・歴史家
コーディネーター・パネリスト:岑村傑(慶應義塾大学)
 パネリスト:朝吹亮二(詩人・慶應義塾大学)、澤田直(立教大学)
 
  2021 年春、ジャン・ジュネの詩と小説がプレイヤード叢書に入った。既刊のプレイヤード版戯曲集や、政治的テクスト中心の『公然たる敵』を承ける、待望 の一巻にちがいない。しかし、『花のノートルダム』を皮切りに文壇に衝撃を与えた小説家、『屏風』に極まる劇作をもって世界的名声を博した戯曲家、虐げられ 逐われる者たちに寄り添い「回想」の書『恋する虜』を遺した活動家、というくくりは、ジュネのごく一部を見ているにすぎない。それらの隙間に、あるいはそ れらに重なりながら、あるいはそれらの裏に張りつき底に潜んで、別のジュネがいる。本ワークショップは、まとまりを拒み、全体や完成を逃れるジュネの、そ の散乱する破片のいくつかを拾い、闊達自在に読み解こうとするものである。 朝吹は、ジュネの詩作品について考察する。主に形式(定型)とメタファーの問題を足がかりにジュネの詩的世界の特徴や後の作品との関連を考える。 澤田は、サルトルの『聖ジュネ』の再検討を通して、伝記的なものと文学の関係を探りたい。サルトルの分析は、事実を無視して、社会から排除された少年が、 泥棒、男色になることを選び、美を発見し、詩人、作家となるという物語を構築したとして評判が悪い。だが、評伝的アプローチとは、そもそも文学に何をもた らすのだろうか。いわゆる伝記との相違は何か。『聖ジュネ』という特異な作品の細部に着目して、文学研究の問題を考えてみたい。 岑村は、ジュネ晩年の未発表シナリオ、『壁の言葉』を紹介する。メトレ感化院100 年の盛衰を、フランス史上の人物たちも絡めながら描く、大作である。そ こには、『薔薇の奇蹟』とは別の仕方でメトレの歴史と向き合うジュネがいる。 登壇者間の対話や会場参加者からの反応に、多くの時間を割きたい。ジュネにあてられて、談論もまた千々に乱れていくことを望んでいる。

ワ ー ク シ ョ ッ プ 第2部 5 月28日(日) 13:00~15:00 ワークショップ3 協生館2階多目的教室1 アニー・エルノーの世界
コーディネーター:小倉孝誠(慶應義塾大学)
パネリスト:堀茂樹(慶應義塾大学)、荻野アンナ(作家・慶應義塾大学)、森千夏(慶應義塾大学)
 アニー・エルノー(1940 年生まれ)が、2022 年度のノーベル文学賞を受賞したことは、記憶に新しい。34 歳で処女作を出しているので、作家デビューとし ては遅いほうだが、La Place『場所』(1983)がルノドー賞に輝いたことで文名を高めた。その後は、発表される作品の多くがフランス内外で高い評価を受け、 現代フランスを代表する作家の一人としての地位を確立した。Les Années (2008)は彼女の最高傑作と評される。 受賞の理由として、「個人的な記憶のルーツや疎外感、集団的抑圧を明らかにする勇気と鋭さ」が挙げられた。個人的な記憶は、作家の両親や自身の生涯にま つわるもので、エルノーは実際それらを題材にした作品を数多く書いている。エルノーが自伝的作家と呼ばれる所以である。しかし同時にエルノーの作品では、 社会と文化における階級的な差異への意識が露呈する。エルノーがブルデューの理論を高く評価し、社会学者たちのほうもエルノー文学に注目し、そこにフラ ンス社会の縮図を認めているのは偶然ではない。エルノーの創造主体は、絶えず集団的な次元と社会的な現象に向かって開かれている。本ワークショップでは、 さまざまな視点からエルノーの文学世界に迫っていく。 堀茂樹は、アニー・エルノーの諸作品が倫理的規範の提示でも政治的態度のアピールでもないことを確認した上で、それにもかかわらず、あるいはそれだけ に、 “Je”を多用する彼女のエクリチュールがカミュ的反抗――“Je me révolte, donc nous sommes”――の実践として評価できることを、そしてその意味に おいてひとつの文学的「アンガージュマン」と見做せることを明確化してみたい。 荻野アンナは、ひとりの書き手として、アニー・エルノーの「私」に瞠目し、そこから個人の要素が能うる限り削り取られて、残された空隙がある種の普遍性 を保証する点に注目する。作者によってモノ化する寸前まで追い詰められた「私」が読者を魅了するからくりを確認したい。 森千夏は、これまでに出版された小説、自伝、日記を概観しつつ、作品の文学的特徴(ジャンル)と社会階層、ジェンダー、記憶といったいくつかの主要テー マを簡潔に取り上げる。また、国内外における作品の受容や研究動向についても触れたい。 本ワークショップが、エルノー文学の豊かな多面性について議論するきっかけになれば幸いである。

ワークショップ4 協生館2階多目的教室2 スイス・ロマンド文学へのまなざし コーディネーター・パネリスト:笠間直穂子(國學院大学) 
パネリスト:正田靖子(慶應義塾大学)、平林通洋(日仏翻訳・通訳者)、篠原学(大阪大学)
 
  スイス・ロマンド、すなわちスイスのフランス語圏の文学は、フランスと隣接しながら独自の発展を遂げているが、ごく一部の作家を除いては、日本はおろか フランスにおいても広く知られているとは言いがたい。しかし、フランス語圏文学の多様性、環境文学、越境文学、フェミニズム文学といった観点から、近年は 注目が高まりつつある。 昨年、最重要作家であるアリス・リヴァ、およびC・F・ラミュの作品が、前者はスイス・ロマンド文学を専門とする正田靖子、後者は笠間直穂子の翻訳によ り刊行された。これを機に、本ワークショップでは、正田、笠間に加え、ブレーズ・サンドラールの翻訳を準備中の平林通洋、ニコラ・ブーヴィエ研究を進める 篠原学の計4 名が、20 世紀スイス・ロマンド文学の展開を主要作家の肖像とともに振り返る。さらに、スイス・ロマンドという視点が、フランス語およびフラ ンス文学・文化を捉え直す契機となる可能性についても考えたい。
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