YouTube上に喜多先生の漢方レクチャーを見つけました。
喜多先生は漢方薬の背景をわかりやすく解説してくれる、
私の尊敬する専門家です。
まず、カゼについてのレクチャーを視聴しました。
風邪という漢字の由来から説き起こし、
五行説を引用し、
その背景を知ることができました。
また、西洋医学的解析も併用して、
西洋医学を学んで資格を得た日本の医師も納得しやすい内容です。
風邪のレクチャーを視聴して、
発汗(発表)と解肌の概念の違いがわかり、
知識の整理ができました。
以下に講義メモを残しておきます;
※ この項目では、普通感冒をカゼ、漢方用語のふうじゃを風邪と表記することにします。
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カゼは漢字で風邪と書く。
これ、漢方用語が由来であり、
漢方医学では“かぜ”ではなく“ふうじゃ”と読む。
風邪の“風”は気候を表す六気(りっき)の一つで、
その六気とは、
風・寒・暑・湿・燥・火
(ふう・かん・しょ・しつ・そう・か)
から成る。
風邪の“邪”は邪気の略で、病気を起こす邪悪な気。
反対語は“生気”で自然治癒力・免疫力を意味する。
外から来る邪気を“外邪”と呼ぶ。
つまり、「外から風に乗って運ばれてくる邪気=風邪(ふうじゃ)」ということ。
カゼの原因になるのは主に風邪と寒邪とされ、
カゼには2種類存在することになる。
風邪によって引き起こされる病気を中風(風に当たる)といい普通感冒を意味する。
寒邪によって引き起こされる病気を傷寒(寒邪により傷(やぶ)られる)といい、
現在では悪寒・発熱が強いインフルエンザに例えられる。
さらに中風と傷寒の特徴として、
寒気があるときに汗が出ているのが中風、
寒気があるときに汗が出ていないのが傷寒、
という違いがある。
寒気・悪寒は熱を産生するための体の運動だが、
汗が出てしまうと気化熱で熱が下がってしまうので、
汗が出てしまう中風では熱が十分上がらず、
闘病反応が弱いという見方もできる。
▶ 傷寒の治療:麻黄湯(27):発汗
・作用:体を温めて(温熱薬)発汗させ、結果的に熱を下げる。
→ 表(=肌、バリア)を傷(やぶ)って体内に侵入した寒邪を汗とともに外に追い払うイメージ。
・構成生薬
✓ 麻黄(エフェドリン):交感神経を刺激して代謝を亢進させ、熱を産生する(温熱薬)。
✓ 桂枝(シナモン):体を温める(温熱薬)。
▶ 中風の治療:桂枝湯(45):解肌(げき)
表(=肌)を守っている生気には衛気(※)と営血の2種類があり、風邪の侵入を阻んでいるが、衛気と営血がうまく働かない状態(営衛不和)になると侵入されてしまう。寒邪は強いので表が正常でもそれを傷って入ってくるが、風邪は強くないため営衛不和状態の時、つまり体調が悪いときに入ってくる。
営衛不和(えいえふわ)を解決するのが解肌であり、桂枝湯(45)は体を温めながら営衛不和を整える作用がある。
桂枝湯(45)
桂枝・生姜で温めて衛気を活性化し、
芍薬・大棗で営血を補い(栄養補給)、
甘草は上記2つの働きを調和させる
(営衛不和を調和させる)。
汗が出ている中風に汗を出す麻黄湯(27)を使うと汗が出すぎてしまうので、少し作用の弱い桂枝湯(45)を使う。
※ 衛気を補う生薬が黄耆。
▶ 麻黄湯と桂枝湯の中間が葛根湯(1)
葛根湯の構成は桂枝湯+麻黄・葛根であり、
麻黄湯と桂枝湯の両方の生薬が入っている(いいとこ取り!)。
傷寒でも中風でも対応できる。
▶ 麻黄湯と桂枝湯の中間が桂麻各半湯(037)
葛根湯と桂麻各半湯の使い分けのポイント;
寒気から始まる・頭痛・肩こり → 葛根湯
咽痛から始まる(寒気は強くない) → 桂麻各半湯
▶ カゼの経過の漢方的捉え方(六病位)
陽証:強い邪気と戦っている状態、
どこで戦っているかで3つに分けられる
表証:体表面(筋肉痛・関節痛・肩こり・頭痛)
→ 発汗・解肌(汗と一緒に邪気を追い払う)
半表半裏:表裏の中間 (気管・肺・咳と痰・咽頭扁桃炎)
→ 和解
裏証:消化管まで侵入(腹部膨満、便秘、高熱)
→ 瀉下(便と一緒に邪気を追い払う)
陰証:生気が弱まり反応できない、邪気と戦えない(負け戦)
寒気はあるが熱が出ない(せいぜい微熱)、倦怠感、横になりたい
→ 温補:麻黄附子細辛湯(127)
▶ 胃腸が弱い(麻黄が使えない)人のカゼ薬
香蘇散(70):カゼの初期
参蘇飲(66):急性期以降・慢性期
▶ 風邪を引きにくくなる漢方薬:参耆剤(人参+黄耆)
生薬の人参と黄耆はともに“補気薬”。
例)
補中益気湯(41):気虚
十全大補湯(48):気血両虚
人参養栄湯(108):気血両虚:乾燥タイプに適応(気道が乾燥するとカゼを引きやすい)
▶ 「カゼを引きやすい」「治りにくい」=未病
「カゼを引きにくい」「治りやすい」=健康(自然治癒力が働いている)
“健康”な状態に気血水の異常があると“未病”状態になる。
気血水の異常を改善すると未病 → 健康が手に入る。
その方法は、養生と漢方薬。
▶ 養生(健康的な生活)とは?
ふつうの生活・・・痛みを避けて快楽を求める → 短期的幸福 → 長期的苦痛(自業自得)
養生の目的は長期的幸福。
本能・欲求に身を任せるのではなく、理性でコントロールしなければ健康は手に入らない。
▶ 自業自得=自因自果
自業自得:“業”とは“行い”で3種類ある。
身:行動
口:話す
意:思考
自因自果:原因 → 結果(には3種類ある)
短期結果:痛みを避け、快楽を求める
中期結果:病気・健康、不幸・幸福に結びつく
長期結果:病気・健康、不幸・幸福に結びつく
→ 中期・長期結果はわかりにくいので、結果が悪い場合、人は「他因自果」(自分が悪いのではなく自分以外に悪い原因を求める)に陥りがちだが、それは言い訳に過ぎない。
→ 因は自分に帰する(自分が種をまいている)、縁は他人に帰する。
▶ 健康という花を咲かせるために良い種(養生)をまこう。
種をまく(因) → 花が咲く(果)
良い花を咲かせるためには良い種をまく必要がある。
因には、太陽の光・水・空気・土・(縁 ※)などがある。
“健康”という花を咲かせるためには、良い行い(業)を心がけ、中・長期的に待たなければならない。
良い行いをしたからといって、すぐ健康になるわけではない。
※ 縁は周囲の人;
・良い縁:自分の健康に協力してくれる人。
▶ 健康の定義(WHO)
身体的+精神的+社会的な well-being(幸せ)
・悪い縁:悪い欲望へ誘導・誘惑する人。