寂聴文学塾第六回は与謝野晶子です。
明治の文壇に嵐を巻き起こした晶子。
寂聴さん曰く「究極のナルシスト」だそうです。
性の解放を官能的な短歌で表現しました。
「みだれ髪」に収められたこの歌は有名ですね;
やわ肌の 熱き血潮に触れもみで 寂しからずや 道を説く君
これは与謝野鉄幹に向けた歌だと思われていましたが、寂聴さんの話では違うようです。
彼女は東京に出てくる前に、堺でも同人誌に参加していました。
そこに参加していた僧侶に対しての誘惑だったとか。
今年の夏休みに群馬県水上町猿ヶ京の「三国路与謝野晶子紀行文学館」に行きました。
そこにこの歌が展示されていました。
長女に「この女性は明治時代にこんな歌を詠んで世間を騒がせたんだよ」
と紹介すると、彼女は目を丸くして驚いていました。
彼女は歌人であり、小説家ではありません。
ただ、源氏物語を現代語訳しましたので、それも実績の一つ。
それから生涯夫である与謝野鉄幹(いい男だったらしい)を愛し、子どもを12人産みました。
うち一組の双子がいて、名付け親は森鷗外(1862-1922)だそうです。
晶子が世間を騒がせたのは「みだれ髪」の短歌だけではありません。
戦争に招集された弟に向けてと云う形を取りつつ戦争反対を投げかけた「君死にたまふことなかれ」も大変だったと思われます。
なにせ「天王は戦地に行かないくせに・・・」なんて言葉があるのです。
君死にたまふことなかれ
旅順口包圍軍の中に在る弟を歎きて
與 謝 野 晶 子
あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。
堺(さかひ)の街のあきびとの
舊家(きうか)をほこるあるじにて
親の名を繼ぐ君なれば、
君死にたまふことなかれ、
旅順の城はほろぶとも、
ほろびずとても、何事ぞ、
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり。
君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戰ひに
おほみづからは出でまさね、
かたみに人の血を流し、
獸(けもの)の道に死ねよとは、
死ぬるを人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されむ。
あゝをとうとよ、戰ひに
君死にたまふことなかれ、
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは、
なげきの中に、いたましく
わが子を召され、家を守(も)り、
安(やす)しと聞ける大御代も
母のしら髮はまさりぬる。
暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻(にひづま)を、
君わするるや、思へるや、
十月(とつき)も添はでわかれたる
少女ごころを思ひみよ、
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき、
君死にたまふことなかれ。
明治の文壇に嵐を巻き起こした晶子。
寂聴さん曰く「究極のナルシスト」だそうです。
性の解放を官能的な短歌で表現しました。
「みだれ髪」に収められたこの歌は有名ですね;
やわ肌の 熱き血潮に触れもみで 寂しからずや 道を説く君
これは与謝野鉄幹に向けた歌だと思われていましたが、寂聴さんの話では違うようです。
彼女は東京に出てくる前に、堺でも同人誌に参加していました。
そこに参加していた僧侶に対しての誘惑だったとか。
今年の夏休みに群馬県水上町猿ヶ京の「三国路与謝野晶子紀行文学館」に行きました。
そこにこの歌が展示されていました。
長女に「この女性は明治時代にこんな歌を詠んで世間を騒がせたんだよ」
と紹介すると、彼女は目を丸くして驚いていました。
彼女は歌人であり、小説家ではありません。
ただ、源氏物語を現代語訳しましたので、それも実績の一つ。
それから生涯夫である与謝野鉄幹(いい男だったらしい)を愛し、子どもを12人産みました。
うち一組の双子がいて、名付け親は森鷗外(1862-1922)だそうです。
晶子が世間を騒がせたのは「みだれ髪」の短歌だけではありません。
戦争に招集された弟に向けてと云う形を取りつつ戦争反対を投げかけた「君死にたまふことなかれ」も大変だったと思われます。
なにせ「天王は戦地に行かないくせに・・・」なんて言葉があるのです。
君死にたまふことなかれ
旅順口包圍軍の中に在る弟を歎きて
與 謝 野 晶 子
あゝをとうとよ、君を泣く、
君死にたまふことなかれ、
末に生れし君なれば
親のなさけはまさりしも、
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとをしへしや、
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや。
堺(さかひ)の街のあきびとの
舊家(きうか)をほこるあるじにて
親の名を繼ぐ君なれば、
君死にたまふことなかれ、
旅順の城はほろぶとも、
ほろびずとても、何事ぞ、
君は知らじな、あきびとの
家のおきてに無かりけり。
君死にたまふことなかれ、
すめらみことは、戰ひに
おほみづからは出でまさね、
かたみに人の血を流し、
獸(けもの)の道に死ねよとは、
死ぬるを人のほまれとは、
大みこゝろの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されむ。
あゝをとうとよ、戰ひに
君死にたまふことなかれ、
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまへる母ぎみは、
なげきの中に、いたましく
わが子を召され、家を守(も)り、
安(やす)しと聞ける大御代も
母のしら髮はまさりぬる。
暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻(にひづま)を、
君わするるや、思へるや、
十月(とつき)も添はでわかれたる
少女ごころを思ひみよ、
この世ひとりの君ならで
あゝまた誰をたのむべき、
君死にたまふことなかれ。