さなえのうた

歌いながらあちこちに出没します♪

スザンナの歌い出し②~Ora先生

2020-08-15 | オペラ研究
スザンナの最初のフレーズの母音を考えたら、
次は、子音についても考えてみます。


スザンナの最初のフレーズ『Ora sì ch'io son contenta』は、
ラ・シ・ド・レ・ミの5度で構成されています。
この中にはパッサッジョ(→転換点または声区転換と私は訳しています)が含まれます。
これについては過去ログをご参照ください。

スザンナの最初のセリフ『Ora sì ch'io son contenta』には、
『r』『s』『chまたはc=k』『n』『t』の子音が含まれています。
このうちの『n』は『口を開いたハミング』であり、
ウォームアップとして、または母音として真っ先に取り上げました。
("スザンナの歌い出し①"中、"練習あるいはウォーミングアップ")



~5つの子音①『r』~

最初に登場する子音『r』は、日本語のそれと近いので、
あまり考えなくても大丈夫だと思います。
語頭ではないので巻き舌にせず、
ドラゴンボールの孫悟空が自分のことを『おら』と呼ぶように、
明るく『おーら』と発音すれば大丈夫です。

間違ってもヤンキーがガンを飛ばしながら言う『オーラ』にならないように…。



舌の位置や舌の使い方が『r』に一番近い子音は『d』ですが、
『おーだ』と発音すると『だ』の『あ』の母音が、『おーら』と発音した時よりも
狭くなりがちです。
『おーだ』の『だ』の『あ』の母音を『おーら』の『ら』の『あ』の母音と同じ質にしましょう。

逆に言えば、『おーら』は『おーだ』の先生です。
深く考えずに『r』を発音します。



~リボ払い唱法~

『おー』を伸ばしている間に、固まってしまう時があります。
そうすると、『おーら』と自然に発音できなくなります。

8分音符でレドと『おら』を演奏してみましょう。
『ら』の『r』を構えている時間がないので、
自然に発音できるはずです。

レドレドレド『おらおらおら』と遊んでみてもいいです。
あっという間に『r』が過ぎ去ってしまうので、
自然に発音できるはずです。


『おら』と同じクオリティに、『おーら』の『ら』も揃えます。
コツは、『おおおら』のつもりで演奏すること。

『おーー』と思っていると、『ー』の間に何もすることがなく、
息が止まってしまう場合があります。
息を流し続けることが重要です。
『r』のギリギリ直前までは『お』なのです。


8分音符に分割して全てをタイで繋いでいる気持ちで、
『おおおら』と演奏します。
それでもうまくいかなかったら、16分音符に分割して、
『おおおおおおらぁ』と演奏します。
すべての『お』はタイで繋げば、付点4分音符のように聞こえます。

それでもうまく行かなかったら、32分音符、64分音符…。
マシンガンのように、『お』を打ち続けてください。



月々定額を支払うリボ払いのように、
同じ大きさの音符を重ねていくので、
私はリボ払い唱法と呼んでいます。



~3拍目から始まるフレーズ~

さて。
このフレーズが3拍目から始まっていることを思い出しましょう。
歌い出すためのブレスをしたら…

ほら。何も考えなくても、ふうっと『Ora』が歌い出せました。
アクセントもついていないし、
イタリア語がわからない人にも、"何か"が伝わるでしょう。

あとはこのOra先生の導きにより、歌い続けていくだけです。

これで、満足と(^^♪
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スザンナの歌い出し①~最初のフレーズの母音練習

2020-08-14 | オペラ研究
さて。アポジャトゥーラの多用を踏まえた上で、練習します。

~パッサッジョ(声区転換)~

スザンナの最初のフレーズ『Ora sì ch'io son contenta』は、
ラ・シ・ド・レ・ミの5度で構成されています。
この中にはパッサッジョ(転換点または声区転換)が含まれます。

頭声で出しやすい音域と、
地声や胸声で出しやすい音域。
この転換点を、またはこの転換点を超える声区転換を、
イタリア語でパッサッジョ、英語でチェンジと呼びます。
先ず、この転換点をスムーズに超えられるように練習…。

地声や胸声ではなく、女声として、頭声メインで歌うためには、
一番高い音であるミからアプローチするとやり易いです。
なぜなら、転換点よりも高く、頭声音域にある音だからです。
ミレドシラと、高い音から2度ずつ下降して、
同じ音質になるようにします。

地声や胸声で一番低い音から始めて、
ラシドレミと強引に上行してはいけません。
喉を壊します。

ミクストボイスを多用するポップスは…その話はまたいつか。


~頭声で転換点を超える~

ミやレの辺りは、パッサッジョ(転換点)のすぐ上くらいなので、
ふわっと頭声で出しやすい音域です。
力ずくで張って出さずに、ふわっと(^^♪
パッサッジョ(転換点)の下は地声や胸声で出しやすい音域です。
クラシックでは地声や胸声をメインにせずに、
全ての音を頭声メインで仕上げましょう(^^♪

ミレドシラ…
途中で落っことさないように注意!
途中で音色が変わっていないかな?

出来るようになったら、ミレドシラシドレミと、
最高音から始めて最低音に下降し、続けて最高音に上昇してみます。

同じ音色に戻ってこれているかな?
同じ音質、同じ品質?

…録音などを聞いて、チェック。


~練習あるいはウォーミングアップ~

出来るようになったら、ミレドシラシドレミレドシラシドレミと
行ったり来たり、上がったり下がったりを、繋げて繰り返してみます。
早めの速度で、途切れずに続けて何度も。
スムーズに行くかな?

パッサッジョをスムーズに。

本番前、楽屋やトイレや発声室では、
もっとしっかりウォーミングアップできますが、
出番直前、スタンバイの袖でも、
ハミングでウォーミングアップできます。

ふんふんふんふんふん。
ミレドシラ。

遠征先のホテルの部屋でも、
これくらいの歌は許されるでしょう。
1番の前奏が鳴り始めた後でも、演技をしながら、
ばれないようにウォーミングアップできるかもしれません。


~母音~

フンフンフンと、鼻歌のようなハミングで練習したら、
母音でも練習します。

得意な母音からでいいと思いますし、
気分でいいとも思います。
なんとなくアから始めるのもいいと思います。

はっはっはっと、Hの子音を混ぜた方が音は取りやすいです。
が、最終的にはHを入れないのが理想です。
一筆書きのようにラシドレミが描けるようにします。
あ~~~~という感じです。
文字だと切れ目がありますが、切れ目のタイミングで音が変わっているだけで、
歌はレガート、つながっています。
レガートには『鎖のように繋がって』という意味があります。(さなえ訳)


~考えない!!!~

口の形が横に開き過ぎないように、
喉を開けて。
力ずくでやらずに、リラックスして…。

考えてしまうと固まっちゃいます。
なので、考えない!

歩くのと一緒です。
考えない!



~最初が良ければ全て良し~

スザンナの最初のフレーズ『Ora sì ch'io son contenta』には、
パッサッジョ(転換点)が含まれています。

u以外の全ての母音が含まれています。
nのハミングも含まれています。

スザンナの最初のフレーズがスムーズに歌えることを確認します。

パッサッジョ(声区転換)がスムーズなら、
スザンナの最初のフレーズがスムーズに歌えるなら、
フィガロ全曲ばかりではなく、全ての曲は無理なく歌えます。

Ora sì ch'io son contenta!!



※パッサッジョあるいはチェンジを
頭声音域から胸声音域またはその逆へと転換する場合には声区転換と訳し、
その声区転換が起こる点を転換点と訳しました。
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カルメン~エロスvsアガペ

2020-08-13 | オペラ研究
カルメンについて書いた記事にアクセスがあったので、
少し書きたいと思います。

以前、ミカエラを歌った時の記事
ギロー版とアルコア版について書いた記事、
大天使ミカエルについて書いた記事などがあります。

オペラ『カルメン』では、ミカエラを数回、歌わせていただきました。
日本語訳およびフランス語の原語で、です。
フラスキータも何度か歌っています。
学校公演では、数百回の出演になると思います。
コーラスの一員としてが多いですが、時にはミカエラやフラスキータとして、
日本全国で公演をしました。

2006_10010096
 

ミカエラを歌った時に楽屋で撮った写真です。



 

オペラ『カルメン』を理解するためには、
エロスとアガペという2種類の愛のカタチを知っておくことが大事です。


~二人の女性…エロスとアガペ~

カルメンは、エロスの愛を象徴しています。
肉体的な意味でもあり、自分の欲求です。

彼女は、一目で男たちを虜にします。
男好きなのではなく、男たちがその魅力にハマるのです。
壇蜜さんとか深キョンとか・・・そんな感じでしょうか。

ミカエラは、アガペの愛を象徴しています。
精神的な意味でもあり、与える愛です。

八千草薫さんとか、樹木希林さんとか、
『日本のお母さん』と称されるようなイメージでしょうか。
将来、いいお母さんになるんだろうなと思わせる女性です。

 
~ホセの転落~


アガペの愛が用意されていたホセですが、
エロスの愛と出会い、道を踏み外します。


ホセはアリアの中で、『Je t'adore.』と言います。
跪いて『崇拝したい』と言っているのです。
下から上を見上げる目線です。

それを聞いてカルメンは、
『Tu ne m'aime pas.あんたは私を愛しちゃいない』と言い放ちます。
愛するって、そういうことではないでしょう?…
愛しているなら手に手を取って、野山を駆けまわろう…と誘います。
目線は同じ位置にあります。
どちらが上でも下でもなく、同じ目線で、
欲求に従って生きる…これがエロスです。

3幕、ミカエラがホセを探しに来ます。
ミカエラはホセのことを『かつて愛していた人』と呼称するので、
もう愛していないことがわかります。

ミカエラは聖母マリアの象徴である青いスカートを履き、
エロスを感じさせないお下げ髪をしています。
ソドムの街を破壊した大天使ミカエルと同じ名前でもあります。

母の伝言を伝えに来たミカエラは、
母の愛を与えに来たのです。
自らの愛によってではなく、母の愛によってやって来たミカエラ…。
上から下に与える目線はアガペの目線です。
『Je t'adore.』と言っているホセは、与えられる目線を欲していたはずでした。

4幕、カルメンを殺した後も、ホセは『Je t'adore.』と跪きます。
エロスによりアガペを見失った男の物語が、ここで幕を閉じます。



エロスとアガペ…これだけを抑えて置けば、
どんなキャラクターを作るのか、どんな歌を歌うのか、
簡単に答えが見つかると思います。

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フィガロの結婚

2020-08-11 | オペラ研究
フィガロの結婚について書いた記事の一覧です。
記事は、スザンナ歌いとしての視点から偏って書いています。

8月11日までに書けた記事は・・・

フィガロの結婚を解くカギ

① フランス革命
② 初夜権

スザンナについて

① スザンナ人物像
② 明るい性格
③ 伯爵夫人の第一侍女
④ contentoという単語について

Nr.1 フィガロとスザンナの2重唱 “5.....10.....20.....”

① 場所
② 状況
③ 調性
④ 前奏での演技
⑤ フィガロの歌い出し Cinque...dieci..
⑥ スザンナが歌い出すためのブレス
⑦ スザンナの歌い出し Ora sì ch'io son contenta

また時期をみて一覧表を更新しますので、その際にはこのページを削除します!
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アポジャトゥーラ(倚音)

2020-08-10 | オペラ研究
~~~ アポジャトゥーラ ~~~

フィガロの歌い出しと違って、
スザンナの歌い出しのメロディーには、アポジャトゥーラ(倚音)が多用されています。
レーードシーラシドーシドレー♪ でいいのに、
レーードドシラシレドシドミレレ♪ と、いちいち2度上を引っかけます。

これが優美さを増していると感じます。

彼女が子供ではなく、大人の女性であること、
ただの女性ではなく、特別な女性であること、
ただの侍女ではなく、伯爵夫人の第一侍女であること。

いろいろなことを感じさせるような気がします。

なので、このアポジャトゥーラ(倚音)には決して、
アクセントをつけてはいけないと感じます。
あくまでレガートに、歌いたいと思います。

アクセントをつけて歌ってしまうと、飛び跳ね過ぎてしまうような気がするのです。
楽譜上も、アクセントはついていません。
もちろん、わざわざ実音でアポジャトゥーラ(倚音)がついているので、
キラキラと輝かさせなければなりません。

喜びが溢れているけれど、ジャンプしていないイメージ。。。
ハッピーというより、満足。。。
スザンナの満足感。。。



~~~ 音域 ~~~

しかも、最初のフレーズと2番目のフレーズは、
ラ・シ・ド・レ・ミの5度の中で、2度進行を主として構成されています。
これって、結構重要。

ウォーミングアップとして、最高なのです。

なぜなら。
イタリア語でパッサッジョと呼ばれ、英語ではチェンジと呼ばれる声域転換の場所が、
たいがいの女声ではこのラからミまでの5度以内に含まれています。
このチェンジ(声域転換)が、
レーードシーラシドーシドレー♪ でいいのに、
レーードドシラシレドシドレー♪ と、いちいち2度上を引っかけていることにより、
やり易いのです。



~~~ ウォーミングアップ ~~~


さあ、この最初の二つのフレーズを
ウォーミングアップのつもりで、
ガルシアエクササイズのつもりで、歌いましょう!

このアポジャトゥーラを優美に歌いましょう!
メッツァヴォーチェで歌い出しましょう♪


このオペラは4時間程度かかります。
すべてのアンサンブルに、スザンナは登場します。

モーツァルト先生のお導きによって、
素敵なスタートを切りましょう♪



・・・・・・やっぱり愛人だったのかなぁ???
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