小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

本田宗一郎

2010-12-02 22:09:09 | Weblog
本田宗一郎は丁稚で何年もかけて自動車の修理を学び、自動車修理工として一人前になり、浜松に50人もの工員をかかえる修理工場を作り、その社長となった。経営も上手くいっていたが、あっさりそれを止めてしまってピストンリングを作る製造工場に変えてしまった。勿論、社員は大反対したが、本田は一度、決心したら、どんな困難があろうと、やってしまう性格である。氏は、その時の心境を後で書いている。

「修理は所詮、修理に過ぎない。経験さえつめば誰にでも出来る仕事だ。だから、これに一生を費やすのは実にばかげている。人間として生まれて生きている限り、どうせやるなら自分の手で何かをこしらえよう。工夫し考案し、そして社会に役立つものを作るべきであろう。他人さまの製作したものを修繕するなどという、いわば人の尻馬に乗った商売なんか犬に食われてしまえ。そうだ。自分のこの手で何か作ってやろう。一歩前進してみようじゃないか」
(本田宗一郎「スピードに生きる」)

こういう発言は自動車修理工を怒らせるようにも見える。しかし実際は怒らないだろう。なぜなら、本田は、この後、ピストンリングの開発に、金銭的にも技術的にも、大変に悩まされ、塗炭の苦しみを味わうことになるのだが、自動車修理工にとっては危険な冒険より、収入の安定した生活の方が幸福なのだから。

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