かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の140

2019-02-12 19:28:52 | 短歌の鑑賞
  ブログ用渡辺松男研究2の18(2018年12月実施)
     Ⅲ〈錬金術師〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P93~
     参加者:泉真帆、M・I、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


140 いかがわしき錬金術師の見し夢に父をおもえり父の人生

      (レポート)
 父という人の人生を考えてみるに、135番歌(ごんごんと資本回転する怖さ ブレーキのなき父のくちびる)、138番歌(生を鈍き音たてながら行く父よごんずいごんずいごんずいの花)のような捉え方ができる。140番歌ではある人、それもいかがわしき錬金術師の夢の中に父の人生を思ってはめ込んで思ってみる。ちなみにこの錬金術とは「鉄、鉛、銅などの卑金属から金・銀などの貴金属を製造しようとする秘術」さらに「不老長寿の薬や万能薬を作ろうとする術にもわたり、近代科学成立以前の原始的な化学技術全般をもさす。古代エジプトの冶金術に起源をもつといわれ、ヨーロッパ、アラビアに伝わった。」(引用は二箇所とも小学館「国語大辞典」)
 これらから思うに父の人生をやや前近代的にとらえているのかもしれない。しかし、息子として、それをあからさまに言わず、誰かの夢の中にはめ込んでみるという面白い構成。(慧子)


      (当日意見)
★「いかがわしき錬金術師の見し夢に父をおもえり」というのは、あまりお父さんをいい方に評価
 していないのかなと思いました。(岡東)
★偽物を作るようなインチキな人をいかがわしきと言っている。そういう人が見た夢、思い描いた
 ことをお父さんも同じようにしているんじゃないかと。軽蔑というのか、一歩引いて批判的に見
 ている。(T・S)
★「いかがわしき錬金術師の見し夢に」のところ、どういうことなのかなと。錬金術師が見た夢の
 中なんですよね?作者が「いかがわしき錬金術師」の夢を見たのではなく。錬金術師がお父さん
 の夢を見るってことは無いですよね。(A・K)
★錬金術師が見た夢と同じような夢をお父さんが見ているってことじゃないですか。(T・S)
★そうですね。昔、錬金術師というのがいた。そして錬金術が成功して一攫千金を得るとかの夢を
 見ていた。同じように、父も事業を拡大させて成功者になることを夢見ていたように思える。そ
 ういう父の人生だったと。実際は、いろいろ失敗して事業もそう順調では無かったのかもそれま
 せんね。だからお父さんが錬金術師のようにいかがわしいことをしているという意味では無いと
 思います。(鹿取)
★わかりました、わかりました。夢の取り方を私、間違えていました。(A・K)


コメント
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