かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 115

2022-08-13 10:27:07 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の15(2018年9月実施)
    【〈ぼく〉】『泡宇宙の蛙』(1999年)P75~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、T・S、曽我亮子、
         渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部慧子   司会と記録:鹿取未放


115 ほ・と・け 冬にはとても気になるの野へ宇宙から来たのねあなた

         (レポート)
 「ほ・と・け」と初句に音で表記され、結句に「来たのねあなた」と呼ばれる何か。宗教的思想による想像上のもの、あるいは気配そのものとしてとらえられているのであろうか。そしてそれは宇宙から野に来ていて、冬にはとても気になる何からしい。冬の野の枯れてしまっていても透明なひかりにみちたまぶしさを思うと、冬をもたらす宇宙の動きのように思う。仏の意味を超えた「ほ・と・け」と呼びたいようなものなのだろう。(慧子)


       (当日意見)
★結句で「あなた」と呼びかけているのは抽象的なものではなく、初句の「ほ・と・
 け」で しょう。第一歌集『寒気氾濫』に「シベリアより寒気氾濫しつつきて石の羅漢の
 目を閉 じさせぬ」があって題になった歌です。これはそのイメージで読みました。シベ
 リアが宇宙 に、羅漢が「ほ・と・け」に格上げされていますが、わりと具象的なイメー
 ジで捉えました ね。野にぽつんと据えられている石の仏なんだろうと。それを遙かな宇
 宙からやってきたと捉えている。(鹿取)
★にんべんにムと書いた「仏」と「ほ・と・け」では違うので、そのあたりに何かあるん
 だ ろうな と思います。それと冬の気配ですね。(岡東)
★日溜まりに魂があるっていうような歌をよくうたわれますね、松男さんは。輝いた日の
 冬の日溜まりに存在感がある。そういうところに石の仏がある。鹿取さんと同じ意見だ
 と思ったのですが違いますか。(真帆)
★私には日溜まりのイメージはなくて、もっと寒々とした引き締まった冬の空気の中に仏
 がいる。私は齋藤史の修那羅峠のように石の仏が寒々と並んでいるところを連想しまし
 たが、ここは「ほ・と・け」は一体だけなのでしょうね。それを普通は昔の人が何かを祈
 願するために建てたのだ ろうと捉えるけど、ここではもう少し抽象的に宇宙からやって
 きたと捉えている。(鹿取)
★上句は限定されていますね。冬だから枯れた世界って事かしら?寒々とした風景の中にあ
 る石仏を中黒を入れた「ほ・と・け」といい、それに向かって「あなた」って呼びかけ
 ている。それが言葉だけではなく心としてこちらに伝わってくる。いいなあと思う。
   (A・K)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... | トップ | 渡辺松男『泡宇宙の蛙一首鑑... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事