かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 212

2024-03-03 23:30:26 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究26(15年4月)
   【光る骨格】『寒気氾濫』(1997年)89頁~
    参加者:かまくらうてな、M・K、M・S、鈴木良明、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放

 
212 地が霜にひきしまるとき沈黙を地下から幹へ押し上げてくる

     (レポート)
 大地が霜で冷えひきしまってくると、その沈黙を地下から冬木の根本、幹へと押し上げてきて、やがて全体に及び、217の歌(沈黙を守らんとする冬の木のなかにひともと紅梅ひらく)のように「沈黙を守らんとする冬の木」になる。(鈴木)


    (紙上意見)
 大地は霜で覆われ、寒々とした地面の下で、時を得たとばかり、沈黙は始動し、幹に沈黙することの現出を促す。促された木は厳寒に耐えている圧倒的な存在感で屹立している。(S・I)


    (当日意見)
★下句ですが、これは地が霜にひきしまる力と沈黙を地下から幹へ押し上げてくる力と
 拮抗するものを詠っているのかな。(慧子)
★大地が霜で引き締まると、沈黙をもって対抗している地下の根っこがより強じんな対
 抗を試みて、その沈黙の力を幹の方まで押し上げて行き渡らせる、ということでしょ
 うか。(鹿取)
★作者の内面の精神の在り方を詠っている。外から働きかけられたものに対して緊張感
 を感じて、ものを言わない沈黙を保ってるという状態かなと思う。実際の幹というの
 は客観写生からいうとこのようには見えないわけで、こういった主観のイメージの世
 界というのは結局作者の精神状態だと思うしかない。(うてな)
 

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