かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 168

2021-02-21 18:07:05 | 短歌の鑑賞
  ブログ版 渡辺松男研究 21 2014年10月 
     【音符】『寒気氾濫』(1997年)70頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、鈴木良明、曽我亮子、N・F、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放


168 白き気配廊下よこぎりゆく見えてするすると喪はあけてゆくなり

          (レポート)
 この歌では、「白き気配」と詠んでいるが、前の歌で詠まれた「魂」の「古来多く肉体を離れても存在するとした」死後の魂の行方を詠んでいるのだろう。身内の葬儀のあと喪が明けるまでは「魂」はそこに留まっていたが、その時が来て解放されて外に出ていった。日本の風習のなかで暮らしていると、死後の魂の存在を認める認めないに関わらず、このような感じは良く分かる。(鈴木)


        (意見)(2014年10月)
★気配というのは魂が昇天する気配だと思うのですが、するするって普通は言えない。でも全然違
 和感がなくて。変わった表現をされますね。(曽我)
★渡辺さんって自分と周りの境がない人だと思います。廊下というのは時間の経過を表していると
 思います。時間は有限ですから、喪に服す思いもやがて消えていくんですね。それのひとつの合
 図が白き気配じゃないですか。時間はピリオド。喪に服する気持ちが終わってしまったのが、「白
き気配」なのかな。(石井)
★私はこの気配には尻尾のようなものがあって、だからするするかなあって。それが廊下を去って
 いくことで喪が終わる。人間の気持ちから見ているのではなくて、時間の方に主導権があって去
 っていくような。廊下はリアルな方が面白い気がする。(鹿取)
★これ、相対性理論でしょう。時間と空間が関数になっているんでしょう。(石井)
★私の住んでいる所は古い土地だから、親しい人が亡くなると必ず兆候がある。白い鳩とかの形で。
 渡辺さんが住んでいらっしゃる群馬にはもっとそういう話があると思う。だから白くもあーと廊
 下を抜けるものがあると、ああ死者が去って喪が明けたのかと、そういう言い伝えも背景にあっ
 て詠まれたのではないか。(N・F)
★私もそういう白い鳩のたぐいの話は昔から聞いています。でも、本当かどうか確かめようがない 
 ですよね。(鈴木)
★昔のシャーマニズムがどこか奥底にあるのかなと。(N・F)
★でも、そういうこといっさい私は信じられない人だから、渡辺さんの表現のすばらしさとして味
 わいたいと思います。(曽我)

※田村広志さんから後日、「2、3句の句跨りが面白い」という評をいただいた。

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