女優・山岡久乃さんのこと(2)

2008-08-29 16:38:39 | こんなンで委員会
(昨日からの続きになります)

教えられた番号の、大きなジュラルミンの重いドアを開けた瞬間、TV局スタジオ独特の未知の空気が、一瞬にして私の肺胞に流れ込んで来たと思った。

セットがメインなのだから、乾いた新建材と様々な機材が発する、乾き切った微細な埃の匂いなのだろうか。ホームドラマの日常を切り取っているのに、非日常の演技や演出があるからなのか。

セットを皓々と照らすライトと、無言無音が了解事項で動いているスタッフとが、熱に乾燥した空気をさらにその場を異次元空間にしていた。


*  *  *  *  *


。。。平凡な役どころが難しいものなのです?

山岡)そう意外とね。平凡な母親役っていうのは特徴がないから。子どもが何人かいて、朝は何時に起きて、忙しなく学校に送り出して、赤ちゃんにミルクをやって、お昼は昨夜の残り物で食べて、ふと気がつくと夕方で、なんて繰り返しの中で年月が経ったお母さんというのは、なんでもないから逆にやりにくいわねぇ。

特異な「一人で詩を書いている女」という役があるとすれば、その女性に付帯する過去が分らない。たとえば「生活」のようなものが一杯くっ付いていないから、やりいいというようなね。

。。。それは山岡さんが極めて個性的だから

山岡)そうね。でも人間の実生活でも同じだけれど、平凡に生きることほど難しいことはないと思うの。その平凡な単調さを、どうやって生きがいにしていけるかという心構えが、難しいわけでしょう。・・だから人間は、違った人生を生きたくなるんです。

過不足なく生活を送っている奥さんが、突然蒸発するケースがあるけれども、人間はいろんな意味で、闘いやら刺激が欲しいんです。

。。。女性が外で働くことをどう思われますか?

山岡)ある意味では良いと思います。働けば必ず収入を得ますからね。お金に対する考え方、社会の仕組みも知ることができますし、綺麗な物も汚い物も見えるでしょう。それは、たいへん良いことです。

結婚して家の中に閉じこもったら、それ(能力)を活かせなくなることもありますね。まれに奥さんの方が旦那さんより収入が多くて、(旦那さんが)オモシロくなくなるというのは困りますけど(笑)

だいたいご主人というのは、奥さんを家に置いておきたいもんだわね、今どきの若い人でも。彼女の持っている能力はオレが持っていない能力だから、外に出てうんと活用した方がいい!なーんて理解は、なかなか難しいんじゃないかしら?共働きで収入が増えて、その分レジャーを楽しめるという共通点はあっても・・。

奥さんが、たまさかご主人の知らない世界で能力を見い出されて、彼女自身も仕事が面白くなってくるという状態はあり得ます。当然男性にもありますよ。サラリーマンでも、別のポジションに変わって、その能力が存分に活かしきれる環境になる状態。

でも彼女がそうなっていくと、あれはオレの女房だ~!という旦那さんの意識が強くなってきて・・そう、独占欲かな?そんなことがどうもね、家庭婦人を外で働きにくくさせている問題点じゃないか、なんて私は思います。

。。。山岡さんのご結婚歴は・・

山岡)ええ、結婚して離婚したの(笑)別れて、もう足掛け3年かな。主婦業と女優業を一緒にやっていたから、今よりもずうっと忙しかったです。お手伝いさんなどはいませんでしたからね。ただ幸か不幸か子どもがいなかったから、その分の忙しさはありませんでしたけれど。

あのね、役者ってタイプがいろいろあるのだけれど、一つの役にとことん惚れ込むってことがありますよ。たとえば、芸術祭参加の今井正さんの作品に捉まったとするでしょ。そうすると、その役の女性のことばかり考えるようになるの。日常生活も、だんだんそういう風になってゆく。

。。。そういう風にとは、役柄に似てくるとか

山岡)そう、似てきます。役柄に比重がかかって、何か「日常生活」に余裕がなくなるの。役のことばかりを考えてしまって、旦那さんのことはあまり考えられなくなってしまう、だって旦那さんはいつも居る人だから。

寝ては醒め・起きてはウツツ幻の~♪で、まるで恋愛しているようなものね。あそこのところはああしよう、こうしようって、常に考えているの。すると、旦那さんは分るでしょう、奥さんの気が何処か行っちゃってるって(笑)

。。。旦那様もカワイソーだったり(笑)

山岡)そりゃあ、寂しいでしょうね。現実的に煩雑だということではなくて、(心の)内部には入れないから。

ロケーションなどで地方へ行けば、3ヶ月くらい家を空けることもありますし。だから、女優さんと結婚するのはよっぽど寛容な男性じゃないとね。今何かに化けようとしているなこのタヌキは~!なんて、笑っていてくれるような人でなければね・・。

                     (以下次回に続く)





どうぞお帰りにはポチッ☆とお願いします
 
にほんブログ村 シニア日記ブログへ  こちらと 

  こちらにも

コメント (11)    この記事についてブログを書く
« 女優・山岡久乃さんのこと | トップ | 夜のウォーキングの楽しみ »
最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おもしろい!!! (たむたむ)
2008-08-29 21:18:04
「ありがとう」懐かしいね。
その頃は子供だったんで、チーターはおばさん。
山岡さんはおばあちゃんぐらいに感じてたよ。
40代だったんだ・・・

ねえ、トーコさん。

これって、取材日記か何か?
当時のものが出てきたの?
だったら、まだ他にもあるのかな?

続きが楽しみ!!!
返信する
たむたむさんへ (トーコ)
2008-08-29 21:30:34
たむたむさん、こんばんは^^

へっ!チーターはおばさん?(≧∇≦)/ ハハハ

この時の山岡さんは、まだ40代だったのよね。いや~、オバサンだと思って年齢も聞かなかったですぅ。

今ね、雷で一瞬停電したの。それでPCのHPも消えたんだけど、すぐ点いたと思ったらフリーズしちゃった。仕方がないのでプラグ抜いたデス^^;

夫に言ったら、こんな日はもう止めろ!!と叱られたから、また明日コメント入れなおします~、ひゃーー とりあえず”ありがとうX3”
返信する
素晴らしいですね~♪ (リラ)
2008-08-29 22:26:27
 今晩は~!  トーコさん~!
これって、取材日記なのですか? 素敵!!

 先日の試写会のレビューも、感心して読ませて頂きました。
映画のレビューって、苦手なので、さすが、トーコさんと・・。

 そちらは、雷ですか? お気を付け下さいね~。
そして、次回も楽しみにしています~。
返信する
昔の思い出 (山小屋)
2008-08-30 08:02:11
昔のことをこれだけ鮮明に覚えているトーコさんはあと20年はボケないでしょうね。
先日健診を受けました。
昨日結果を聞きに行きました。
30代の体だといわれました。
山歩きがいいようです。
今年の夏山で2キロ体重が減りました。
粗食が利いたようです。

足腰と精神年齢ではまだトーコさんに負けません。
若い女性をみると「恋ごころ」がわきます。

今日も雨降りのようです。
明日は地区の防災訓練、晴れて欲しいです。
返信する
働く女性 (個風)
2008-08-30 11:48:59
このインタビューは昔のものでしょうが、その頃から変わってない事もあるのですね。

男として「働きに行くな!」…というより「俺が食わせてやる」という所はあると思います。それはその時代までの生活の中では当然の流れだったのですから。

僕は…甲斐性が無いのでそうでなくても、うちのカミさんは「家にずっと居るなんて考えられない!」と言ってます
返信する
たむたむさんへ2 (トーコ)
2008-08-30 15:47:12
たむたむさん、昨夜は失礼致しました^^

今、また雷雨になりましたが、怖いながらもコメントの続きを書きますよ~
そうなんです!取材記録があるのです~、30数年経ってみて、今回想するシーンと当時の記録を記事にしています。
文中、今では使わない言葉などが出てくると思いますが、昔はこうだったんだ~と再認識してみてください。お若いたむたむさんには、「死語」ばかりでしょうね(笑)またヨロシクお願いします~読んでくださいねっ。コメントを有り難うデース
返信する
リラさんへ (トーコ)
2008-08-30 15:53:19
颯爽とポルシェを走らせるリラさん、こんにちは^^

映画はリラさんの方がお得意ではないでしょうか。私は、仕事で仕方なく・・全然不得意分野です~(得意分野もありませんが)あはっ!

雷が、又凄いです~、昨夜は、娘が帰り道に遭難するかと思ったとか。コメントを有り難うございました~またお願いします~
返信する
山小屋さんへ (トーコ)
2008-08-30 16:00:51
30代のお体の山小屋さん、こんにちは^^

また雷雨になりました。昨夜は歩きましたが、今夜は歩けないようです。ブログ更新も、雷が危ないので、今夜はPCを閉じませんとね。。えへっ!

へぇ~、若い女性に恋心を?なるほど~分るような気がします。若くない女性も若い男性に「恋心」を抱く場合が多いようですから(笑)

明日の防災訓練、頑張ってくださいませ。バケツリレーはやりませんよね、まさかねっ コメントをありがとうございました
返信する
個風さんへ (トーコ)
2008-08-30 16:16:42
個風さん、ようこそ~^^

またまたお天気が、漂流?しそうな状態になってきました(泣)このコメントバックをしたら、PCを閉じます

昔は共働きが少なかったように思います。夫もトーゼン家事などは一切しませんし。ほとんどの場合、妻が外に働きに出るのは、生活苦があったからです。

現在は夫婦のカタチも生活状況も大きく様変わりしています。骨董的取材記録を思い出しながら書いていますよ(笑)”甲斐性がない”も、死語に近いのではないでしょうか。家に居るのも外に出るのも、妻の好みの問題かもしれません。結局は夫婦の助け合いの精神(愛情)なのでしょうね。
コメントを有り難うございました~
返信する
Unknown (山口ジジイ)
2008-08-30 16:36:05
山岡さん、私も好きでしたね。
なくなってざんねんです。
良い女優さんがいなくなりましたね。
返信する

コメントを投稿

こんなンで委員会」カテゴリの最新記事