芋虫に咆哮といふ姿あり➰白眉なり芋虫の咆哮~小林恭二
この句に最初に出合ったのは、兜太現代俳句新人賞での選考会だった。そのときの句は「芋虫にも咆哮といふ姿あり」だった。わたしは「芋虫にも」の「も」が要らないといった。この小文を書くにあたり、依頼をくださった高野ムツ . . . 本文を読む
2022/6 №445 小熊座の好句 高野ムツオ
ロシアによるウクライナ侵攻のニュースに心を痛めている。同時に平和であることに安閑として、ただ馬齢をむさぼるばかりだった自分の脳天気ぶりに呆れ恥じてもいる。原子力に安全神話がないのと同じように核依存の世界にもともと平和神話はないのだ。 . . . 本文を読む
2022/8 №447 小熊座の好句 高野ムツオ 俳句は時事を詠うに不向きと言われる理由の一つは、盛ることができる情報量が他の詩形式より限られるからである。昨今のコロナウイルス禍でもロシアのウクライナ侵攻でも、短歌より俳句に取り上げられることが少ないように見えるのはそのためである。俳句は時事を詠うことを始めから断念した形式なのだ。誤解を生まないために付け加えれば . . . 本文を読む
小熊座先輩(とはいえ4才年少)の津髙さんの俳句は、私を毎月ワクワクさせてくれる😍
この新刊句集は江戸時代の版本のように堅固な作りであり、洒落て細部にこだわる函入り、句と共にあくまでもカッコイイ🎵
なかでも私は↓2006年から201 . . . 本文を読む
我が血には博徒に山師曼珠沙華 阿部宗一郎 阿部宗一郎は関東大震災があった大正十二年生まれ。個性派揃いの小熊座にあっても、ことに異彩を放つ。十六歳で戦地に赴き、四年六ヶ月のシベリア捕虜生活を経験してもいる。そうした青年期 . . . 本文を読む
冬の背高泡立草
墓標とも冬の背高泡立草 大澤保子
個人的なことになるが、昨年十二月の「街」とのコラボ句会に参加した際、私は、
我々も霜の背高泡立草 高野ムツオというのを出句した。ただし自分自身に〈霜を被り背高泡立草菩薩〉というのが . . . 本文を読む
夕景のシダレザクラ↑ 冬桜である十月桜は満開に 子福桜もちらほら花を咲かせていた🌸
火となるのか吹雪となるのかおしら神 佐々木とみ子
「おしら神」つまりおしら様は柳田國男が『遠野物語』以来、養蚕の起源を説く異種婚姻譚としてよく . . . 本文を読む
チュウサギ
冬蝶となる老犬の眠りかな 須藤 結 蝶については今度刊行する『鑑賞 季語の時空』でも、触れているが、日本の詩歌によく登場するのは俳諧の時代になってからである。万葉集には詠われていない。 詠われるようになっても現実の蝶より『荘子』「斉物論」の「 . . . 本文を読む
マスクの世言葉を隠し声隠し 津髙里永子 コロナウイルス禍の昨今、マスクを題材とした句が季節を問わず見受けられるようなった。マスク着用が通年となったせいである。ただし、ウイルス感染防止のマスク俳句では扱いにくい。マスクは冬季の感冒や寒気を . . . 本文を読む
日光龍王峡
村人の数より多し雪蛍 関根かな
雪蛍はアブラムシの一種綿虫の別名。秋に生まれた個体が綿のような分泌物を背負う。それを蛍の光に見立てた名だ。雪の降る前に飛ぶとも言われている。綿虫という呼名の方が土俗的で私好みだが、ここ . . . 本文を読む
忘年や牛のどこかを皿にのせ 布田三保子 焼肉屋での忘年会だろうか。次々に皿に載せられてカルビやタンやホルモンが運ばれてくる。それは、そのまま旨そうな食材であるが、カルビやタンやハツと呼ばずに「牛のどこか」と言われると、たち . . . 本文を読む
サナギが膨らんでいた。
割れた、と思った瞬間、パリパリッと縦に亀裂が入り、蝶の辛子色の複眼が覗いた。蝶は白い二本の脚を突っ張らせて殻を押し広げ、項垂れるような形で収められていた頭を持ち上げると、下向きになっていた黒い触角を殻からそうっと引き抜いた。オレンジ色の肩のような翅の付け根が見える。肩からするっと落ちるように殻から抜け出し、抜 . . . 本文を読む