昭和40年代後期、毎月一度、各映画会社の宣伝部を廻っていたことがありました。パンフレットやスチール写真などの資料をいただき、ほんのサワリだけお勧め配給映画の話なんぞを伺いに。
なにぶん方向音痴の田舎モノゆえ、引き継いでくれる先輩に教えられながら、映画会社への道を覚えつつ、さらに宣伝部の担当の人の顔と名前を覚えるのに、目を白黒させる日々だったと思い返しています。
職場には試写会の案内がけっこう来るわけで、見たい人は早い者勝ちなのですが、「これ見たいなぁ~」などと言いつつも先輩方は仕事が忙しく、ために新人で決まった仕事のないヒマな私が、仕事の参考と称して(勤務時間中に堂々と?)観に行く確率は、案外高かったようです^^
試写会に行った人は、(優先的に)映画欄紹介の感想文を書くことになっていました。(そのようにニコニコ笑いながら先輩が言っていたのです・・)でも、誰も書かないようなので私が勝手に書いていました~、あっ違うかナ(笑)
今回はチャップリンの『街の灯』を、回想しながら見てみましょう。以下は昔の記事より抜粋しています。題して「大昔の試写室」より。
* * * * *
東和映配では、創立45周年記念作品としてチャップリンの十大名作を順次公開する。
その第一弾『モダンタイムス』は大当たりで、続く第二弾が『街の灯』。この後には『ライムライト』『キッド』『黄金狂時代』『サーカス』『独裁者』『殺人狂時代』『ニューヨークの王様』『(チャップリン・パレード)犬の生活者・担え銃・偽牧師』、以上が後に続く予定である。
今回の『街の灯』は1931年、チャップリン42歳の作品で、3年もの撮影時間をかけて150万ドルが注ぎ込まれたという。完全主義者として知られた彼の執念は、数々のエピソードを残している。
特に大金持ち役のヘンリー・クライブをほとんど完成間近かになって解約し、代役としてハりー・マイヤーズを起用、大部分の撮影をやり直したことなどは、ずいぶんと話題になったそうだ。
世界的大不況のさなかに投げ出された浮浪者が、盲目の美しい花売り娘に寄せる恋心を描いた映画である。パントマイムによる豊かな表現力と、わずかな字幕スーパーだけで、圧倒的な観客の共感を呼び起こした。まさしくルンペン・チャップリンの真骨頂、コメディー&ロマンス映画であった。
日本では昭和9年に日劇で公開され、大ヒットを記録したという。が、その後はまったく公開されることがなかった。ではここで、物語を少しご説明いたしましょう。
美しく整えられた街の広場に、正装した紳士淑女たちが集まっている。新しく建立されたこの街のシンボル、繁栄の女神像と騎士像の除幕式が始まろうとしていた。さて、重々しく国家の吹奏とともに幕がひかれると。。なんと、像の上では一人のルンペン男が寝ているではないか・・!
人々の驚きの声、関係者らの怒号が飛び交い、厳かなセレモニーは台無しになった。人々の騒ぎに気付いて目を覚ました彼は、女神像にへばりつきながら降りにかかった。しかし慌てているものだから、破れたズボンのお尻に騎士像の持つ剣が刺さって、どうあがいても抜けやしない。
剣からようやく解放されると帽子をとって、周囲に軽く会釈を繰り返しながら降りて来たのはいいのだが、ついでとばかり銅像の頭に帽子を載せ、その膝へ足を乗せて靴を磨きだす始末。山高帽にだぶだぶズボンでステッキを振り回す”あのチャップリン登場”である。東和の満員の試写室は、ここで爆笑の渦が巻き起った。
『街の灯』の完成をみた時、チャップリンはこんなことを語っていたそうだ。
「私はトーキーが嫌いです。トーキーは世界最古の芸術たるパントマイムの技術を損ないました・・。造形的な美しさは、スクリーンにとって最も重要なのです。視覚による芸術だからです」と。
あえてトーキー化の流れに逆らった『街の灯』は、サイレント映画の一つの頂点として捉えられるかと思う。だから笑い、泣かせる傑作中の傑作なのだろう。(東和配給・1時間27分)
* * * * *
東京にはキレイな人が多いけれど、東和の宣伝担当さんは、こんな人今まで見たことがないというほど特別の「美女」でした。なぜにこんなキレイな女性がここに?と思いました。映画会社だけに、女優さんにしか見えません。
Kさんといって、フルネームをまだ覚えているくらいです。しかし、女優にすると役が付かないかもしれないの、お顔も体型も華奢で、すべてが小作りでした。ホント惜しいです、身長がもっとあったなら。。。
純白の身体にフィットしたYシャツを、袖口を少し折って格好良く着こなしていて、ひと目で憧れました。むろん私も、白のYシャツを探しましたよ(笑)でも、薄給の身の上。よく仕事帰りに買っていた駅ビル店などの品物では、似たようなものさえありませんでした。Kさんのは、布の素材が薄手で、彼女が着ていると羽衣のようでしたから。
今思うと、高級なイタリア製ではなかったでしょうか。白さが眩しく輝いていたKさんの、凛々しく爽やかなYシャツ姿を懐かしく思い出しています。
どうぞ皆さまお帰りの際にはポチッとお願いします
草臥れながらも登録中
9月半ば頃まで(たぶん)継続中
なにぶん方向音痴の田舎モノゆえ、引き継いでくれる先輩に教えられながら、映画会社への道を覚えつつ、さらに宣伝部の担当の人の顔と名前を覚えるのに、目を白黒させる日々だったと思い返しています。
職場には試写会の案内がけっこう来るわけで、見たい人は早い者勝ちなのですが、「これ見たいなぁ~」などと言いつつも先輩方は仕事が忙しく、ために新人で決まった仕事のないヒマな私が、仕事の参考と称して(勤務時間中に堂々と?)観に行く確率は、案外高かったようです^^
試写会に行った人は、(優先的に)映画欄紹介の感想文を書くことになっていました。(そのようにニコニコ笑いながら先輩が言っていたのです・・)でも、誰も書かないようなので私が勝手に書いていました~、あっ違うかナ(笑)
今回はチャップリンの『街の灯』を、回想しながら見てみましょう。以下は昔の記事より抜粋しています。題して「大昔の試写室」より。
* * * * *
東和映配では、創立45周年記念作品としてチャップリンの十大名作を順次公開する。
その第一弾『モダンタイムス』は大当たりで、続く第二弾が『街の灯』。この後には『ライムライト』『キッド』『黄金狂時代』『サーカス』『独裁者』『殺人狂時代』『ニューヨークの王様』『(チャップリン・パレード)犬の生活者・担え銃・偽牧師』、以上が後に続く予定である。
今回の『街の灯』は1931年、チャップリン42歳の作品で、3年もの撮影時間をかけて150万ドルが注ぎ込まれたという。完全主義者として知られた彼の執念は、数々のエピソードを残している。
特に大金持ち役のヘンリー・クライブをほとんど完成間近かになって解約し、代役としてハりー・マイヤーズを起用、大部分の撮影をやり直したことなどは、ずいぶんと話題になったそうだ。
世界的大不況のさなかに投げ出された浮浪者が、盲目の美しい花売り娘に寄せる恋心を描いた映画である。パントマイムによる豊かな表現力と、わずかな字幕スーパーだけで、圧倒的な観客の共感を呼び起こした。まさしくルンペン・チャップリンの真骨頂、コメディー&ロマンス映画であった。
日本では昭和9年に日劇で公開され、大ヒットを記録したという。が、その後はまったく公開されることがなかった。ではここで、物語を少しご説明いたしましょう。
美しく整えられた街の広場に、正装した紳士淑女たちが集まっている。新しく建立されたこの街のシンボル、繁栄の女神像と騎士像の除幕式が始まろうとしていた。さて、重々しく国家の吹奏とともに幕がひかれると。。なんと、像の上では一人のルンペン男が寝ているではないか・・!
人々の驚きの声、関係者らの怒号が飛び交い、厳かなセレモニーは台無しになった。人々の騒ぎに気付いて目を覚ました彼は、女神像にへばりつきながら降りにかかった。しかし慌てているものだから、破れたズボンのお尻に騎士像の持つ剣が刺さって、どうあがいても抜けやしない。
剣からようやく解放されると帽子をとって、周囲に軽く会釈を繰り返しながら降りて来たのはいいのだが、ついでとばかり銅像の頭に帽子を載せ、その膝へ足を乗せて靴を磨きだす始末。山高帽にだぶだぶズボンでステッキを振り回す”あのチャップリン登場”である。東和の満員の試写室は、ここで爆笑の渦が巻き起った。
『街の灯』の完成をみた時、チャップリンはこんなことを語っていたそうだ。
「私はトーキーが嫌いです。トーキーは世界最古の芸術たるパントマイムの技術を損ないました・・。造形的な美しさは、スクリーンにとって最も重要なのです。視覚による芸術だからです」と。
あえてトーキー化の流れに逆らった『街の灯』は、サイレント映画の一つの頂点として捉えられるかと思う。だから笑い、泣かせる傑作中の傑作なのだろう。(東和配給・1時間27分)
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東京にはキレイな人が多いけれど、東和の宣伝担当さんは、こんな人今まで見たことがないというほど特別の「美女」でした。なぜにこんなキレイな女性がここに?と思いました。映画会社だけに、女優さんにしか見えません。
Kさんといって、フルネームをまだ覚えているくらいです。しかし、女優にすると役が付かないかもしれないの、お顔も体型も華奢で、すべてが小作りでした。ホント惜しいです、身長がもっとあったなら。。。
純白の身体にフィットしたYシャツを、袖口を少し折って格好良く着こなしていて、ひと目で憧れました。むろん私も、白のYシャツを探しましたよ(笑)でも、薄給の身の上。よく仕事帰りに買っていた駅ビル店などの品物では、似たようなものさえありませんでした。Kさんのは、布の素材が薄手で、彼女が着ていると羽衣のようでしたから。
今思うと、高級なイタリア製ではなかったでしょうか。白さが眩しく輝いていたKさんの、凛々しく爽やかなYシャツ姿を懐かしく思い出しています。
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9月半ば頃まで(たぶん)継続中
あの独特の動きは彼にしかできません。
もうあんな役者は出てこないしょうね。
好きな役者の1人です。
トーコさんが演じたらどんなになるのでしょう。
今度「動画」で見せてくれませんか?
うんと昔は、”活動写真”と言っていましたね、親たちなどは。
チャップリンは、本当に素晴らしかった。涙が出るほど笑いました。崇高な笑劇(パントマイム)の中には、深い悲しみや強い主張があるのです。
あらら!山小屋さんこそ、今度「動画」を見せてくださいね~ コメントをありがとうございました
泣き笑いでみたチャップリン、
切なさが蘇ります。
トーコさんの「大昔の試写室」も白いYシャツのKさんもそれとダブって何だか切なく思えてしまいました。
感情移入してしまったかな。
トーコさんはやはり文章修業をたくさんしてきたんですね。
映像が見えてくる文章が好きです。
この秋、上質の白いシャツを手に入れようかしら。。。
だぶって見えて切なくなりました?hhh
映画のメロディーはどれも哀愁に満ちていて、たぶん私も「ライムライト」が一番記憶に残っていると思います。「大昔の試写室」も、今見ると懐かしいものですね
映像が見えてきました?超嬉しいです~、そう言って頂けると
文章が今と変わっていないのは、30年間字を書くことを止めていたからでしょうか。成長していませんね^^;
今まで白いシャツは何枚も買ったけど、Kさんの着ていたようなシャツではないの。あの白いシャツは、彼女だからこそ映えたのでしょう。のっちさんなら、白をどう着こなすかしら。楽しみです ありがとう~
ちょっと情けない主人公が笑えて泣ける、素晴らしい映画だったと思います。
CGや特撮が主流になった現在の映画もいいですが、音がなくても表現できる、こういったシーンこそ芸術と呼べるのだと思います。
人の心を打つのは、見せられる映像ではなく、自分が感じる映像だと思うのです。☆☆
チャップリンはこの後、トーキーや音楽などを入れた作品も作っています。来日した時は、暗殺計画もあったとか・・コワイですね~^^;
「感じる映像」素晴らしい言葉です。その通り、サイレントって、言語ではなく世界共通で感じるものなのでしょうね。CGもいいものですけれどね ありがとう~たくたくろさん
一生をテレビでやっていました。
秘書から見たチャップリンの一生も、感動ものでした。
もちろん秘書を務めた日本人も感動です。
余りテレビは夢中になって見る方では、ないのですが
・・・
テレビも時々は見るといいですね。知識が増えます。
今夢中なのは『篤姫』です。
トーコさんはどのような番組がお好きですか?
今日はいいお話をありがとう!