高校3年の春休みに、
友達と3人でテントを担いで回った
電車の旅は本当に面白かった。
ガイドブック片手に
ろくな地図も持たず、
南九州を徘徊して回った。
途中、
青島、指宿、霧島2泊、
八代、阿蘇と周遊切符を駆使して移動した。
霧島だけ2泊だったのは、
そのときは春の嵐が荒れ狂っていたのだ。
さすがにテント泊は厳しく、
山麓のランプの民宿に一泊し、
宿の主人に車で送ってもらって
次の日に霧島高原のキャンプ場の
バンガローに一泊したから2泊となった。
春休みの3月、
高原のバンガローは寒さがムチャ厳しく、
震えながら寝た記憶がある。
今回の旅行では奥さんに無理を行って、
そんな、当時の思い出の記憶をたどってみようと
霧島に行くことにしたわけで、
せっかく行くのなら
温泉でも入ろうということになった。
そこで、
宮崎出身のS藤さんに計画を話したら、
山深いところにある非常にひなびた温泉だけど、
その湯がまさに日本一の温泉があるという
アドバイスをいただいたので行ってみた。
S湯温泉
途中の山道では、
道の両側に噴煙が湧き上がり、
「車の窓を開けての通行にはご注意ください」
みたいな立看板も置かれてあった。
大量に硫黄を含んだ噴煙が湧き上がっているらしい。
本道をはずれて、
すれ違いも怖いような山道を
しばらく行くとその温泉があった。
こんなたたずまい。
評判は高いらしく、
清閑な周りの景色の中で、
そこは意外に人でにぎわっていた。
温泉の横を流れている川を見ると、
そこもすでに
俗に言う「地獄」の風情。
火山の河口にあるような岩が
ごろごろしている。
川に浸かっても
十分やないかというくらい。
受付で料金を払い、
階段を下りていくと、
左手前に男湯、
左奥に女湯があるが
右側に広がる露天風呂は混浴らしい。
露天風呂には
女湯で借りれるバスタオルをまいた
オバサンたちもオッサン連中に混ざって入っている。
とりあえず、
脱衣所で服を脱ぎ、
室内の男湯に入ってみた。
鼻を突くような硫黄のにおい、
ミルクのような真っ白のお湯は
これまでのどの温泉よりも迫力たっぷりだ。
湯船の右隅から、
滾々と湧き出ている温泉が、
滝のように流れ込んでおり、
そのあたりには温泉成分の
硫黄やらがぶ厚く堆積している。
入ってみると、
湯の温度は熱すぎずぬるすぎずの
丁度いい温度。
温泉成分は非常に濃く、
体中にマグマが染み込んでいくような感じだった。
これは、いいところを教えてもらった。
S藤さんに感謝やな。
そこで、報告用に写真撮影をしてみた。
湯船には3人ほど入っていたけど、
「すんまへん、写真撮ろと思てまんねん」
と大阪弁丸出しで話しかけたら
みんな上がってくれた。
こんなとき大阪弁の響きは
あつかましさを緩和してくれて便利やな。
そして、
湯船に落とさないように
注意しながら携帯のカメラで
タイマーを使ってパチリ。
こんな感じでした。
「すんまへんでした」
と皆さんにお礼をいって、
再度湯船に浸った。
そして改めて風呂全体を眺めてみると、
男湯と女湯の間にある仕切りは、
全然厳重なものではなく、
隙間もあって(覗いてないよ)
話し声が筒抜けになっている。
「この湯船の湯より、
外の露天風呂の方が成分が濃いのよ」
とオバサン(と思われる)が
話しているのが聞こえた。
さっそく、そっちに行ってみた。
女湯ではバスタオルを借りれるらしいが、
男湯には当然そんなものはない。
タオルで前だけ隠して入っていった。
雨も降っているので、
しつらえてある屋根の下で、
どっぷり浸かった。
上がる頃には女性の姿もなかったので、
前を隠すことなく、
フリチンで脱衣所のほうへ戻っていく途中、
脱いだ靴が濡れそうになっていたので
置きなおしたりしていたら、
階段から降りてきた若い女性たちとばったり!
そこでクビにかけてたタオルをとって
急に前を隠すのも、
なんだか慌てているみたいなので、
全然気にしてないよ
といわんばかりに、
全裸全開ですれ違った。
あとで、話題になってるやろなあ。
体じゅうから立ち上る
硫黄のにおいをかぎながら、
着替えを済ませて受付に戻ったら、
すでに奥さんは上がって待っていた。
その後、
えびの高原で満開のミヤマキリシマを満喫して宿に戻った。
雨の中をうろうろしたし、
あの温泉では髪を洗うこともしなかったので、
ホテルの風呂に入りなおしたが、
風呂から上がっても
昼間の温泉で染み付いた
硫黄のにおいは完全にはとれなかったなあ。
ほのかな硫黄のにおいに包まれながら、
ホテルのバイキングを満喫した夕食となりました。
恐るべし、宮崎の温泉。