散髪屋の大将は １

散髪といえば、
近頃は激安散髪に行きcutしているが、
でも地元のつながりも強いので
二回に一回は地元の普通の
散髪に行っている。

まあ、もともと髪の毛も
少なくなってきて
行く頻度もかなり減った。

誰か言ってたなあ、
「俺の髪はこんなに少ないのに、
なんで散髪代がほかの人と一緒やねん」
というと
「何言うてまんの、少ない方が散髪難しいんやで」
と怒られたそうだ。

う～ん、そうかもしれん。
短い人の方が細かいところを
気にするのかも。

まあ、そんなこともあったりしながら、
今回は近所の昔からの行きつけの
散髪屋に行くことにした。

ここの大将が面白くてねえ。
趣味で釣りをしているそうで、
散髪代の前の鏡台の端っこに、
釣りのウキとか仕掛けとかを
並べたりしている。

そして釣ってきたアジとかは、
店の大きな水槽で飼っていたりする。
まあ、ほかにも面白い植物を育てたり、
店の外装なんかも夏場とか
すだれをつるしたりとか、
なかなかいろんなことに
興味を示す面白い大将なのだ。

しかし、実はこの大将も持病を持っている。
心不全などの病気を１年くらい前に発症し、
その時も入院をして治療をしたようで、
おかげで血液サラサラの薬を
飲んでいるという意味で
doironと同僚なわけなのである。

年齢もまあ７５歳になっているので、
年相応にくたびれてきている
というのもあるだろうが、
まあそんな病気にも負けず
それからも楽しそうに仕事をしていたのだ。

しかし、昨年末この大将に
とんでもないことが起こった。

店で飼っているアジの水槽に、
補給する水を汲みに海に行ってた時だ。
汲んだ水を引き上げようとしたときに、
急に苦しくなったんだそうだ。

ああ、これはまた心臓が暴れているのか
と思い、何とか車を運転して
帰宅したのだがしんどい様態が
止まらないので救急車を呼んだ。

心臓が悪いのでということで、
心臓関係の医者に運び込まれ、
検査した結果は、心臓近くの動脈が
内側に乖離しているというものだった。



これは大変である。
内側ではなく外側に破裂してたら
一貫の終わりという病気だ。

治療はというと手術というよりは、
じっと安静にして直すということで、
３９日間入院し、ようやく乖離も
収まったので、なんとか退院
ということになったという。

でもこれからまた血管が
破裂したらもう終わりなんだそうだ。

もう重たいものを持っちゃいかんよとか、
朝起きるときはゆっくり起きなあ
あかんよなどといっぱい
注意されたそうだ。

そんな大将の話を聞いたのはつい最近だった。

ミセスと親交のある
福祉委員の人からだった。

「へ～それやったら見舞いに行こかあ」
と思っていたら、
「いやあもう帰ってるらしいよ」
とのこと。

そうかあ、だったらもうあまり
無理もできないし、
海辺で釣りも厳しいやろから
つまんないやろなあ、と考えていたのだ。

それからしばらくは、
店の前を車で通るときにはいつも
チラッとのぞいていた。

大将は剥げているので
すぐにわかるのだが、
散髪しているのを見たことがない。

普通の服を着て店の中で
立っているのを見かけたが、
車が混んでいたので
止めることができなかったので、
姿をチラッと見ただけだった。

で、最近ようやく散髪の時期が
近付いてきたので、
今回は激安の番だったのだが、
これは是非ともこの店に行ってあげて、
大将がいなかったら一緒に
仕事をしている息子に話しを
聞こうとしたのでした。

てくてく歩いて店に行き、
中に入っていくと、
息子が「いらっしゃい」と
向かえてくれた。

そう、中に入ると息子が一人で立っています。

いままでcutは大将がしてくれていたので、
これからはこの息子と
やり取りしながらになるんやなあ、
と思いつつ椅子に座ったのでありました。

続く