ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「軍靴の響き」 半村 良 2015.10.26読了!

2015年10月27日 16時23分10秒 | 作家 は行
軍靴の響き (角川文庫) 2015.10.26読了
半村 良 (著)

その朝、人妻美子との情事のベッドで目覚めた広告マン室井はニュースに驚愕した。わが国のタンカー撃沈さる。インドネシア海域でゲリラが奇襲―。船長は美子の夫だった。専守防衛を名目に自衛隊は出動を強行、ついに戦後初の海外出兵の道は拓かれた。それが引き金だった。国防省設置、徴兵制復活…、日本は〈いつか来た道〉を一直線に驀進しはじめた。




まず、読んでみて驚いたのは、この小説が40年前に書かれたものなのに、現在の日本の状況と酷似していること。半村さんの先見性に驚愕した。

近未来の日本が軍事国家になっていく過程を描いていますが、国の体制や政治のことより、国がどうかわろうとも、そこにいつも存在するのは、無責任な、自分の利益と目先の事しか考えない一般の大多数の国民。

自分の明日の生活に直接被害が起こらなければ、海外派兵だろうが、軍備の拡大だろうが、クーデターだろうが…。何が起ころうと反対することもなく、少数の反戦グループの活動も国民の支持を得られず、潰されていく。

口では戦争反対といいながら、軍事国家の体制に取り入ることで、己の利益を得ようとする。
やっと、わが子が徴兵制にとられてから、泣き喚き、国を罵る。後の祭り。

作者が警鐘をならすのは、軍事国家になるという事そのものよりも、無責任、無関心、利己的な国民にこそ本当の危険が隠れているということなんだ。…6点。

「海中密輸ルートを探れ」 クライブ・カッスラー 読了!(再読)

2015年10月20日 12時17分14秒 | 作家 か行
海中密輸ルートを探れ (新潮文庫) 2015.10.13読了
クライブ・カッスラー (著), 中山 善之 (翻訳)

エーゲ海の平和な島にある米軍基地が、突如、第一次大戦当時の独軍複葉機に攻撃された。 近くに停泊中の調査船に赴く途中のダーク・ピットは、救援信号を受けて、 旧式の飛行艇で応戦する。翌朝、 偶然出会った美女の伯父の豪邸に招待された彼は、監禁され、 巨大なシェパードに襲われる・・・。エーゲ海を舞台に、 16トンもの麻薬密輸ルートの謎に挑むピットの活躍を描く長編。


たぶんこれカッスラー様デビュー作であったような。
ダーク・ピットシリーズです。
読むのは、2度目です。
面白かったんですが、やっぱ最初に読んだときの衝撃的面白さはない。
なんでなんだろ?
これからも、カッスラー様の作品をちょっとづつ再読していこうなんて思っていたのですが、やめるか? でも、もう何作か読んでみてからに。…6点。


「孤独の歌声」 天童 荒太 読了! 

2015年10月06日 16時23分54秒 | 作家 た行
孤独の歌声 (新潮文庫) 2015.10.5読了
天童 荒太 (著)

凄惨な殺人事件が続発する。独り暮らしの女性たちが監禁され、全身を刺されたかたちで発見されたのだ。被害者の一人が通っていたコンビニエンス・ストアの強盗事件を担当した女性刑事は、現場に居合わせた不審な男を追うが、突然、彼女の友人が行方不明に。孤独を抱える男と女のせつない愛、噴き上がる暴力――。『家族狩り』『永遠の仔』につながる、天童荒太のまさに出発点。



女刑事の風希と歌手を目指してるコンビニ店員潤平と連続殺人犯人。
形は違うがそれぞれ3人とも「人間の孤独」を抱えている。
これがこの天童さん独特な感じかな。
なんか、やっぱ全体的にせつねえんです。
ただのミステリーとかサイコものではないんですよ。
でも、ミステリーとしてもよく出来ていて、
プロット、伏線、上々です。
一気読みでしたよ。…8点。

「あふれた愛」 天童 荒太 2015.10.1読了!

2015年10月02日 15時29分40秒 | 作家 た行
あふれた愛 (集英社文庫) 2015.10.1読了
天童 荒太 (著)

ささやかでありふれた日々の中で、たとえどんなに愛し合っていても、人は知らずにすれ違い、お互いを追いつめ、傷つけてしまうものなのか…。夫婦、親子、恋人たち。純粋であるがゆえにさまざまな苦しみを抱え、居場所を見失って、うまく生きていくことができない―そんな人々の魂に訪れる淡い希望を、やさしくつつみこむように描く四つの物語。天童荒太の本質がつまった珠玉の作品集。



「とりあえず愛」「うつろな恋人」「やすらぎの香り」「喪われゆく君に」の4編からなる短編集。ちょっと、読みながら胸がつかえるような気持ちになる。読んでいてつらくなる話もある。人は弱いんだけど、人の弱さや、痛みがわかるようにならないと、本当は相手を思いやれないんだなって思ったよ。

とりあえず愛は、自分勝手な夫が離婚届を突きつけられる。でも夫には理解できない。(だから、妻の気持ちがわかってなかったんだって、いつも自分のことばかりで…)。でもなんか最期はやさしい結末。(ま、どうなるかわからんけど)。

うつろな恋人は、自分のことしか考えてない中年男でてくる。(そんなんばっかだな)。精神を病み自分の作り出した幻想のなかで生きている女の子に惚れるんだけど彼女の妄想を壊しちゃうんだよね。(自分を相手にしてくれないから)

やすらぎの香りは、これも病んでる系のお話なんだけど、親の抑圧から精神に異常をきたす子どもたちは多いと聞くが、この物語の主人公の二人もそんな感じで、療養中。二人は出会いお互いをパートナーと必要とし、二人で自立の道を模索していく。

喪われゆく君には、身近な人が死んで自分の存在感も無くしていく人と、そのひととかかわりを持つことで、ひとつ人間として成長していく男の話。
どれもよかったよ。(好きなのは「やすらぎの香り」)…8点。