軍靴の響き (角川文庫) 2015.10.26読了
半村 良 (著)
その朝、人妻美子との情事のベッドで目覚めた広告マン室井はニュースに驚愕した。わが国のタンカー撃沈さる。インドネシア海域でゲリラが奇襲―。船長は美子の夫だった。専守防衛を名目に自衛隊は出動を強行、ついに戦後初の海外出兵の道は拓かれた。それが引き金だった。国防省設置、徴兵制復活…、日本は〈いつか来た道〉を一直線に驀進しはじめた。
まず、読んでみて驚いたのは、この小説が40年前に書かれたものなのに、現在の日本の状況と酷似していること。半村さんの先見性に驚愕した。
近未来の日本が軍事国家になっていく過程を描いていますが、国の体制や政治のことより、国がどうかわろうとも、そこにいつも存在するのは、無責任な、自分の利益と目先の事しか考えない一般の大多数の国民。
自分の明日の生活に直接被害が起こらなければ、海外派兵だろうが、軍備の拡大だろうが、クーデターだろうが…。何が起ころうと反対することもなく、少数の反戦グループの活動も国民の支持を得られず、潰されていく。
口では戦争反対といいながら、軍事国家の体制に取り入ることで、己の利益を得ようとする。
やっと、わが子が徴兵制にとられてから、泣き喚き、国を罵る。後の祭り。
作者が警鐘をならすのは、軍事国家になるという事そのものよりも、無責任、無関心、利己的な国民にこそ本当の危険が隠れているということなんだ。…6点。
半村 良 (著)
その朝、人妻美子との情事のベッドで目覚めた広告マン室井はニュースに驚愕した。わが国のタンカー撃沈さる。インドネシア海域でゲリラが奇襲―。船長は美子の夫だった。専守防衛を名目に自衛隊は出動を強行、ついに戦後初の海外出兵の道は拓かれた。それが引き金だった。国防省設置、徴兵制復活…、日本は〈いつか来た道〉を一直線に驀進しはじめた。
まず、読んでみて驚いたのは、この小説が40年前に書かれたものなのに、現在の日本の状況と酷似していること。半村さんの先見性に驚愕した。
近未来の日本が軍事国家になっていく過程を描いていますが、国の体制や政治のことより、国がどうかわろうとも、そこにいつも存在するのは、無責任な、自分の利益と目先の事しか考えない一般の大多数の国民。
自分の明日の生活に直接被害が起こらなければ、海外派兵だろうが、軍備の拡大だろうが、クーデターだろうが…。何が起ころうと反対することもなく、少数の反戦グループの活動も国民の支持を得られず、潰されていく。
口では戦争反対といいながら、軍事国家の体制に取り入ることで、己の利益を得ようとする。
やっと、わが子が徴兵制にとられてから、泣き喚き、国を罵る。後の祭り。
作者が警鐘をならすのは、軍事国家になるという事そのものよりも、無責任、無関心、利己的な国民にこそ本当の危険が隠れているということなんだ。…6点。