ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「彼岸の奴隷」 小川 勝己 読了!

2015年08月25日 20時44分13秒 | 作家 あ行
「彼岸の奴隷」 角川文庫 小川 勝己 (著)  2015.8.25読了 。

手と首を斬り落とされた女の死体が発見された。捜査一課の蒲生信昭は、所轄の刑事・和泉龍一と組み、捜査を開始する。だが、被害者の娘、大河内涼を見たとたん、和泉の様子がおかしくなる。和泉を疑い出した蒲生は、彼の過去を調べるが…。血と暴力に彩られたあらゆる罪悪が襲いかかる狂気のクライム・ノベル。鬼才・小川勝己が描く、救いのない、背徳的な快楽に満ちた世界から、あなたは抜け出せるか―。



クライムノワール系である。
しょうもない鬼畜系の登場人物たち。
いやはや、まともな人間がいない。
全員、妄想の中に生きている。
ここで言う彼岸とはきっとこの妄想の世界。
妄想に取りつかれた奴隷たち。
それでも、小説としておもしろく、
この手のエログロ小説にはない爽快感、疾走感まで感じさせてくれる作品(単に俺がおかしいだけかも)。…7点。

「今夜、すベてのバーで」 中島 らも 三回目の読了!

2015年08月13日 15時25分01秒 | 作家 な行
「今夜、すベてのバーで」 講談社文庫 中島 らも (著)  2015.8.10読了 。

薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような……。アルコールにとりつかれた男・小島容(いるる)が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作。。


ただたんにアルコール中毒の人の入院記。なんだけど、それをこれだけの小説にしてしまう中島らもさんはすごい!ってはなし。「ガダラの豚」に並ぶらもさんの最高傑作(アル中の俺にとっては)…。10点

「無影燈」〈上・下〉 渡辺 淳一  読了!

2015年08月05日 18時58分41秒 | 作家 わ行
「無影燈」〈上・下〉 集英社文庫 渡辺 淳一 (著)  2015.8.4読了 。

個人経営のオリエンタル病院で一勤務医として働く直江庸介。優秀な外科医でありながら、大学でのエリートの道をあっさり捨てて振り返らぬ、どこか影のある男だった。看護婦の倫子は、そんな直江に惹かれ、やがて深く愛するようになる。酒に溺れ、何人もの女性と関係を持ち続ける彼には、人には言えない秘密があった。孤高の医師と恋人との愛の物語を軸に病院内の人間模様を描いた傑作医療小説。
どこか孤高の影を引きずり、ニヒルで不可解な存在。彼と深い関係となった今も、志村倫子にとって、直江は捉えきれない男だった。相変わらず酒と女性に耽溺し、密かに麻薬を打っている気配もある。彼の秘密に気づき始めた倫子は、正月休みに旅に誘われ、二人で雪景色の北海道へと発つ。楽しい旅行になるはずが…。運命に翻弄されつつも生きる男と女。切ない愛の行方は!?医療小説上、不朽の名作。



医療小説というのは、あまり読まないジャンルなのだが、これはもう、直江医師というキャラクターにひかれて、物語にひきづりこまれた。
主人公の直江医師の影の部分が明らかになるにつれ、そこには、死の予感以外は存在しなくなる。
普通は、愛と死の物語となるところが、あまりに直江医師が圧倒的すぎて、最後はすべてが無に帰してしまう。
死とは無であり、直江医師も死んでしまえば無なのだろうか? なんかひきづられる小説だった…8点。