ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「震える牛」 相場英雄読了!

2016年05月24日 15時20分41秒 | 作家 あ行
震える牛 (小学館文庫) 2016.5.23読了。
相場 英雄 (著)

警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決となっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。当時の捜査本部は、殺害された二人に面識がなかったことなどから、犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込んでいた。しかし「メモ魔」の異名を持つ田川は関係者の証言を再度積み重ねることで、新たな容疑者をあぶり出す。事件には、大手ショッピングセンターの地方進出に伴う地元商店街の苦境、加工食品の安全が大きく関連していた。現代日本の矛盾を暴露した危険きわまりないミステリー。



食の安全がよく話題になる昨今、特に食品流通業界を舞台にしたやけにリアルなミステリー。
ルポルタージュ的な側面も併せ持つ。
果たしてどこまでが、小説で、どこからが現実なのか? 読んでいて本当にわからなくなる。
それだけリアルだと言うことだけど、これも作者の徹底した取材の賜物だろう。
中盤から、後半、容疑者を確定してから自供させるまでの展開がスピード感をともないたたみかけるような面白さ。
ちなみに、震える牛とは狂牛病の症状をあらわす。…7.5点。

「フリン」 椰月美智子読了!

2016年05月09日 13時33分07秒 | 作家 や行
フリン (角川文庫) 2016.5.9読了。
椰月 美智子 (著)

高校生の真奈美は、カレと入ったラブホテルで、自分の父親が同じマンションに住むOLの葵さんと一緒に歩いているのを目撃してしまう(「葵さんの初恋」)。元カレと逢瀬を繰り返す主婦、人生最後の恋に落ちた会社員、壮絶な過去を持つ管理人の老夫婦…。ある川辺に建つマンションを舞台に繰り広げられる反道徳の恋。愛憎、恐怖、哀しみ…様々なフリンの形を通じて、人と人の温かさ、夫婦や家族の関係性を描ききった連作短編集。


とあるマンションの住人たちの『フリン』の連作短編集。
不倫ではなくフリンとしただけあって、ドロドロとした修羅場チックなお話はでてきませんし、文体もライトです。また、時にはハートウォーミングなフリン話しなどもあり、読後感が良かったり…。
なんていう、ほんわか不倫の話は期待していませんので、ドロドロの愛憎劇の果てに、当事者たちを地獄の底に叩きつけるような悲壮なラストと、イヤーな読後感をしばらく引きずるような小説をお願いしたいものです。…4点。

「テティスの逆鱗」 唯川恵読了!

2016年05月05日 18時45分06秒 | 作家 や行
テティスの逆鱗 (文春文庫) 2016.5.5読了。
唯川 恵 (著)

華やかな美貌で売る女優、出産前の身体に戻りたい主婦、完璧な男との結婚をねらうキャバ嬢、そして、独自の美を求め続ける資産家令嬢。美容整形に通い詰める四人はやがて「触れてはならない何か」に近づいてゆく―。終わりなき欲望を解き放った女たちが踏み込んだ戦慄の風景を、深くリアルに描く傑作長編!



美容整形にとりつかれた女たちを描いた異色ホラー?ですか?これは!
主人公たちは、美容整形にとりつかれている。
重度の整形依存ともいえる。
しかも、全員大変に不幸だ。
「美しくなりたい」ということに囚われすぎた末路は、
一線をこえた、なんでもありの別世界へ。
まさしく、オカルトです。面白く怖かった。
しかし、何を書いてもそつが無いですね、唯川さん。…7点。

「天に堕ちる」 唯川 恵読了!

2016年05月02日 16時11分15秒 | 作家 や行
天に堕ちる (集英社文庫) 2016.4.29読了。
唯川 恵 (著)

騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。


この本のどこかに書いてあった、「人間が持つ、明と暗、優しさと毒、幸福と恐怖。それらは隣り合わせにある。だから、人はほんのささいなことで足を滑らせてしまう。」本当に人生なんて、紙一重。それに、愛だとか幸福だとか、感じ方は人によって千差万別。この小説の主人公たちは、傍から見れば堕ちていくんだけど、タイトルが「天に堕ちる」だけあって、実は本人だけは、禁断、甘美な天国に堕ちて(?)いるのかもしれない。よくもまぁ、色々なタイプの穴に堕ちるストーリーを考えられるものだと感心してしまう。…7点。