ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「ZOO〈1〉」 乙一読了!

2016年10月21日 01時54分21秒 | 作家 あ行
ZOO〈1〉 (集英社文庫) 2016.10.20読了。
乙一 (著)

何なんだこれは!天才・乙一のジャンル分け不能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され…(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(「SEVEN ROOMS」)など、本書「1」には映画化された5編をセレクト。文庫版特別付録として、漫画家・古屋兎丸氏との対談も収録。



なんと、乙一さん、初読ですよ。「カザリとヨーコ」、「SEVEN ROOMS」、「SO-far そ・ふぁー」、「陽だまりの詩」、「ZOO」の5編からなる短編集。
「SEVEN ROOMS」を読んだとき、「なんだこれは!」と驚いた。どうやったらこんな話を思いつくんだ?「陽だまりの詩」では泣かされそうになるし。やっぱ、乙一さん、正真正銘天才ですよ。…8点。

「ふがいない僕は空を見た」 窪 美澄読了!

2016年10月18日 16時26分55秒 | 作家 か行
ふがいない僕は空を見た (新潮文庫) 2016.10.18読了。
窪 美澄 (著)

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R-18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。




「ミクマリ」、「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」、「2035年のオーガズム」、「セイタカアワダチソウの空」、「花粉・受粉」の5つの短編から構成される連作短篇集。
「セイタカアワダチソウの空」、「花粉・受粉」が秀逸。
生まれてくることの苦しみや、痛み、生きていくことの難しさ。それでもそれぞれの環境や立場を受け入れて生きていかなければならないんだよ。…6.5点。

「リング」 鈴木光司読了!

2016年10月12日 22時01分44秒 | 作家 さ行
リング (角川ホラー文庫)  2016.10.12読了。
鈴木 光司 (著)

同日の同時刻に苦悶と驚愕の表情を残して死亡した四人の少年少女。雑誌記者の浅川は姪の死に不審を抱き調査を始めた。―そしていま、浅川は一本のビデオテープを手にしている。少年たちは、これを見た一週間後に死亡している。浅川は、震える手でビデオをデッキに送り込む。期待と恐怖に顔を歪めながら。画面に光が入る。静かにビデオが始まった…。恐怖とともに、未知なる世界へと導くホラー小説の金字塔。



たしかに、面白い小説だけど、ホラー小説で全然怖くないというのはどうなんだろう?…6.5点。

「ケッヘル」〈上・下〉  中山可穂読了!

2016年10月05日 15時01分58秒 | 作家 な行
ケッヘル〈上・下〉 (文春文庫)  2016.10.4読了。
中山 可穂 (著)

その音楽は神のものか、悪魔のものか―カレーの海辺でひとりの熱狂的なモーツァルティアンと出会った伽椰は、情事の果ての長い逃亡生活に終止符を打ち、日本へと舞い戻った。そこで待っていたのは、ケッヘル番号を会員番号とする会員制旅行代理店の奇妙なツアーであり、依頼人の失踪に始まる恐るべき復讐劇の幕開きだった。
ウィーンからプラハ、マンハイム、ベルリンへと、モーツァルトゆかりの土地へアマデウス旅行社のツアーは続き、復讐は重ねられる。モーツァルトしか弾かない美貌のピアニストとの恋が伽椰を更なる悲劇のうねりに巻きこんでいくのだが―過去と現在、複雑に入り乱れた愛と憎しみが生み出した絶望に差しこんだ一筋の光とは。




大作ですが、連載されていたためか、後半に来て矛盾点やご都合的な解釈がでてくる。詰め込みすぎた感じや、無駄な説明など長文の小説にありがちな欠点もみられ、あれもこれもと話が薄まってゆく。ラストは「いいのか?それで」っていう結末ですし。サスペンスだからとか恋愛ものだからとかではなく、この作家さんならではの濃密な小説を読みたい。…6点。