ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「煙が目にしみる」 石川 渓月 読了!

2013年12月30日 18時29分25秒 | 作家 あ行
「煙が目にしみる」 (光文社文庫) 石川 渓月 (著) 2013.12.20読了 。

大人よ意地を張れ!
負け犬では終わらない、終われない。
ネオン街の片隅で起こった、タフでハートウォームな大反撃。

巨大歓楽街、福岡・中洲。バブル期はやくざ相手でも一歩も引かず地上げで鳴らしたが、今は長いものには巻かれてしまうさえない街金業者、その名も小金欣作(こがね・きんさく)。ある夜、彼は界隈を仕切る悪評高い暴力団に単身でつっかかってゆく少女を見て、ついつい助けてしまう。
その少女の向こう見ずさにかつての自分を思い出し、長くくすぶり続けていた男の心に再び火がつく。
「大人の正義、見せちゃるばい」──彼は仲間と共に知力体力根性愛情を駆使し、ネオン街を奔走する。
全選考委員がこの作品に好感。プラターズの名曲「煙が目にしみる」が鳴り響く、第14回日本ミステリー文学大賞新人賞作品。


ヤクザから見ず知らずの少女を助けて、自分の命まで危なくなる。どんな過去があるにしろふつう助けるかな? まあ、助けないとこの小説成り立たないんだけど。ちょっと強引な気が‥。
小金欣作(こがね きんさく)という主人公の名前もふざけてるし。
キャラクターとしてよかったのはバーのオカマ店主・メロン。この人の存在でまあおもしろく読めたようなもの。…6点。

「日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路」 深尾葉子 読了!

2013年12月20日 17時34分03秒 | 作家 は行
「日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路」 (講談社プラスアルファ新書) 深尾葉子 (著) 2013.12.20読了 。

大反響を巻き起こした『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』(講談社+α新書)の第二弾にして姉妹作!
タガメ女に箍めとられてカネと社会的リソースを搾取される「カエル男」たちが、日本の政治、経済を動かし、部下や下請け会社、取引先といった周囲の関係者を搾取の”倍返し”で支配するさまを、豊富なケーススタディをもとに紐解く。ビッグデータ、グローバル化がいかに進行しようとも、日本の男たちの「カエル男」的体質が変わらない限り、日本は失速し続け、ますます家庭生活は生きづらくなる構造矛盾を撃つ!!
箍にハメられ、カネと社会的リソースを「タガメ妻」にチューチューと吸い取られるカエル男が支配する日本社会の、「責任転嫁」「現実逃避」の病根が、目からウロコでよくわかる!!『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』の続篇。



実は、「タガメ女」の方も読んでいる。斜め読みだったが…。
今回、対になる「カエル男」の方も読んでみて、合点がいった。なるほどそういうことかと。日本の社会に蔓延し、日本を滅ぼしかねない「タガメ女」と「カエル男」! こいつらこんなに恐ろしげなやつらだったとは! こいつらに打ち勝つには、「ひとり、ひとりが、人間として搾取やぶら下がりをやめて、自分らしく生きていくことだそうだ」ほんとうにその通りだと思うが、難しいだろうなこりゃ。…7点。

「東京難民」(上・下) 福澤 徹三 読了!

2013年12月18日 10時53分12秒 | 作家 は行
「東京難民」(上・下) (光文社文庫) 福澤 徹三 (著) 2013.12.17読了 。

時枝修は、東京郊外にある私立大学の三年生。夏休み明けにクラス担任から告げられたのは、学費未納で除籍になるという寝耳に水の事実だった。北九州の実家では、借金を抱えた両親が失踪。貯金はないに等しい。アルバイトを転々とする中、家賃滞納で住居も追い出されてしまう。追いつめられる修。だが、それはまだ、底なしの貧困と孤独への入口に過ぎなかった―。
行き場を失った修は、ホストとして働く決意をする。大金が飛び交うきらびやかな世界。だが、そこは、男と女の色と欲がせめぎあう凄まじい格差社会だった。必死で自分の居場所を作ろうとする彼に、さらに大きなトラブルがふりかかる!流転を続ける修に、安住の地は見つかるのか?索漠とした大都会の底辺であがく若者の姿をリアルに描く、異色青春小説の傑作。

福澤/徹三
1962年福岡県生まれ。2000年、『幻日』(文庫版では『再生ボタン』と改題)でデビュー。磨き上げられた端正な文体で綴られた数々の作品で、ホラー作家としての確固とした地位を築く。アウトロー小説の書き手としての評価も高く、’08年には『すじぼり』で第10回大藪春彦賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


まあ、この主人公に感情移入できないことできないこと。
なんか、読んでいてイライラする。このムカつく主人公がどうやって人生、足を踏み外していくのか気になって気になって…。まんまとはまっていた。
なんか、「今、そこにある危機」って中国が攻めてくることでもなくて、大地震が起こることでもなく、こういうことじゃないのかと思ったよ。…8.5点。

「逃避行」 篠田 節子 読了!

2013年12月06日 02時33分27秒 | 作家 さ行
「逃避行」 (光文社文庫) 篠田 節子 (著) 2013.11.28読了 。

心の通い合わなくなった夫や子どもと暮らす50代の主婦、妙子。愛犬のポポはそんな彼女が唯一信頼できる大切な存在だ。ところがある日、そのポポが隣家の子どもをかみ殺してしまう。非は子どもにあるにも関わらず、世間体から犬を処分しようとする家族と決別して、妙子はポポを連れて家を出る。行く当てもなく頼れる人もいない、妙子とポポの逃避行がはじまった。


まあ、あの切なく、しかも思いもよらないラストは、してやられた。
陽春の、ため池のほとりで遊ぶ妙子とポポのシーンは美しく、悲しい。
美しい文章に胸が震えた。

なんともいえない、読後感に解説の最後の言葉が追い討ちをかける。

本書のタイトルは「逃避行」である。
妙子はポポと逃げ続けている。
しかし、彼女は逃げながら近づいて行くのである。
人として生まれてきて本当に大切なものは何なのか、ということに。
…9点。