ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「狼と兎のゲーム」 我孫子武丸読了!

2016年02月19日 19時52分53秒 | 作家 あ行
狼と兎のゲーム (講談社文庫) 2016.2.19読了。
我孫子 武丸 (著)
智樹のクラスメイトの心澄望は、警察官の父親から暴力を振るわれて傷が絶えない。夏休みのある日、勤務中の父親のパソコンを壊してしまったと怯える心澄望と智樹がこっそりと家に戻ると、弟の甲斐亜の死体を始末している父親の姿が。慌てて家を飛び出した二人は、迫り来る怪物から逃げ切ることができるか?




偶然に父親が弟を埋める穴を掘っているところを目撃してしまう心澄望と友人の智樹。
靴を手に持ち一目散に逃げる。
そこから、狼(警察官の父親)から逃げる命がけのゲームが始まる。
しかし、驚いた怪物だなこの親父。
しかも警察官って! 
凶暴な上に、超自己中、身勝手な被害妄想狂。
このキャラクターだけでも読む価値はあると思うが、
「殺戮に~」なんかと比べれば、ストーリーは薄いし、どんでん返しも平凡かな。
我孫子さんの小説としてはものたりない。…6点。

「13階段」 高野和明読了!

2016年02月17日 16時11分05秒 | 作家 た行
13階段 (文春文庫) 2016.2.17読了。
高野 和明 (著)

無実の死刑囚を救い出すために与えられた期限は三ヶ月、報酬は一千万円だった。不可能とも思える仕事を引き受けた二人の男に待ち受けていた運命とは―手に汗握る展開と、胸を打つ驚愕の結末。現代社会の罪と罰を問い、圧倒的なサスペンスで読書界を震撼させた江戸川乱歩賞受賞作。『十年ぶりの後書き』収録。




ストーリーも面白くひきずりこまれたし、最後のどんでん返しもイイ。
しかも、この小説には「死刑制度」という重いテーマがあり、人が人を裁き、そして、死に至らしめるとはどういうことか、考えながら読みすすめていくことになる。
そして、あまり脚光をあびない刑務官を主人公にしたことで、その仕事内容や、制度など興味深い事柄も多い。薬丸岳さんを小説執筆に導いた本らしい。面白いはずだ。ただどうしてもバイク事故の説明が不十分であると言っておくけど。…8点。

「陰の季節」 横山秀夫読了!

2016年02月11日 15時03分00秒 | 作家 や行
陰の季節 (文春文庫) 2016.2.11読了。
横山 秀夫 (著)

警察一家の要となる人事担当の二渡真治は、天下り先ポストに固執する大物OBの説得にあたる。にべもなく撥ねつけられた二渡が周囲を探るうち、ある未解決事件が浮かび上がってきた…。「まったく新しい警察小説の誕生!」と選考委員の激賞を浴びた第5回松本清張賞受賞作を表題作とするD県警シリーズ第1弾。




D県警シリーズの第1段。
ちなみに「64」はこのD県警シリーズの第4段ということになる。
人事を担当する部署から見た警察内部を描く。
よって、警察ではあるが、内勤の人間が主役とされる。
短編だが、それぞれの話に謎解きが用意されそして解決していく。
さすがに文章はこなれていて、ストーリー展開もそつがないが、
結局は、警察内部の「保身」に重点が置かれ、
読み手にとってはどうも感情移入しにくいんのではないだろうか?…6点。

「掏摸(スリ)」 中村文則読了!

2016年02月10日 16時02分29秒 | 作家 な行
掏摸(スリ) (河出文庫) 2016.2.10読了。
中村 文則 (著)

東京を仕事場にする天才スリ師。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」
----運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。
そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは……。大江健三郎賞受賞作にして、LAタイムズ文学賞候補作、アメリカ「ウォール・ストリート・ジャーナル」2012年ベスト10小説、アメリカ・Amazonのbest books of the month(March)に選ばれたベストセラーがついに文庫化。



中村文則さんの小説、初読みです。
文体に個性があり、雰囲気がある。うまいとは思わないが、人を惹きつける文章だ。
人の描き方も、薄く、曖昧な書き方で、人物造詣が足りないかと思ったが、突き放した感じで、ひょっとしてこれも著者の持ち味だろうか?
物語りも、細部の説明が足りず、読者の判断にゆだねるところが多く、荒っぽいし、雑なストーリー展開。
主人公がスリというのは、面白い。
あとは、もうこの著者の文体の魅力に尽きる。荒削りだが魅力的。…7点。
他の作品も読んでみたいと思わせる作家さん。

「隠蔽捜査」 今野 敏 読了!

2016年02月08日 16時02分25秒 | 作家 か行
隠蔽捜査 (新潮文庫) 2016.2.6読了。
今野 敏 (著)

竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は〈変人〉という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。




なんでか、今野敏さん初読みなんです。
主人公は、東大出のエリート警察官僚である。
前半、この主人公の変人としての人となりに終始する。
中盤、殺人事件が起こり物語は展開していくが、
主人公は警察庁長官官房の総務課長なので、マスコミ対応とか独特の警察組織の内部調整が描かれるが、殺人事件の現場がどうのとか、死体がどうした、捜査がどうのとか、事件の真相がどうのという、普通の警察小説としての読ませどころは一切でてこない。
隠蔽工作に出る警察組織に対し、特権を与えられているエリートはそれゆえに国民に対し重い責務を負うという主義を一貫してつらぬく主人公はすべてに原理原則で向きあい、正義を全うしようと隠蔽に反対し、組織と対立する。
読んだことのないキャリア官僚を主人公に据えた異色警察官僚小説だ。…6点。

「ジェノサイド」 上・下  高野和明読了!

2016年02月02日 21時44分06秒 | 作家 た行
ジェノサイド 上・下 (角川文庫) 2016.2.2読了。
高野 和明 (著)

イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!




人の進化、創薬、湾岸戦争の背景、軍需産業とアメリカの政治、米国国家安全保障局のはなし、エシュロンのこと、子ども兵のはなし、日本人の人種差別に至るまで、いろんな話を織り込み、壮大なスケールで書かれたエンタテインメント小説。
いったいどれ程の取材や、資料を読まれて書いたのか? こんな小説、そうそう書けるもんじゃないよな。
エンタテインメント小説として最高に面白い、だが単に面白いだけでなく、その背後には、人間はなぜ互いに殺戮しあう? はたして人間は存続に値する生き物なのだろうか? 
本書は読者に投げかけてくるのだ。
すごいもん、読んじゃったー。最高に面白く、そして、心に残る傑作。…9.5点。