ドンドンこにしの備忘録

個人的な備忘録です。他意はありません。

「僕のなかの壊れていない部分」 白石一文

2024年03月22日 17時28分04秒 | 作家 さ行
僕のなかの壊れていない部分  文春文庫 2024.3
白石 一文 (著)

美しい恋人・枝里子をサプライズで京都に誘った。それは、
昔の男が住む京都で枝里子の反応を見ようという悪意だった――。
東大卒出版社勤務、驚異的な記憶力を持つ「僕」は、同時に
3人の女性と関係を持ちながら、誰とも深いつながりを
結ぼうとしない。その「理屈っぽく嫌味な」言動の奥にあるのは、
絶望なのか渇望なのか。彼の特異な過去を知った枝里子は。
「自分の人生にとって本質的なことからは決して逃れられない」



きっと、読む人を選ぶ。でも傑作。8点。

「ブレイン・ドレイン」 関俊介

2022年11月11日 17時34分15秒 | 作家 さ行
ブレイン・ドレイン (光文社文庫) 2022.11.9読了。
関 俊介 (著)

舞台は“邪悪”な“欠落者”と判定された人間を隔離する人工島。特異な能力を持つBDことセイもその一人だ。だが彼は自分が欠落者ではないことを知っている。なんとしても島を出たいセイに、密命が持ち込まれた。報酬は破格、恩赦で島を出られる可能性もある――。セイは自身が欠落者でないことを証すため、命がけのミッションに挑む。怒濤のエンタメ巨編!!



設定だけで、ひねりも、どんでん返しもなく、あらすじのまますすむ。そして予想通りのラストへ。あらすじを見て最初に期待したほど盛り上がらなかった。4点。

「さあ、地獄へ堕ちよう」 菅原和也

2022年10月12日 14時17分02秒 | 作家 さ行
さあ、地獄へ堕ちよう (角川文庫) 2022.10.12読了。
菅原 和也 (著)

SMバーでM嬢として働くミチは薬とアルコール漬けの日々を送っていた。だが、幼馴染のタミーとの再会からミチの日常が変容していく。タミーが関わっているという残虐な死体写真が集められた“地獄へ堕ちよう”という裏サイトの存在。さらに自らにおぞましいほどの身体改造を求める、店の同僚リスト。出口のない欲望が絡み合い、凄惨な事件が起こる―。最年少で第32回横溝正史ミステリ大賞を受賞した衝撃の暗黒青春ミステリ。



主人公が住んでいるアパートがありえない。何があっても通報しない、苦情も出ない。だれも住んでいないという想定なのか?そんなわけないだろ。他にもありえないこと多々。警察も無能すぎるし。このグロい小説のラストシーンが爽やかでなんだかなぁという感じ。5点。

「Ank : a mirroring ape」 佐藤究

2022年05月24日 19時53分35秒 | 作家 さ行
Ank : a mirroring ape (講談社文庫) 2022.5.22読了。
佐藤究 (著)

2026年、京都で大暴動が起きる。「京都暴動=キョート・ライオット」だ。人々は自分の目の前にいる人間を殺し合い、未曽有の大惨劇が繰り広げられた。事件の発端になったのは、「鏡=アンク」という名のたった1頭のチンパンジーだった。霊長類研究施設に勤める研究者・鈴木望は、世界に広がらんとする災厄にたった1人で立ち向かった……。



650頁の厚さですがほぼ一気読みでした。そうだったんですけど、ただ、どうしてもチンパンジーが発する警戒音を聞くと、チンパンジー同士、人間同士が殺戮を始めるということが納得できなかった。チンパンジーだけならまだいいんだけど、なぜ、人間まで? この点は説得力がない。これが納得できないので、小説自体の面白さが半減してしまった感じ。6点。

「QJKJQ」 佐藤究

2022年05月03日 18時11分35秒 | 作家 さ行
QJKJQ (講談社文庫) 2022.5.3読了。
佐藤究 (著)

女子高生の市野亜李亜は、猟奇殺人鬼の一家で生まれ育った。父は血を抜いて人を殺し、母は撲殺、兄は噛みついて失血させ、亜李亜はスタッグナイフで刺し殺す。それでも、猟奇殺人の秘密をお互いに共有しながら、郊外の家でひっそりと暮らしていた。ところがある日、兄が部屋で殺されているのを亜李亜は発見する。もちろん警察は呼べない。そして翌日には母がいなくなった。亜李亜は残った父親に疑いの目を向けるが……。



最後まで、タイトルの意味がイマイチわからなかった。スピード感のある文章(主人公が行動している時など)と説明臭い停滞する文章(父親との会話など)の交互の出現で期待していた疾走感はイマイチ。だが、主人公のキャラよりも、くどい説明が好きな父(仮)のキャラクターが好きかもしれない。最後に書いてあった、「母親は絶対に確かだが、父親はつねに不確かだ」という一文がなぜか刺さった。6点。

「テスカトリポカ」 佐藤 究

2022年04月14日 20時22分57秒 | 作家 さ行
テスカトリポカ ハードカバー 2022.4.14読了。
佐藤 究 (著)

第165回直木賞受賞! 鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元! メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。



登場人物の運命が絡まり物語がすすんでいく。これは運命か偶然か神の手引きか? 一体何なんだーとか(小声で)叫びながら読んだ。読んでいる間、旅に出ているような、夢の中にいるような、凄まじい没入感に浸って出てこれない。というより出ていきたくなくなる。この感じはずっと昔に読んで衝撃を受けた垣根涼介さんの「ワイルド・ソウル」以来だ。稀にしか体験できない素晴らしい時間を過ごさせてもらった。クライム小説にアステカの神話を絡めたところが肝だねぇ~。重くて厚い(550頁超)ハードカバーを毎日持ち歩いても少しも苦にならなかった(嘘)。9点。

「正体」 染井為人

2022年04月01日 13時12分13秒 | 作家 さ行
正体  光文社文庫 2022.3.31読了。
染井為人 (著)

罪もない一家を惨殺した死刑囚はなぜ脱獄したのか!?
その488日を追うミステリー!
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!



なになにどうなるの?最初から一気に没入。ページをめくる手が止められない状態。だが、後半に入ると大体話が見えてくるような。ここからは、いやなラストしか思い描けず、急に読み進めたくなくなる。なんとか最後まで読み切りやはり憤慨。この気持ちをどこにぶつければよいのやら。7点。(ハッピーエンドにしていてくれたら自分的には9点だし、ぜひ再読リストに入れたい)

「冬の光」篠田節子 読了!

2019年11月28日 15時01分36秒 | 作家 さ行
冬の光 (文春文庫) 2019.11.27読了。
篠田 節子 (著)

四国遍路を終えた帰路、冬の海に消えた父。高度成長期の企業戦士として、専業主婦の妻に守られた家庭人として、幸せなはずの人生だった。死の間際に想ったのは愛した女なのか、それとも―四国で父の足跡を辿った次女の碧は、ある事実を知る。家族、男女関係の先に横たわる人間存在の危うさを炙り出した傑作長編。




「幸せだと思っていた人生が幸せではなかったと気づいたとき」なんかこの小説を読んでとっさに思ったこと。。。

四国遍路を終え、東京に戻る途中に父が死んだ。なぜ死んだのか? 自殺なのか、事故なのか? 次女碧の視点で謎が解かれていくのだろうか? 
出だしはそんな感じ。

でも、篠田さんの小説がそんなウスッペラなミステリーなんかでおさまる訳がないことを、、、
主題は家族かな? でもなんだろそんなんじゃおさまらなくて、その他、壮大なテーマと難題を次々に突きつけられてウッってなる。読んでて苦しい場面も多々。どっぷりとこの小説に浸らせていただきました。
そしてなんか考えちゃたよ。しあわせってなんだ? 人生って? そもそも生きるって? 家族とは? 仕事とは? ほんといつも篠田さんの小説は読みながら、読み終わってから、考えさせられちゃうんだよね。ほんと読者冥利に尽きます。

自分は(ホントのラスト以外)面白かったけど要は主人公に感情移入できるかどうかだと思うんだよね。そこで、読む人によって評価が分かれると思うんだ。一番共感できるのが、私のような中年以上の男性なんだろうな。それでもラストがちょっと納得いかないなぁー(しつこい)。…7点。

「溝鼠 最終章」新堂冬樹 読了!

2019年11月19日 18時39分36秒 | 作家 さ行
溝鼠 最終章 (徳間文庫) 2019.11.19読了。
新堂 冬樹 (著)

妓息、卑怯、下劣、守銭奴、悪魔…どんな罵倒もこの男の前では褒め言葉に過ぎない。信じられるのはカネと自分だけ。そのためには実父の息の根を止め、姉すら見殺しにした。溝鼠と呼ばれる男の名は鷹場英一。そんな英一の命を狙う男が現れた。腹違いの弟・慎吾だ。父の仇を討つため、慎吾は英一をハメる。英一は助っ人を呼んで対抗。四転五転する二人の形勢。最後に生き残ったのは!?



いやー、久々に溝鼠シリーズ読んだけど、笑っちゃうね、グロくて。なるべく頭で情景を思い浮かべないようにして読んだよ。気分悪くなるんだもん(同時にニヤけてたけど)。
こんぐらい、変態しか出てこない小説ってやっぱ新堂さんのだけだわ。まあハナからストーリーなんかどうでもいいけど、読み終わった途端忘れちゃったよ。たしか、、、たぶん、、、それなりに面白かったけど(自信なし)。しかも人にはすすめられないたぐいのもんだしね。…6点。

「また、同じ夢を見ていた」 住野よる 読了!

2019年02月07日 15時10分58秒 | 作家 さ行
また、同じ夢を見ていた (双葉文庫) 2019.2.6読了。
住野 よる (著)

「人生とは和風の朝ごはんみたいなものなのよ」小柳奈ノ花は「人生とは~」が口癖のちょっとおませな女の子。ある日、彼女は草むらで一匹の猫に出会う。そしてその出会いは、とても格好いい“アバズレさん”、手首に傷がある“南さん”といった、様々な過去を持つ女性たちとの不思議な出会いに繋がっていき―。大ベストセラー青春小説『君の膵臓をたべたい』の住野よるが贈る、幸せを探す物語。



『君の膵臓をたべたい』よりもファンタジー色がつよく、それとくらべれば、見劣りする。いいお話なんだけど、ぼちぼちと物足りない。…5点。