DJみならいのモデルガンブログ

20年近くだらだらと書いています。モデルガン、自転車などの記録。

MGC ルガーP08 アーティーラリー(過去記事リメイク)

2024-09-14 18:03:59 | ・MGC ルガーP08

 実銃は19世紀末に誕生し、1908年から1938年までドイツ軍に採用された軍用銃です。ショートリコイルは独特のトグルロック方式を採用しており、その先祖は Hiram Stevens Maxim が1885年に開発したマキシム・マシンガンに遡ります。トグルロックが誰の発明かは分かりませんが、初めて銃器に応用したのはアメリカ人の H.S.Maxim であり、それをハンドガンに持ち込んだのはドイツ人の Hugo Borchardt  でした。H.Borchardt はドイツのルードウィグ・ローベ社にコンサルタントとして雇われ、1890年までにいくつかの銃を試作。1893年、最初に量産されたオート・ピストルである口径7.65ミリのC93を設計します。これが所謂ボーチャード・ピストルです。

 一方、P08の設計者である Georg Johann Luger は1891年頃からローベ社でデザイナーとして勤務しており、H.Borchardt と同じプロジェクトグループに加わったことで、P08より先に7.65ミリ・ボーチャード弾を設計したと言われています。1896年、モーゼル社が完成度で勝るC96の生産を開始すると、G.Luger はボーチャード・ピストルに大幅な改良を加え、1898年にボーチャード弾を短縮した7.65x21ミリ弾を使う新型のピストルを設計しました。1900年にスイス軍がそれを正式採用。1901年に9×19ミリ弾を、1902年にそれに対応した口径のピストルを開発した後、いくつかの改良を経て、1908年にドイツ軍に採用されたモデルをP08と呼ぶようになりました。

 さて、MGCの金属モデルガンは1966年に発売されました。1960年代後半から1968年にかけてはアメリカのテレビドラマを発端とするミリタリーブームでしたが、モデルガンにとってはMGC製ブローニング380の販売方法を巡ってMGCと販売店側が対立していた時期でした。

 1965年の7月、MGCはブローニングの販売を18歳以上に限るとともに、「購入誓約書」に住所を記入し署名する”新しい購入制度”(『MGCをつくった男』20頁より)を発表します。このブローニングは、1964年の日本における海外旅行の解禁に伴い、MGCがアメリカとヨーロッパへ取材旅行に行った後の第1号モデルガンであり、今までにないリアルなモデルガンを販売するための積極的な犯罪防止策として、MGCはユーザー登録制を導入したのです。

 販売店側はモデルガンが売れなくなることを懸念し反発しますが、8月にはMGCが販売店の集まるアメ横に直営店「BONDSHOP」を設置。”新しい購入制度”を受け入れない販売店にはブローニングを卸さず「BONDSHOP」で直販する体制を整えます。その後、MGCの下請け金型業者がブローニングの金型をもう1つ作り販売店側に流したことで対立が激化。11月、販売店側は日本高級玩具小売組合=NKGを組織し、ブローニングを含む全てのMGC製品の取り扱いを中止、新製品多数の一斉販売を告知しました。

 新製品と言いつつMGC製品をコピーするメーカーがある中、中田商店はルガーP08(メーカー表記はハイフンの入ったP-08)、江原商店=CMCはコルト・ガバメントを独自に設計、いずれも1966年に発売します。中田のルガーは当初1965年の7月発売とアナウンスされましたが、数度の延期を経て、後から発表されたCMCのガバメントより発売が遅れた経緯があります。中田のルガーは当時一般的だった疑似ブローバックであるスライドアクション(タニオアクション)でしたが、CMCのガバメントは実銃どおりの構造と操作を実現するため、あえて無発火モデルとして企画、設計されました。これが所謂CMCの1型ガバメントです。

 対するMGCもCMCに続き1966年にガバメントを発売します。こちらは発火モデル且つ輸出を前提にしており、内部構造は実銃と異なるようアレンジされていました。無発火だがリアルな構造のCMC、発火モデルで構造はオリジナルのMGCという対極のガバメントが出揃うのですが、MGCのガバメントは、ブローニングより前の海外取材に基づかないモデルガンに比べて圧倒的にリアルな外観を持ち、発火モデルを求めるユーザーのニーズにマッチしていたことから人気が上昇。CMCは翌1967年にガバメントを発火モデルに変更し(2型ガバメント)後を追うことになりました。

 ここまでがこの記事の前置きです(笑) 過去記事も貼っておきますが、こちらのほうが遥かに詳しく書いているので、読むのはリメイク版だけで大丈夫です(苦笑)

 

・MGC ルガーP08:_1 https://blog.goo.ne.jp/downstairs4/e/5227d38ed8d4e09d2158646b3c718c68

・MGC ルガーP08:_2 https://blog.goo.ne.jp/downstairs4/e/4d0eab9b080212b91fc47afa2b199fd5

・MGC ルガーP08:_3 https://blog.goo.ne.jp/downstairs4/e/38ccb1224307e9217d2853d7d195a743

 

 続きを書きます。このガバメントから始まる”世界的な有名銃”(『MGCをつくった男』20頁より)のモデルガンは「ダイナミックモデルガンシリーズ」と名付けられ販売されました。管理人調べではシリーズがどこからどこまでと決まってはいないのですが、いくつかの資料を見る限り、第1弾はガバメント、第2弾はコマンダー、第3弾はルガーP08(4インチ)、第4弾はワルサーP38アンクルタイプだったと理解しています。おそらく第5弾はベレッタM1934(スタンダード)で、その続きははっきりしません。

 紹介するP08の製造時期は刻印からして1978年だと思われます。1966年に出たのは4インチであり、6インチと8インチは『MGCをつくった男』掲載の年表によれば翌67年発売だったようです。それ以前に8インチは1963年公開の映画「太陽への脱出」撮影のために貸し出されており、これはMGCが日活撮影所から協力を求められて製作したもので、他にもトンプソンやMP40が市販品より先に登場します。ストック付き12インチのルガーカービンは1971年の最後発になり、同年にはモーゼルカービンも発売されました。

 現在の中古相場は、ざっくりですが完品で2万円程度。ミントコンディションなら倍ほど跳ね上がることもあるようで、中でもルガーカービンは別格で高いです(感覚的には5万以上)

 外箱について、4インチは黒色の紙箱で左上にP-08と大きく印字されています。6インチと8インチは輸出用と同じものと思われる白い箱です。ルガーカービンの箱はさらに大きく、本体をスチロール箱に入れてからダンボールの外箱に収納します。

 本体について、上下レシーバーなど主要パーツは亜鉛合金です。この個体は1971年と77年のモデルガン規制に対応しており、全体に金めっきがかけられ、銃口が閉塞されたうえでsmgマークが打たれています。バレルはレシーバーと一体で、根元にガス抜けの穴が開いています。亜鉛合金のタンジェントサイトはこの8インチとルガーカービンだけの仕様です。セフティレバーはライブですがクリック感はありません。セフティオンでせり上がるスチールのプレートには SAFE と刻印されています。

 P08の特徴であるトグルは、実銃どおりブリーチブロック、センタートグルリンク、リアトグルリンクの3パーツに分かれています。エジェクターとファイヤリングプレートはスチール、エキストラクターは亜鉛合金製。センタートグルリンクは、実銃ではDWM(Deutsche Waffen und Munitions Fabriken/ドイツ武器弾薬製造社)の花文字が入りますが、この個体はMGCの文字が打刻されています。

 MGCの金属ルガーは一般的なDWMでなく、モーゼル社が1942年に生産した希少な軍用モデルを再現しています。これはアメリカでモデルガンを販売するRMI社の社長の希望によるもので、他の特徴としては、グリップパネルに細い縁取りがあること、フレーム左面に P.08 の刻印があること(刻印はMGC金属では初期生産分のみ再現)などが挙げられます。

 トグルの引きはモデルガンらしい重さです。トリガーは引きしろが短く、シアはパチンと気持ちよく切れます。MGCの金属ルガーは実銃で言うブリーチブロックストッパー(ホールドオープンラッチ)が省略されており、マガジンを抜くとトグルが前進してしまいます。ここはロストワックスのハードスチール製のものが別売されていたほか、カップリングリンク、リコイルスプリングジョイント、エキストラクター、ファイヤリングブロックもハードスチールのオプションが用意されていました。

 このオプションは将来的なブローバック化を見込んでいたためですが、モデルガンの法規制により ”拳銃タイプの金属モデルガンは銃口が閉塞されることになり、大きなハンディキャップを負った。発火モデルとしてはそれ以上の発展が望めなくなってしまった”(『月刊Gun2004年7月号』163頁より) ことから、ハードスチールパーツを標準装備したP08・金属ブローバックの発売は最後まで叶いませんでした。なお、木ストが2種類、メタルストック1種類、サイレンサー、スコープマウント、革のホルスター、そして32連発のスネイルマガジンと、オプションが多いのもこのモデルガンの特徴です。

 シングルカアラムのマガジンは装弾数8発。ケースはスチール、ボトムは亜鉛合金です。ボトムを固定するピンは右がやや太く、抜く時は反対側から押し出す必要があります。カートはスタンダード(手動排莢)なので先端に火薬を詰めるスペースがあるだけです。管理人の入手時は紙箱のカートが12発付属していましたが、当時の広告では、1967年1月1日からダイナミックシリーズは薬莢(カート)を別扱いする旨の記載があります。

 P08の金属モデルガンは、1987年にACGのゲーリングルガー、1990年にマルシン、そして2014年にZEKEから真鍮の決定版が発売されています。どれも素晴らしい出来ですが、年代を考えればMGCの金属も負けないくらいの名作です。管理人はP08の無可動も触りましたが、ダレダレのエッジを見てMGCのほうが格好良いと思い、無可動を買わずに済んでいます(笑)

 

参考

・月刊Gun1981年4月号 ガンのメカニズム10 ルガーP08ピストル

・月刊Gun1987年5月号 ルガー・ピストル 8インチ砲兵モデル

・月刊Gun2003年10月号 モデルガン名鑑Vol.13 MGC ワルサーP38ミリタリー

・月刊Gun2003年12月号 モデルガン名鑑Vol.15 CMC製 コルト・ガバーメント45

・月刊Gun2004年7月号 モデルガン名鑑Vol.22 MGC製 ルガー P-08

・月刊Gun2005年5月号 モデルガン名鑑Vol.32 MGC製 BROWNING 380

・月刊Gun2006年3月号 モデルガン名鑑Vol.42 中田製 ルガー P-08



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