緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

妻と夫

2007年03月15日 | 医療

以前にも書いたことがありましたが・・
とても、家に帰りたい患者さん
絶対家に帰ってきてほしくない妻
・・と、いう熟年ご夫婦に
このところ出会うことが多くなっています。

+++++++++++++++++++
お元気でしたか?
ここをクリックお願いします。
ブログランキング「緩和ケア医の日々所感」のクリックでもどってきます。
+++++++++++++++++++

そんな時、患者さんである夫が一言
「今まで苦労かけたねえ。ありがとう」
「暫くでいいから、力を貸してくれないか・・」
何て、言ってくれるといいのに・・
と思うことがあります。

家族の関係は私達が関わる前からの長い歴史があります。
その歴史のまま続いていくしかないのだろうと思います。


次の句は、私の大切な友人のご主人の作品です。
友人は暫く入院生活を余儀なくされていました。

秋の妻数かぎりなき人の中 尚毅

この句を読んだとき
ある映像が思い浮かんできました。

かなり以前のコマーシャルですが・・
サラリーマン風の唐沢寿明が
街の中の交差点でわたろうとする妻を見かけます。
信号が変わり
一斉にわたり始める雑踏に
妻が押されるのを見て
あっという表情をしますが
妻は雑踏の中に流れていきます。
遠くで見守ってくれる
夫の優しさを感じ、好きなCMでした。

この友人のご主人の句は
俳句研究の俳句時評に掲載されています。
その抜粋ですが
『・・・「秋の妻」ということばの、なんと静かに寂しいことか。人は誰も「数かぎりない人の中」のひとりでしかないが、生活を共にし、存在が確実であった「妻」が群集に紛れてしまうと、その存在が必ずしも確実ではないことを思い知らされる。その「数かぎりない中から、見失わないように「妻」を引き戻さねばならない。・・」(俳句研究3月号 俳句時評 井上弘美 p.200 前後略し、原文のまま)

病を抱える友人を支えるご主人のその繊細な心に
何とも言葉にできない切なさと優しさを覚えました。

でも、みごとに春の妻は目の前に戻ってきています!

+++++++++++++++++++++++++++
ここ、クリックお願いします。人気ブログランキング参加中です。
今日も、お付き合いくださりありがとう。明日も、来て下さいね。
+++++++++++++++++++++++++++

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 長男が焼いたクッキー | トップ | 足音からシマウマ »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『踏み絵』で考えました (haru)
2007-03-16 04:22:32
3月6日のコメントに対するお返事、ありがとうございました。そして、数日前から何度か登場する『踏み絵』という言葉。色々考えさせられました。
そう、私たち医療従事者は、(特に人の生死に直接立ち会う医師・看護師は)学生の間にいくつもの『踏み絵』を踏み、それでもこの仕事を選び、免許を取り、臨床で働いている。そして、日々働く中で、いくつもの『踏み絵』を踏みながら、尚この仕事に従事している。なぜか?
どの医師にも看護師にも、他の医療従事者にも、心の根底には医の心があるはず。同じ思いで患者さんに関わっているはず。今後は、そう信じて、医師との関わりを持っていこうと考えさせられました。
ありがとうございました。
返信する
我が主人は・・・。 (ぴょん)
2007-03-16 20:09:49
我が主人は・・・。
「家に帰りたくない!!」と、口を開けば申しておりました。
何だよ~~!!!でありました。
まぁ、癌性腹膜炎による腸閉塞になってからは、「いつお腹が痛くなるか解らなくて、家に帰るのは、怖い!!」と言うのが主な理由でしたが・・・・。
再発してから、怖くて怖くて、家に帰りたくない人でした。
家に帰すの、必死でしたっけ。
こんな患者、珍しかったと思います。
返信する
Unknown (aruga)
2007-03-16 22:58:25
haruさん、ありがとう。とても嬉しかったです。
(PS:踏み絵は踏まず、乗り越えています~)
ぴょんさん、国はがんで在宅で亡くなる人を今の5%から40%にしようとしています。無理・・
返信する
私も無理だと思います。 (ぴょん)
2007-03-17 09:23:07
私も無理だと思います。
我が主人の場合は、本人が家に帰りたくないと、必死に申しましたが、それ以外にも、家で過ごすには、非常に難儀な状態になりましたので(食事が摂れず、胃瘻はしているし、痛み止めは、24時間、状況にあわせて、増減していましたし、譫妄は凄いし・・・。)
家にいられる状況ではなかったように思われます。
患者さん・ご家族の想いと、病状を診ての判断になると思いますので、国が、在宅が何割とかって決めるのは、難しいと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事