昔、滑膜の炎症をテーマに研究をしていた時、
炎症があるところには、至るところに発現しているものがありました。
ヒートショックプロテインだとか
ユビキチンだとか
グルコサミノグリカンだとか・・
その名残もあって、
緩和医療をやっているものには珍しく
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)へのこだわりは
自覚していました。
その次に、テーマとしていたのが、腫瘍免疫。
最近、ユビキタスってよく耳にするようになりました。
もともとは、ラテン語由来の英単語ubiquitous
至るところにある
存在する
遍在する
などという意味です。
ユビキタス社会などというと、
どこでもコンピューターネットワークなどに繋がり、
様々なサービスが受けられることをさしています。
このユビキタスの前駆体的な言葉でもあるユビキチン。
ユビキチンは、80個位のアミノ酸からなり、
進化の過程で普遍的に存在する
ーつまり、原始的な細胞にも
進化した細胞にも
共通して存在するようなものです。
排除したいタンパクにくっついていき、
それを細胞内の掃除工場のプロテオソームに運び
分解させちゃうのです。
つまり、どこにでもあって、上手く作れなかった蛋白のお掃除屋さん。
で、特に必要ないときは、悪いこともなく、ひっそりと存在しています。
一方で、このユビキチン
CD8T細胞への抗原提示にも関わっています。
CD8とは、キラーT細胞とも言われるがん細胞を攻撃するリンパ球です。
がん細胞を、リンパ球が認識するのをサポートするわけです。
こんな風に考えてみたとき
緩和ケアって
どこにでもあって、
普通は存在を意識させないようなもので
いざ、必要となったら手の届くところにある・・
これ、理想だなあって思います。
今のユビキタスは、PCやIT関連用語化してしまったので、
機械的なイメージがつよく
ユビキタス パリアティブ ケアって
抵抗感が強かったのですが
ユビキチンのことを思い出して、
まさに、細胞レベルでがんに向き合っている状況でのユビキチンと
癌治療の中の緩和ケアと比べた時に
ああ・・ユビキチンでありたいなあと思ったのでした。
つまり、普段は空気の様な存在で、
でも、細胞に普遍的な
(医療には共通して存在し)
がん細胞を、宿主Tリンパ球が攻撃するきっかけ作りをし
(がん治療のサポートとして、治療がうまく進んでいく基盤整備の役割をもち)
標的タンパクの掃除屋で、細胞内環境を保ち
(癌治療の副作用対策や心理支援、疼痛治療に関わりQOLを維持し)
必要な時に役立ててもらう存在。
ユビキチン的緩和ケア医でありたいなあ・・・と
今日、取材を受けていて、
今まで考えてもいなかったことが
閃いたのでした・・
基礎研究、懐かしい・・です。
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確かに、”緩和ケアの普及”はよく見たり耳にしたりしますが、漠然とした言葉ですね。緩和ケアに携わる医師、関連の薄い分野の医師、患者さん、健康な人、みんながそれぞれ違う意味で捉えていそうな気がします。実際、家族のケアも含めたとても広くて深い分野だなと思います。
私はこの分野に携わる時、自分が情緒的になりがちだなと思っていました。先生はいつも、温かくてかつ科学的な視点を忘れていらっしゃらないので、すごいなと思います。
年末の問いに早くも扉が開きかけた感じですね。寅年は、年初に宣言するといいそうです!
私もアレと、コレを、がんばろー
分子生物的な作用機序となると、こうはいきませんものね。
臨床をやりながら論文も読んでいる・・取り組んでいらっしゃいますね。
刺激を頂きながら・・・よい一年となりますように!