㊶ アキレス腱つながった
森進一の娘をはねた
さらに降り注ぐ大雨の中、直ぐに車を止めて、横断歩道上にうずくまる人影を見つける。「大丈夫ですか。?」制服を着た女の子だ。
私の声に反応はない。
何度も何度も声をかけるうちその子も私もずぶ濡れだ。たちまち交差点は渋滞になり、そこかしこから、「こらっ!」「すぐに病院に運ばないか。」「警察を呼べ。」「馬鹿野郎!」「・・・・。」罵声の嵐だ。
歩道上にいたおばさんが女の子に声をかけて、ようやく反応があった。
女の子は震えている。おばさんが、「恐ろしくて震えているんや、あんた!すぐに病院に運びなさいよ、逃げたらあかんよ!」逃げるはずないやろ!と思いながら女の子を抱き起そうとするが首を横に振るばかり。
仕方なく、おばさんに「一緒に私の車に乗せてあげてくれませんか?」ようやく乗せてもらってそのままおばさんも乗り込んできた。「あんた、すぐ病院に行かなあかんよ!」その間も周囲では、罵声の嵐が続く。「こら!逃げるなよ。」の声を聴きながら、震える女の子とおばさんを乗せて、烏丸通を南下し丸太町の交差点で交番所を見つけた。
駆け込んで事情を説明、すぐに赤十字病院に行くように指示された。巡査が、「病院で待ってろよ、逃げるなよ。」逃げるものか!
病院へ向かう間、「あんたこんなことしてタダでは済まんよ!」「どこの会社の人や?」おばさんの罵声が間断なく続いた。
病院に着くとすでに連絡があったのだろう、すぐにスタッフが来て、ストレッチャーに乗せられた女の子は、処置室に・・・。
その扉が閉まり、赤いランプが「処置中」と点灯した。
その瞬間、自分は犯罪者になったのだと実感させられた。横で身分不明のおばさんが、「あんた、逃げたらあかんよ!」
お前も車で、はねたろうか? そして、森進一の登場。 続く