アチャコちゃんの京都日誌

あちゃこが巡る京都の古刹巡礼

㊻  アチャコの京都日誌  森進一の娘はねた  謎のオバハン再び現る 

2017-05-04 10:05:27 | 日記



㊻ アキレス腱つながった

 

 決心して、玄関の老人の救済に向かった。

 

玄関の戸を開けようと、「開けますよ、開けますよ。大丈夫ですか?」ガタビシ・ガタビシ・・・・・・・。なかなか開けられない。

老人が戸にもたれかかっているので、なかなか開けられない。満身の力を込めてやっと開いた。たちまち姿を現したご老人が、なんと力なく私にもたれかかって来た。と、言うより、支えが無くなって倒れて来たのだ。

土色の顔色のご老人は、どのようにしてここまでたどり着いたのか。枯れ木のように倒れかかっている。従って私は、抜き差しならない体勢に追い込まれた。ご老人は案外重いのだ。押せば向こうに倒れる。引けば一層もたれてくる。ご老人の足が動かないので私一人では移動すらできなくなった。強烈な加齢臭が襲う。

向こうの方で、「何やっているんだ。時間がないぞ。」支店長の怒りの声が聞こえる。私は非情なる決断をせざるを得なくなった。

 

ご老人と私の間に再び戸を戻すことにした。前後のバランスだけ保ち、戸をその間に引き戻し再びすりガラスの向こう側にご老人の身を委ねさせた。そうっと身を引いて振り返ると、すりガラスの曇りが、ご老人の生命の証拠かのように見えた。それがせめてもの慰めだった。

 

 アポイント時間を20分近く遅刻したが、女の子は早くも包帯を外していて、ほほの傷は痛々しいものの、跡は残らないとの事。森進一先生ご夫婦も、むしろ恐縮していた。

良かった。何とか済んだ。

 しかし、怒り心頭の支店長は、機嫌が悪い。何とかお見舞いを済ませて車で帰る時、例の家の前には救急車が止まっていた。ご老人はどうなったのだろう。

しかも、野次馬の中に見つけた。あの、オバはん。

なんで?なんでいるの?   

この項終了。

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㊺ アチャコの京都日誌 森進一の娘  はねた  ⑤

2017-05-04 09:23:49 | 日記

「老人イラスト」の画像検索結果

㊺ アキレス腱つながった

 

 真夜中、事故の瞬間が何度も夢に出てきた。明け方の夢は最悪だった。被害者が例のオバハンだ。急ブレーキも間に合わず完全にはねた、タイヤの跡も鮮明にひき殺していた。オバハンが、血みどろの顔を私に向けて笑っている顔を見た時、「ギャーっ!」目が覚めた。

オバハンはどうなっても良いが、被害者がやくざの関係者とかだったら完全に人生終わっていたなぁなどと、色々なことが頭をよぎった。

 

 出社後、副支店長にシコタマ説教された。副支店長は営業経験のない、人情味が全くない人で、ねちねち1時間の説教は、昨日の警官の調書よりこたえた。

午後は、支店長に随行してもらっての被害者へのお見舞いだ。支店長は営業経験豊富な人情家だ。「心配するな、わしがちゃんと謝ってあげるから。」「相手さんの住所しっかり調べておけよ。」こんな感じで、頼りになる。さすがに役員の支店長だ。

十分に調べたうえ、黒塗りの支店長車に乗り込む。

 

 ところが、なかなか住所に当たる家が見つからない。まさか相手様に電話で聞くのも憚れるし、だんだん支店長の顔色も不安気だ。アポイントは1時。すでに5分を切っている。

 車から降りて近所で聞くことにした。昼過ぎでもあり人通りがない。仕方なくある家の戸を叩く。インターフォンと言うより昔のことで、一方通行の呼び鈴があるだけ、鳴らし続けた。諦めかけた時、スリガラスの向こうにかすかな人影。一層大きな声で、「すいません。すいません。」

 スリガラスの向こうにはっきりと人の影。しかし、なかなか戸は開かない。よく見ると寝間着姿の老人だ。両手をスリガラスに当てて顔をガラスにピタリとつけてこちらをうかがっている。しかしよく見ると、立っているというよりガラスに体を預けているのだ。口のあたりが息で曇って来た。

恐らくこの人は、病気の体を無理して玄関までたどり着いたが、戸を開ける体力までは残っていないのだ。

ただ事ではない気配を感じた私は目的を断念し、立ち去ろうとしたが、振り返るとそのままの姿勢で微動だにしない。ゾンビが両手を大きく上げて獲物に向かおうとする姿勢に見える。

 車の方からは支店長が、「どうした家は分からないのか?早くしろ。」

時間は迫る。しかしこの状態をそのままにも出来ない。

時間は迫る。玄関の人を見殺しには出来ない。

時間は迫る。人としてこのままでは立ち去れない。

時間は迫る。すりガラスの向こうの眼は私を見ている。

時間は迫る。ガラスの曇りが乾いて来た。息してない?

時間は迫る。

 

続く。

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