㊷ アキレス腱つながった
すぐに警官が来た。
あなたが加害者ですか? 「そうです。そうです。この人が横断歩道で女の子はねたんや!」??まだ、身分不明のおばはんいたのか。
警官もおかしいと思いつつ関係者かな?と、「一緒に病院に連れてきました。女の子は、かわいそうに震えていたからね。それと、この人逃げないようにね。」「・・・・。それはご苦労様。で、お宅は?」「私?私は目撃者。」
ええっ?目撃者?あの時、女の子が怖がって震えていたからこのおばはんに仕方なくお願いしたが、目撃者とは、参った。
「どこの交差点ですか?」「今出川の烏丸交差点や。」
警官も、違和感を感じながらなるべく関わらないようにするが、私より先におばはんが答えるので、話がややこしい。それでも私は氏名・年齢・会社名などと簡単な事故の事情聴取を受けて、待機するように言われた。警官は私に逃走の危険性がないと見るや病院との対応に、この場を離れた。
しかし、おばはんは居る。携帯の無い時代、近くの公衆電話で会社に報告した。「簡単に交通事故で遅れます。」とだけ言っておいた。
するとおばはん、「あんた、犯人やからすぐには帰れないよ。」
「犯人?私は不注意で女の子はねたけど犯人ではありません。」
「あんた、あほやな『業務上過失致死罪』や。」
「ええっ。致死?死んでないよ。」
「わからんでえ。あれだけのケガやからなあ。」
どうもおばはん。女の子のケガは相当重症と考えているようだ。確かに、人をはねた経験のある人は分かるかも知れないが、その瞬間のハンドルに受ける衝撃は、想像以上だ。ひき殺したかも入れないとまで思った。でも、流血はなかったようだし震えながらも自力で車に乗って来た様子だったのだ。
「あんた、あの子、おなか押さえてたやろ。内出血があるかも知れないよ。」
そう言われると不安はつのる。
警官が戻って来る。「もうすぐにご両親が来ます。」「そうですか。」
おばはん。「ご両親心配やろうね。なんという方?」
「森進一さんです。」
ええっ! 森 進 一 ?
それにしても、おばはんいつまでいるの? 続く。