キーワードは「知る」ということ。そして、それ:Knowing:は分別と言う意味
ストーリーについて書きますので、筋書きわかってしまいますからご注意
北イタリアの村に住むアンナは高校時代、アイスホッケーチームのキャプテンだったが、チームをやめてからも毎日、湖近くまでのジョギングを続けている快活な美しい少女。その彼女がある日、湖のほとりで全裸の死体となって発見される。
近くに住む知恵遅れのマルコが死体を発見し、湖に住む蛇と眼をあわせたので眠ってしまったのだと、青いジャケットを彼女の身にかぶせた。眼をひらいたまま、体とは逆の方向に顏を向けられていたが、抵抗したようすはなく、静かに殺されたのだとサンツィオ刑事は推理した。彼女は愛する人の手による死を受け入れたのだと。
彼女は自分が脳腫瘍であることを知り、余命いくばくもないことを受け入れていた。そして、彼女は何を知ったのか・・・
ボーイフレンドが疑われ、逮捕されるが、彼女は病気のことも彼には話さず「何も知らなかった」と彼は嘆いた。自分はなんでも彼女に話していたのに。
知恵遅れのマルコが疑われ、車椅子の父も疑われる。湖への道をジョギングするアンナに嫉妬していたのではないかと。「(障害を持った子の)親の苦しみがお前に分かるか。経験したものでなければわからない」と父は毒づく。
しかし、サンツィオ刑事にも辛い思いがある。ひとり娘をもうけた妻は認知症で遠い施設に入所し、夫を海外に住む弟だと思い、医者を恋人だと信じ、娘のことは忘れてしまっていた。娘には母に忘れられているなどと告げることはできない。
そうした家族の絆がアンナの死をめぐる捜査の中で浮かび上がり、しっかりと手の中で握り締められる。なぜなら、アンナが知り、そして行なったことは。。。
口にすることさえ辛い思いを共有することで、人は人の思いにいたり、大人になっていくのだろう。「知る」ことの重さと責任を知る。
母が医者と腕を組んで行く姿を見送るフランチェスカには、一人の女性として母を知り、父と共に歩んでいこうとする微笑が浮かんでいた。温かい娘としての・・・