「タチウトゥシ スガガチ」(たきおとし すががち)
という歌を伴わない三線だけの曲がある。
琉球古典音楽においては、普通は歌を歌いながら三線を弾く「歌三線」の世界なので、かなり珍しいスタイルだ。
歌わないので、三線に集中するせいか、弦を押さえる位置も難しくなっていて、通常の音の1オクターブ上の音が頻繁に出てくる。
音を聞いて、耳を慣らせば、なんとなくわかるのだが、「工工四」だけを見ても、最初は全く分からない。
ある日、私の師匠から頂いたのが、この曲の「押さえる位置のメモ書き」だ。
正式な「工工四」では、通常の記号に「人偏」を付けることにより「音」が「1オクターブ上」であることを表記しているが、このメモでは、「1オクターブ上の音を出すための位置関係」を書いてある。
どういうことかと言うと、例えば「五」の1オクターブ上の音は「伍」と書いてあるが、実際に押さえる位置は「七」の1オクターブ上のような場所と考えた方が分かりやすい。(ただし、その場合、音は1オクターブ上ではない)
何を言っているのか、だんだん分からなくなるので、この辺でやめておくが、要するに「工工四」本来の姿は、押さえる位置を書いてあるのだが、こと「1オクターブ上」の音に関しては、「音」そのものを書いているので、注意が必要なのだ。