寓居人の独言

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鳶が鷹を生むという話?

2015年04月06日 02時12分44秒 | 日記・エッセイ・コラム

 鳶が鷹を生むという言葉があるのをある出来事を機会に思い出しました。初めに断っておきますが、鳶と鷹のどちらが偉いとか身分の上下とか価値が高いとか言うことでは無いのです。
 しかし辞書の表現では鳶は卑しい生き物とされているようです。その理由は鳶の食餌によるのかもしれませんね。鳶は他のものをかすめ取っていくとか死魚を食するということによるらしいのです。
 他方、鷹は”鷹は死すとも穂を摘ます”というように高潔の象徴にたとえられています。また”鳶が鷹を生む”というように鷹の方が格上とみられていたようですね。この意味はいろいろ解釈があろうと思いますが、一般的にはありふれた夫婦から傑出した人物が生まれると言うことを表現しているということです。
 子供へ伝えられる性格とか才能というものは両親の遺伝子によって決まるとよく言われますがが、突然変異のごとく全く違った子供が生まれることもあるでしょう。といって親が子供に現れたような遺伝子をその親から受け継いでいないのかというとそうとは限らないと思います。性格や才能は生活環境によって出現することもあるといわれているからです。
  私の元同僚に高慢で自信過剰の男I氏がいました。I氏は実験服の白衣のボタンをかけずに白衣の裾をひらひらさせてローカを歩くのが得意でした。周囲の同僚達から鼻持ちならないやつだと言われていましたが、一つだけ良い性格を持っていました。それは人の悪口を滅多に言わないことでした。そのためにI氏は不思議に同僚達から信頼されていました。
 しかし、I氏には特定の同僚M氏に対してはある種の敵愾心を燃やしていました。例えばこんなことがあったという話です。M氏がある日、ニコンFIIIという高級カメラを使い始めました。すると数ヶ月してI氏は新製品の同社製のFIVというカメラを買って見せに来たということです。M氏曰く(いわく)I氏が自分の方がよいカメラを持っていると言いにきたようだと笑っていました。
 そういえば私にもK大学出身のK氏という知人がいたことを思いだしました。K氏は仕事仲間から膨大な試料を集めて分析しデータを所有していました。そのデータをどういう課題を付けて発表するか決めかねているといっていました。

 研究というのは目標を定めてはじめるのが通常ですが、研究を進めている内に脇道に更に興味を引くテーマにであうことがあります。それを研究していく内にすばらしい結果を得ることはしばしばあります。
 K氏を初め研究者の間ではテーマを探すのが大変だと言われていました。どういうことかといいますと、データは測定器の発達によっていくらでも出せるようになりました。それこそ専門の研究者でなくともルーチンに測定器を扱えればデータを出せるようになったからです。しかしそのデータをどう解釈してどうまとめればよいかと言うことになると、そこには才能が必要になります。つまり研究者にとって最も必要なものはいいアイデアを出せるかどうかと言うことが重要な問題になると言うことですね。
 私は好奇心とアイデアを考え出すこととは一体のものであると考えています。したがって他人の真似をすることに好奇心がいってしまうとアイデアは出てこなくなってしまいます。また、意見の交換ということも重要な要素になることが多いでしょう。議論のないところには、進歩が無いともいわれるほどです。

 余談になりますが落語に「火炎太鼓」という演題があります。この話は古今亭志ん生師が得意とする演目ですが、話の内容をかいつまんで書きましょう。

 ある古道具屋がいました。彼はお上さんに”あんたはアンニャモンニャだ”といわれるようなぽーっとしている亭主です。その亭主が古道具市で誰も見向きもしない小汚い太鼓を買わされて帰ってきました。お上さんにはひどいことを言われましたが、使用人に太鼓に付いているホコリをハタキで払わせました。すると大きな音がしました。丁度そこを通りかかったさる大名の殿様がその音を聞きつけてその太鼓を屋敷へ見せに来るようにということになりました。お上さんにさんざん酷いことを言われて尻込みをしましたが、勇気を出して持っていきましたところ、その太鼓は国宝級の『火焔太鼓』と判明しました。殿様はその太鼓を300両で買い上げてくれました。一分(イチブ:4分で1両)で買ったものが300両になったのですから大もうけをしたことになります。家へ帰ってお上さんに報告すると、お上さんは彼をすばらしい商才の持ち主のように褒めるという話です。私はこの話が好きで繰り返し何回も聞き入ることがあります。

 考えようによっては何事でも日々努力をしていればチャンスが到来することがあるものですね。

 鳶と鷹は同類・同族であるが自ら求めて餌(アイデア?)を得る方法を考えるか、落ちているものを拾って済ませるかということが鳶と鷹の決定的な違いなのかと思うのですが。どうでしょうか。


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