強い女性 6

2020-01-21 05:58:35 | 日記
「あ、そうだな❗一緒にどう?」

一瞬、佐藤君は困ったような顔をしたが、そこは大人。とりあえず笑顔で受けた。

一時は交際をしていた二人だが、いい別れ方をしたんだろう。

それにしても、忙しくてスケジュールがままならないのに、美奈子が来るなら、余計に気が乗らない。

「恵子さんと相談して、飲み会企画しますね~❗」

美奈子は、高校生のようにはしゃいでいる。

『はぁ~』ため息をついた。


「駅前に新しく出来た個室のある居酒屋にしましょうか?予約いれときますよ!」

普段、仕事が遅い美奈子が、こういうことに関しては早い。

「他にも誰か呼ぶ?」

3人が気まずいので、他にも誰か呼びたい。

「3人でいいじゃないですか~?懐かしい話しましょうよ~❗」

はぁ~。

ため息が出た…。




「絵美子、さっき頼んだ仕事、まだ出来てないの?」

「すいません!一度出来たんですが、またミスしてはいけないとおもって、今確認中です」

「遅いけど丁寧なのよね、絵美子は。誰よりも早く会社に来るし、真面目だし。会社から重宝されるよね。…だけど、長く会社にいても、長いだけが取り柄の恵子さんみたいにならないでね。」

恵子さんは、給湯室での美奈子と絵美子の会話を聞いてしまった。

恵子さんの頭の中で、何かがプツッと切れた。


「駅前の個室の居酒屋じゃなくて、駅向こうの出来たばかりのお洒落な個室のお店にしない?」

「へぇ~、そんな店、出来たんですか?」

「私が予約しておくから」

「恵子さんがオススメのお店、楽しみ❗」

つづく。。。

強い女性 5

2020-01-20 09:02:40 | 日記
ある日、新しい部署のリーダーとして他の部署から同期のエース、佐藤君が戻って来ることが決まった。

彼は相変わらず、イケメンで、仕事が出来て優しい…。

当然のことながら、部署の女性達は色めき立つ。

もちろん、佐藤君を諦めきれない美奈子は、
復縁をするためのチャンス。

何とかしてこの部署に残りたいのが見え見えだった。

ある時、
「久しぶりに飲もう‼」佐藤君が恵子さん宛にメールを送ってきた。

気楽に「OK❗」の返信をしてしまったものの、恵子さんの仕事環境は一段と忙しくなってきていて、「OK❗」の返信をしたことさえ忘れていた。

「恵子さ~ん、今度飲みに行きませんか~?ちょっと相談したいことがあって~❗」

まただ…。

つい先日も、そんなことを言ってたが、実現していない…。正直、美奈子と飲むのは気が重い。

「よっ❗忙しそうだね❗」

佐藤君が戻って数日、まだゆっくり話も出来ていない。

「飲みに行こうよ❗メール、返信待ってるよ。」

「あ~❗私も誘って❗」

嫌なタイミングで美奈子が会話に飛び込んできた。

つづく。。。

強い女性 4

2020-01-19 08:27:59 | 日記
そんな中、恵子さんは仕事ぶりが評価されて部署の責任者となり、後輩達の部署の移動の采配の権限も持たされる立場となっていた。

そして近く、新しく出来る部署に自分の部署から、ひとり移動させなければならない…。

なんと、新しい部署とは、言わば窓際部。

もう既に、その部署に移動が決まったメンバーは、何かと遅刻が多い若手O君。見た目は元気そうなのに体調が良くないと休みがちな中堅社員のCさん。凡ミスが多すぎてフォローしきれない若手Tさん。見ると、窓際であることは一目瞭然だった。

勿論、恵子さんの部署の後輩達は、誰も行きたい人なんていない。

部署移動の采配の権限を持つ恵子さんに、後輩達はご機嫌取りをはじめた。

美奈子も、ここへ来て急遽、“良い後輩”を演じ、飲み会や合コンに恵子さんを誘うなど、ご機嫌を取って来る様になった。

“今さら遅い…💢”と思ったが、敢えて、美奈子に優しくした。

「え?!なんでこんなに多いの?」
「え?200枚って言ってませんでしたっけ?!」
「20枚でいいのに💦」
「すみません💦枚数間違えてしまいました…」
「ま、いいわ。よその部署にも配ろうと思ってたから、大丈夫」

恵子さんの部署には、少々問題ありの後輩、絵美子がいた。
仕事の覚えも、手際も悪く、つねに恵子さんがフォローしている。

だから、部署の後輩達も、窓際部に送られるのは当然、絵美子だろうと思っていた。
しかし絵美子の仕事は丁寧で、周囲の和を大切にする優しさがある。

正直、恵子さんも悩んでいた。

「絵美子、来週の飲み会の場所押さえてくれる?あ、この間の串焼き屋は、やめてね。うるさかったし。」
「え?串焼き屋?私、呼ばれてません💦」
「あ、そうだっけ?ごめんごめん。じゃ、任せるね❗」

そして、恵子さんは、ここへきて、また美奈子が絵美子をいじめていることを知る。

つづく。。。

強い女性 3

2020-01-18 07:53:05 | 日記
物事に動じることなく、毅然と仕事をこなす恵子さん。

そんな仕事の態度を評価されたのか、

あるとき、恵子さんは取引先の会社の男性から誘われた。

年上で、仕事が出来る優しい男性。

好きなタイプとは言えなかったが、彼の紳士的な態度にどんどん惹かれ、次に誘われることが楽しみになってきた頃、

急に彼からの連絡が途絶えた。
恵子さんのほうから連絡をしても返信が無い。

もう、自分に興味が失せてしまったんだろう…と思った時、

また美奈子の陰口を耳にする。
「言ってやったのよ!恵子さんは尻軽ですよって!」ジョークともとれない会話で、後輩たちが笑っている。

取引先の男性にいらぬ事を言って、私から引き離したのは美奈子か…。

どこまで嫌がらせをするのか…!怒りがふつふつと沸いてきたが、同じレベルでのくだらない言い争いは避けたかったので、無視した。

そんなある日、佐藤君と美奈子が別れたと風の噂で聞こえてきた。

美奈子はふられたらしい。

恵子さんはお腹の底でこっそり笑った。


プライドの高い美奈子は、“佐藤君とは、まだ付き合ってるそぶり”を演じ、平気を装っていたが、

寂しさを隠し切れない美奈子は、合コン三昧の日々を送ってるらしかった…。


しかしそれでも美奈子は、佐藤君を諦め切れず、切実に復縁を望んでいるらしい…と噂も耳に入って来た…。

つづく。。。

強い女性 2

2020-01-17 07:05:44 | 日記
「今夜、泊まりに来ない?」

佐藤君からのメール。

「え?」

恵子さんは驚いた。

…そういえば、さっき飲んだ席で、
学生時代の気のおけない楽しい仲間がそんなジョークにも気軽に付き合ってくれていた…懐かしい…。なんて話をしていて、「そんなジョークなら、私が受けて立つよ❗」なんてやり取りをしていた。

迷わず、
「じゃ、お風呂入れといて❗」
…と返した。

すると、
「おもしろい❗」
と返って来た。


そんなジョークのやりとりは、その後も、飲み会のたびに続いた。

恵子さんも、当時は佐藤君と本当に付き合ってもいいなぁ…と思ったといいます。


…しかし、彼はその後直ぐに後輩の美奈子(仮名)と付き合いはじめた…。

恵子さんは佐藤君を諦め、冗談メールのやりとりもすぐになくなった。


その後、佐藤君は別の部署へ移動となり、すっかり縁も薄くなり、飲み会で顔を合わせることも殆どなくなった頃、

急に後輩の美奈子が、自分の悪口を言っているのを知った。

悪口の内容とは。。。
「自分の恋人の佐藤君にちょっかいを出し、佐藤君がとても迷惑がっている。」とか
「ストーカーまがいの行為をして、佐藤君を困らせている…」など。

勿論、恵子さんには身に覚えのない話しばかり。

しばらくして、
「恵子さんが佐藤君に、おかしなメールを送っている!」という噂話も聞こえてきた。
恐らく、あの冗談メールを盗み見して、勝手に邪推してるんだろう…と判断した。


その頃、大切な仕事も任せられ、くだらない中傷めいた事に付き合っているほどゆとりもなかった恵子さんは、全く取り合わず、毅然と過ごしていたが…、

いつの間にか、職場内の後輩達のほとんどが自分の敵と化し、自分だけ飲み会に誘われないとか、故意に自分の湯のみを割られるなどのくだらないいじめが始まっていた。

それでも、毅然と仕事をこなし、毎日を前向きに生きていた。

つづく。。。