ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「録音された誘拐」

2023年05月31日 | 書籍関連

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大野探偵事務所の所長・大野糺(おおの ただす)が誘拐された。耳が良いのが取り柄助手・山口美々香(やまぐち みみか)は、様々な手掛かりから、微妙な違和感を聞き逃さず真実に迫るが、其の裏には15年前の或る事件の影が在った。誘拐犯vs.探偵達の息詰まる攻防二転三転する真相行方は・・・。
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ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、自分が注目しているのは「本格ミステリ・ベスト10」(発行元:原書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(発行元:文藝春秋)、そして「このミステリーがすごい!」(発行元:宝島社)の3つ。此の中の「2023本格ミステリ・ベスト10【内編】」で3位に選ばれた小説が、今回読んだ「録音された誘拐」(著者阿津川辰海氏)で在る。

阿津川氏は2017年に文壇デビューした、未だ20代の若手で在る。でも、ミステリー界では非常に期待されている有望株なのだ。

一昨年同氏の「透明人間は密室に潜む」(総合評価:星3つ)という作品を読んだが、4つの中編小説の内の1つに「耳だけは異常に良い探偵が、録音された音声から、犯行現場の謎を解く。」という「盗聴された殺人」が在る。今回の「録音された誘拐」は、「盗聴された殺人」の登場人物達が揃う“続編”だ。

後書き阿津川氏自身が書いているが、「盗聴された殺人」の時代設定は「新型コロナウイルス感染症が“終息”し、世界が落ち着き始めた頃。」となっている。此の作品が上梓されたのは昨年8月なので、コロナが終息どころか、少なくとも日本では未だ未だ“警戒感で溢れ返っていた頃”だ。今、コロナとフィクションを取り巻
く関係は複雑で、作家としては『今、此の時』を書くか、いっそ大胆時間軸を飛ばして『未来』に設定した方が、現実との齟齬が出ず、好ましい事は承知しているのですが、敢えて至近未来』を選択したのは、様々な願いを仮託しての事です。と阿津川氏が態々断っているのは、「コロナは終息なんかしていないのに、どういう事だろう?」と混乱してしまう読者の事を見越してだろう。確かに普通に読んでいれば、“今”が描かれている感じがするので。

大野探偵事務所は頭脳明晰な所長・大野糺、耳が良いのが取り柄の助手・山口美々香、そして元カウンセラー・望田公彦(もちだ きみひこ)という3人で構成されている。「耳が良い美々香が、常人では聞き取れない音を聞き取り、其れを元に糺が抜群推理力を発揮する。」というスタイルなのだが、今回は糺が誘拐され、美々香とは離れ離れの状態となっている。「一緒にない状況で、彼等はどう謎を解いて行くのか?」というのがキーだし、又、「耳が良いのが取り柄。」という美々香の特徴が“ギミック”となっているのも面白い。

伏線の敷き方と其の回収上手いのだが、納得出来ない点も在る。一部ネタバレになってしまうけれどモールス信号」というのが重要な役割をしており、「〇の垂れ方を、そんなに上手く“調整”出来るか?」と思ってしまうから。又、或る人物が或る人物で在る事を“偽装するトリック”も、使い古された物で在ったのが残念

総合評価は、星3つ
とする。


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