住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、zakzakに「『マンションはスラム化するのか。』 管理費3割滞納で通常サーヴィス停止」という記事を寄せていた。
*********************************
「『マンションはスラム化するのか。』 管理費3割滞納で通常サーヴィス停止」(7月20日、zakzak)
最近、私への取材で多いテーマは「マンションのスラム化」、或いは「マンションが廃虚になる。」といった事。
鉄筋コンクリート製の此の共同住宅が、日本の都市居住者の主要な住まいになってから、未だ半世紀一寸。近頃では東京や大阪、名古屋等の都市圏で「家を買う。」というと、其の多くがマンションだ。
マンションというのは、一戸建てに比べて、色々便利な所が在る。先ず、大抵24時間塵を出せる。一戸建てなら、決まった日の時間、場所にしか出す事が出来ない。
気密性が高いので、エアコンが良く効く。戸締りは、玄関のドアとバルコニー側のサッシだけ。不在時に宅配便が届いても、宅配ロッカーが受け取ったり、タクシーを手配するコンシェルジュが居たり。都心のマンションなら、ホテルの様なサーヴィスを享受出来る所も在る。
しかし、其の様な便利さには、全てコストが掛かっている。其れは「管理費」という名目で、各区分所有者から徴収される。常にマンションを十全な状態に保つ為に、「修繕積立金」というランニングコストも掛かる。
マンションというのは、区分所有者全員が管理費や修繕積立金をきちんと払うという前提で成り立っている共同住宅だ。中には滞納する人も居るが、其れは絶対的な少数派でなければならない。
若し、区分所有者の2割が管理費や修繕積立金を支払わなければ、管理サーヴィスは著しく行き届かない状態になるだろう。3割が支払わなければ、其のマンションは通常の管理が行われない筈だ。
日本全国には、600万戸のマンションが在るとされている。地方や都市圏の遠隔郊外の中には、既に資産価値が無きに等しい物件が在る。そういった所の所有者は、共同体の一員として、応分のコストで在る管理費や修繕積立金の支払いに、意欲を失っても不思議は無い。又、経済的な状況が、負担に堪えられなくなる事も多いだろう。
区分所有者が管理費や修繕積立金を支払う此の前提が崩れた時に、スラム化の危機が遣って来る。
既に築年数が20年以上のリゾートマンションでは、「管理費・修繕積立金を払ってくれるなら。」という事で、10万円程度で新たな区分所有者を募集している所が在る。
マンションのスラム化、廃虚化は、此れからの時代の大きな社会問題となる筈だ。其れを整理する法整備が急がれるが、未だ目立った動きは無い。
*********************************
我が国では高度経済成長期に、マンションや団地等の鉄筋コンクリート製の共同住宅が多く作られた。少子高齢化が進む中、そういった共同住宅で孤独死する一人暮らしの老人が増えているという話は、もう随分前から見聞する様になった。
そして、格差社会が社会問題化して行く中、蓄えの無い高齢者を中心に、管理費や修繕積立金が払えない区分所有者が増えており、無秩序状態になったマンションや団地が目立ち出しているというのも聞き及んでいたが、今回の記事を読むと、思っていた以上にスラム化は進んでいるのかもしれない。近場でも、そういった団地が在ると聞くし。