ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「鬼の跫音」

2009年03月30日 | 書籍関連
残念乍ら受賞には到らなかったものの、「カラスの親指 ~by rule of CROW’s thumb~」が第140回(2008年下半期)直木賞候補作品となった道尾秀介氏。近年のミステリー・ランキングでは彼の作品が上位に挙げられる事が多く、自分の好きな作家の一人も在る。彼の作品は全て読破しているが、今回読んだのは彼にとって初の短編集となる「鬼の跫音」。

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「私はいつも思うんですが、この世は完全犯罪だらけですよ。やったことを他人に気づかれさえしなければ、それはぜんぶ完全犯罪なんです。あなただって、いくつ完全犯罪を犯してきたかわかったもんじゃない。人間なんてね、生きてるだけでみんな犯罪者ですよ。完全犯罪者ですよ。」

鈴虫だけが知っている、過去の完全犯罪(「鈴虫」)。蝶に導かれて赴いた村で起きた猟奇殺人事件。(「犭(けもの)」)他に「よいぎつね」、「箱詰めの文字」、「冬の鬼」、そして「悪意の顔」と合計6つの不気味な短編が、貴方を摩訶不思議な世界へと誘って行く。
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「日常世界の中に、非日常的世界を絶妙に滑り込ませて行く。」のが十八番の道尾作品。今回の作品でもそれは健在だ。人間の心中に潜む邪悪な部分を織り交ぜた、不気味で後味の悪い短編集と言える。

ミステリーを読み漁っている人間にとっては、6編共に「意外な結末」と言える程の大どんでん返し感は無いが、ストーリー展開は相変わらず上手い。全ての短編は独立して成立しているが、「S」なる謎の人物が全てに登場する事で、読者に奇妙な既視感を覚えさせるだろう。個人的には、「悪意の顔」が一番面白かった。

総合評価は星3つ

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