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ストーカーの容疑を掛けられた事から、勤務先から馘首されてしまった青野恵介(あおの けいすけ)。無実なのに馘首という理不尽さから、引き籠りの生活を続けていた彼だが、或る日、ひょんな事から“秘密結社”の一員になってしまう。
息子を誘拐されたという会社員・伏見晴彦(ふしみ はるひこ)は、犯人に脅迫される。ピッキングが趣味の優作(ゆうさく)は、或る家に目を付けて・・・。
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小説「秘密結社にご注意を」(著者:新藤卓広氏)は、第11回(2012年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した作品。
無実の罪で勤務先を馘首され、引き籠りの生活を続けていた青野の家に、「フリースイープ」なる有限会社から手紙が届く。同社への入社を勧誘する手紙だったが、其の内容は怪しさ一杯。
「清掃業務全般」が仕事内容という「フリースイープ」を、興味本位から訪ねた青野。其処には同年代の美女が1人居て、彼女は宝来あいみ(ほうらい あいみ)と名乗った。風変わりな彼女が言うには、「従業員は自分の他に、男が2人と女が1人の合計3人。でも、其の女を自分は見た事が無い。上司みたいな人は居ないけれど、仕事の指示を出す人間は居る。其れが、何処の誰なのかは判らないけれど。」等と説明した上で、「此処は秘密結社だから。」と告げる。
あいみも然る事乍ら、男性従業員2人も可成りの風変わり。メール等で指示される“仕事”の内容は、「晴れの日に傘を差して、街中を歩き回る。」とか「ゲーム・ショップの店頭で、新作ゲームを2時間の間ずっとプレーし続ける。」等、意味不明な物許り。「一体、何なんだ!?」と、読者は興味を惹かれて行く事だろう。
「随所に盛り込まれた格言。」、「不可思議な状況設定。」、「意外過ぎる人間関係と意外な正体。」等、ミステリーを幅広く読んでいる人達ならば、「“彼の人”の作風と、非常に似ている。」と感じる事だろう。彼の人とは、伊坂幸太郎氏の事だ。
「芸術は、模倣から始まる。」なんて言うし、小説を著す上で“誰かの作風”を模倣するのは、決して悪い事では無い。唯、作風を模倣している“だけ”では、プロの作家として食って行くのは難しいだろう。
「或る人物の死の裏に、意外な事実が隠されていた事が、最後の最後に判る。」等、ストーリー的に面白いとは思うけれど、残念乍ら「秘密結社にご注意を」は、“伊坂作品の模倣の域”を出ていない様に感じる。デビュー作という事で看過されても、此の儘では読者も離れてしまうに違い無い。
総合評価は、星3.5個とする。
一世を風靡する様なクリエーターが登場すると、概して「其の影響を強く受け、模倣した様な作品。」が続出したりするもの。小説も其の例外では無く、文学賞で選考委員を務めた方々のコメントでは、「此の作品は、XX氏の作風を真似ており、其の作風から抜け出せていない。」といった厳しい物が結構見受けられますね。
ミステリー系の文学賞では、近年、伊坂作品の匂いをプンプン感じる物が多い。個人的には伊坂作品がそんなに好きな訳では無いけれど、でも、新作が出ると手に取ってしまうのだから、不思議な魅力が在る作家なのは確かです。
「屋上ミサイル」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/c7b10dc3bfd7602d093ac6fed436ff63)、自分も全く魅了されない作品でした。