ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「秘密結社にご注意を」

2014年01月22日 | 書籍関連

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ストーカー容疑掛けられた事から、勤務先から馘首されてしまった青野恵介(あおの けいすけ)。無実なのに馘首という理不尽さから、引き籠りの生活を続けていた彼だが、或る日、ひょんな事から“秘密結社”の一員になってしまう。

 

息子を誘拐されたという会社員・伏見晴彦(ふしみ はるひこ)は、犯人に脅迫される。ピッキングが趣味の優作(ゆうさく)は、或る家に目を付けて・・・。

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小説「秘密結社にご注意を」(著者:新藤卓広氏)は、第11回(2012年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した作品。

 

無実の罪で勤務先を馘首され、引き籠りの生活を続けていた青野の家に、「フリースイープ」なる有限会社から手紙が届く。社への入社を勧誘する手紙だったが、其の内容は怪しさ一杯。

 

「清掃業務全般」が仕事内容という「フリースイープ」を、興味本位から訪ねた青野。其処には同年代の美女が1人居て、彼女は宝来あいみ(ほうらい あいみ)と名乗った。風変わりな彼女が言うには、「従業員は自分の他に、男が2人と女が1人の合計3人。でも、其の女を自分は見た事が無い。上司みたいな人は居ないけれど、仕事の指示を出す人間は居る。其れが、何処の誰なのかは判らないけれど。」等と説明した上で、「此処は秘密結社だから。」と告げる。

 

あいみも然る事乍ら、男性従業員2人も可成りの風変わり。メール等で指示される“仕事”の内容は、「晴れの日に傘を差して、街中を歩き回る。」とか「ゲーム・ショップの店頭で、新作ゲームを2時間の間ずっとプレーし続ける。」等、意味不明な物許り。「一体、何なんだ!?」と、読者は興味を惹かれて行く事だろう。

 

随所に盛り込まれた格言。」、「不可思議な状況設定。」、「意外過ぎる人間関係と意外な正体。」等、ミステリーを幅広く読んでいる人達ならば、「“彼の人”の作風と、非常に似ている。」と感じる事だろう。彼の人とは、伊坂幸太郎の事だ。

 

「芸術は、模倣から始まる。」なんて言うし、小説を著す上で“誰かの作風”を模倣するのは、決して悪い事では無い。、作風を模倣している“だけ”では、プロの作家として食って行くのは難しいだろう。

 

「或る人物の死の裏に、意外な事実が隠されていた事が、最後の最後に判る。」等、ストーリー的に面白いとは思うけれど、残念乍ら「秘密結社にご注意を」は、“伊坂作品の模倣の”を出ていない様に感じる。デビュー作という事で看過されても、此の儘では読者も離れてしまうに違い無い。

 

総合評価は、星3.5個とする。


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2014-01-22 12:44:14
「屋上ミサイル」の山下貴光さんも伊坂幸太郎をめざしていると公言したことがあるそうで、受賞した「屋上ミサイル」が評論家からは伊坂幸太郎ワールドの域を出ない伊坂幸太郎風の作品だと評されておりました。 「屋上ミサイル」はつまらなかったですし、賞をとった理由もよくわかりませんし、続編も出ていますが興味がわきません。 あと、伊坂幸太郎の影響の大きさには感心しております。 伊坂幸太郎の「重力ピエロ」という作品で母親のかたき討った次男に向かって父親と長男が法律が許さなくても家族はお前を許すというラストで終わりました。 次男がはたして自首するのかどうかわからない終わり方をして、ミステリーであっても読者に考察を促す、問題提起する作品でした。 権力とか法とか人を縛る力が彼は嫌いなのだろうと思ったのと、権力から逃げるしかなかった「ゴールデンスランバー」ではそれをもっと強く感じました。 そして正義感の強さとユーモアも。 ディテールをマネしても作品の個性は伊坂幸太郎自身の中から出てくるものなので、そこに感動してファンになり、影響を受けて作品を書くにしても、自身の中に広い知識や豊かな人間性とか人生経験がない若さゆえの未熟なままではまだまだ自分の独特のものがなくて外形だけの物まねに見えてしまうのは仕方ないですね。
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>マヌケ様 (giants-55)
2014-01-22 13:12:06
書き込み有難う御座いました。

一世を風靡する様なクリエーターが登場すると、概して「其の影響を強く受け、模倣した様な作品。」が続出したりするもの。小説も其の例外では無く、文学賞で選考委員を務めた方々のコメントでは、「此の作品は、XX氏の作風を真似ており、其の作風から抜け出せていない。」といった厳しい物が結構見受けられますね。

ミステリー系の文学賞では、近年、伊坂作品の匂いをプンプン感じる物が多い。個人的には伊坂作品がそんなに好きな訳では無いけれど、でも、新作が出ると手に取ってしまうのだから、不思議な魅力が在る作家なのは確かです。

「屋上ミサイル」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/c7b10dc3bfd7602d093ac6fed436ff63)、自分も全く魅了されない作品でした。
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