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静岡県北の廃村で、誘拐された儘、行方不明に成っていた少女の白骨遺体が見付かった。10年前、静岡県警は誘拐犯に身の代金1千万円を奪われ、少女は戻らず、事件は迷宮入りと成っていた。静岡県警静岡中央署の日下悟(くさか さとる)警部補が捜査に着手すると、当時は判明し得なかった幾つかの事実が明らかになる。腎臓に持病を抱えていた被害者の事情、誘拐事件関係者の其の後、遺体が見付かった廃村の「子供の泣き声がする。」という噂話。静岡県警は実直な捜査で核心に迫るが、新たな事件が起きて・・・。
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今回読んだ小説「二人の誘拐者」(著者:翔田寛氏)は、同氏の「日下警部補シリーズ」の第3弾。第54回(2008年)江戸川乱歩賞を受賞した「誘拐児」(総合評価:星4つ)や第19回(2017年)大藪春彦賞の候補作「真犯人」(総合評価:星4.5個)等、誘拐をテーマにした作品が少なく無い翔田氏だが、今回も誘拐がテーマに成っている。
10年という時を経て、誘拐された儘、行方不明と成っていた少女の白骨遺体が見付かるのだが、誘拐自体の目的も然る事乍ら、「白骨遺体発見に仕向けられた"様な"状況」が、捜査員達を困惑させる。誘拐された少女が持つ特異的な状態から、「恐らく、其れが誘拐に繋がっているのだろうな。」と想像はするも、"時系列的な矛盾"等から、動機が絞り込んで行けない。
「移植」に関する知識は其れなりに持っている積りだったが、初めて知る事実も在り、非常に勉強に成った。特に「1人の移植者の個人情報を共有する"移植コーディネーター"の数が(秘密保持の観点等から非常に少数と思っていたので)、こんなにも多いとは思っていなかった。」ので、個人的には意外だった。
全く無関係と思われていた数々の"点"が、徐々に"線"と成って繋がって行くのは面白いのだけれど、残念なのは「"偶然に頼った設定"が、余りに多い。」事。1つや2つの偶然ならば未だしも、こうも多いと「現実的には無理が在り過ぎるな。」と鼻白んでしまった。
総合評価は、星3つとする。