我が国で所謂「長者番付」が公示されていた頃、作家部門で毎年、上位にランクされているミステリー作家が居た。当時、自分は彼の作品が大好きで、デビュー作からずっと読み漁っていたのだが、或る日を境に全く読まなくなってしまった。作風に飽きてしまったというのも在るのだが、他に大きな理由が。
毎年の様に、海外旅行をしていた其の作家。旅行には複数の出版社の関係者が随行しているのは有名な話だったが、実は其の旅行は出版社の顎足付きというだけで無く、作家側からの催促が在って行われている事が、週刊誌の記事で暴露された。「毎年、何億も稼いでる人間が、売れっ子で在る事を笠に着て、顎足付きの旅行を催促していたというのは、何ともセコイ話だ。」と幻滅してしまった自分。「そんな作家の作品なんか、もう読みたくない。」と思ってしまった訳だ。
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新人編集者・青山が目の当たりにした、常識破りの彼の手此の手を連発する伝説の編集者・獅子取。
自作のドラマ化話に舞い上がり、美人担当者・川原美奈に恋心を抱く、全く売れない若手作家・熱海圭介。
出版社のゴルフ・コンペに初参加し、大物作家に翻弄されるヒット作症候群の新鋭作家・唐傘ザンゲ。
窓際族となった事で、会社を辞める事を考え始めた石橋堅一。有名作家になる事で、自分を軽んじる会社の連中に一泡吹かせてやろうと目論む。仕上げた小説を或る新人賞に応募した所、最終候補に選ばれる事に。
小説業界に関わる様々な人達の姿を描き、ブラックな笑いへと昇華させた14の短編小説。
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「歪笑小説」は、売れっ子作家・東野圭吾氏が小説業界の裏側を面白おかしく描いた短編小説集だ。「文芸雑誌って余り売れていない様だけど、赤字を垂れ流してはいないのだろうか?」、「作家同士のライヴァル意識って、相当在るんだろうなあ。」、「売れっ子作家や其の親族が、出版社に無理を言う事って多そう。」、「自分の作品が映像化される事になった時、当該作品の作家はどんな気持ちなのだろうか?」等々、読者が疑問に感じたり、想像したりしている事柄が、此の小説の中では取り上げられている。
売れっ子作家の原稿をゲットすべく、臆面も無く御追従を口にしたり、考えられない様な行動を取ったりする敏腕編集者・獅子取には大笑いしてしまった。又、「売れっ子作家の仲間入りが出来る。」と勘違いし、友人や親族に大見得を切ってしまい、どんどん追い込まれてしまう売れない作家・熱海圭介の姿にも、「良く在りそうな話だ。」と同情しつつも、此れ又爆笑。
ブラックな笑いが在る一方で、「序の口」や「文学賞創設」、「職業、小説家」といった作品には、ほろりとさせられる優しさが感じられる。其のバランスは、実に絶妙。
小説業界の裏側を描いた作品と言えば、筒井康隆氏が1979年に刊行した小説「大いなる助走」が有名だが、“毒の強さ”と“完成度の高さ”では、今回の「歪笑小説」は残念乍ら見劣りを感じた。
総合評価は、星3つ。
あとは重松清氏、宮部みゆき氏かな。
景山民夫氏や椎名誠氏や中島らも氏の本も
個人的には好きです。
海外旅行が好きと、いうことは
西村京太郎氏ではないと思いますが。
東野圭吾さんと、いうと
あの頃ぼくらはアホでしたしか知らない。
最近だと鹿島田真希さん、田中槙弥さんかな。でも鹿島田さんはおしとやかな人だけど
田中さんはあの記者会見の態度が不快で
本当に厭でしたね。
あれじゃ、田中さんの本など買うか
と、思うのですが。
それにしても最近の小説は
リアリティなものより新しさを追求した
小説にめぐりあってないものが多いように
思うのです。
本来、小説と、いうのは世の中をこういうふうに変えて行けたらなあと、いうことを
想像してイメージして書く、描くものじゃないかなと、思うんです。
そこに少し笑いが入る
それこそ少々歪んだ笑いが入る感じの小説
タイトルの通り歪笑小説を。
その東野圭吾氏や筒井康隆氏の小説
読んでみたいものです。
西村京太郎氏の作品は自分も大好きで、今でも読んでいます。だから、別の方ですね・・・って答えちゃうと、もう誰か判っちゃいそうですが。
最近の小説の売れ筋を見ていると、「何度も推敲したんだろうなあ。」と思われる“きちんとした小説”が在る一方で、所謂“ケータイ小説”に少なからず見受けられるのだけれど、“遣っ付け仕事みたいな小説”が在ったりもする。誤字脱字は言うに及ばず、文章もプロとは思えない代物。少なくとも金を取る以上は、一定のレヴェルの内容で在って欲しい。まあ、需要が在るからこそ、売れているのだろうけれど・・・。
文学賞の選考って、或る意味“フィギュア・スケートの判定”と似ていますよね。詰まり、選考者(判定者)の“主観”に負う所が多く、曖昧模糊とした部分がどうしても残ってしまうという点で。
選考者の好き嫌いで選ばれたり落とされたりするというのは、候補者にとっては本当に堪らない事でしょうね。芥川賞や直木賞に限っても、過去に「同じ回で受賞した作品よりも、落選した作品の方が遥かに優れている感じがした。」という事が何度か在りましたし。